China Market Eye iPhone15の発売とファーウェイの逆襲
2023.09.28 (木)
iPhone15の発売とファーウェイの逆襲
中国は技術禁輸を克服、ファーウェイ反撃開始か
2023年8月末、中国IT大手のファーウェイ (華為技術)が3年振りに5Gスマートフォン「Mate 60 Pro」(小売価格は6,999元、約14万円)を発表しました。
過酷な技術禁輸という逆境にもかかわらず、同機種は主要部品の国産化5Gチップ、7ナノ技術等をほぼ達成し、消費者向けで世界初となる衛星通信などの先端機能も備えています。半導体の7ナノメートル(nm)製造プロセスでは、革新的な設計・製造技術によるブレークスルーにより難関とされる問題をクリアした模様で、世界を驚かせました 。
アップルの中国売上高およびそのシェア
9月にiPhoneの最新シリーズの発売を控えていただけに、ファーウェイの新製品リリースによる逆襲は様々な憶測を呼びます 。 また、この微妙なタイミングで中国政府が公務員のiPhoneの使用を禁止する方針が伝えられました。アップル製品の大半は中国で製造されているほか、同社売上高の5分の1強も中国が占めていることから、アップルの株価は一時急落、米中デカップリング(切り離し)の再燃が懸念されました(上グラフ参照)。
中国でもiPhoneは人気ハイエンド顧客シェア握る
しかし蓋を開けてみると、iPhone発売の22日には中国各地のアップルストアにiPhone15シリーズを買い求める客が長蛇の行列を作り、高価格モデルである「pro(プロ)」「pro MAX(プロマックス)」の即時完売が相次ぎました。また、iPhone15の事前注文量も前作iPhone14を1割強上回るなど、予想以上の好調ぶりとなった模様です。
その理由について、まず中国でのiPhoneは元々根強い人気がある上、カメラ機能や新素材の使用などiPhone15シリーズの性能向上により買い替え需要を促したと推察されます。また、これまで中国におけるiPhoneの販売価格は1~2割高く設定されていましたが、この新型iPhoneはファーウェイの復活を意識してか、米国に次ぐ世界で2番目の価格(安さ)で販売されました。ファーウェイは、5G移行期とされる戦略的に重要な直近3年の間、禁輸規制により最新チップの調達が困難で5Gスマホを発売できず、多くのシェアを失いました。ハイエンド顧客の大半はiPhoneに流れたと思われ、その挽回は容易ではありません。今回のファーウェイの5Gスマホ発表による復活は、対iPhoneより小米やOPPO、Vivoなどのローカル企業とのシェア争いとなる可能性が考えられます。
これに加え、海外メディアでは中国不動産バブル崩壊やデフレなどネガティブ要因ばかりが報道されていますが、消費者の購買力も消費意欲も実際のところ健在ということも好調な販売の要因だと考えられます。
多額の研究開発費を計上技術革新加速
一方、今後を展望すると、ファーウェイの反撃が続き、アップルの手ごわい相手となる展開も十分あり得ます。市場予想では、ファーウェイは「Mate 60 Pro」新発売の効果により、今年と来年のスマホ販売台数がそれぞれ4,000万台と6,000万台を突破する見通しで、最悪期から脱出する目途がついたと受け止められています。また、ファーウェイは半導体やOS(基礎ソフト)などを中心に、今年1,700億元(約3.4兆円)強の過去最大となる研究開発費を注ぎ込むと見られています(下グラフ参照)。独自の国産半導体チップ「麒麟(Kirin)9000S」シリーズなどで、さらに性能と完成度を高めることが出来れば、予想よりも早く消費者の信頼感や市場シェアを取り戻すことも考えられます。
iPhone禁止の拡大あるか、引き続き政府の動きに注目
米国は同盟国も巻き込み国を挙げて技術封鎖を行ったが、中国の技術進歩をせいぜい3年ほど遅らせただけであると考えます。ファーウェイのブレークスルーにより、今後は中国の半導体技術自立に大きな弾みが付きそうです。また、可能性は高くないものの、もし中国の『iPhone禁止令』が役所のみならず国有企業や公的機関(公立学校・病院など)にも広がれば、それは直ちに億単位の人の消費行動に影響し、アップルの中国売上を大きく押し下げる恐れがあります。
米中の技術覇権争いが強まるなか、ファーウェイの予想外の復活が世界の半導体業界及びスマホサプライチェーンに大きな影響を及ぼすことは間違いなさそうで、株式市場ではその関連株からも目を離せません。
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