China Market Eye ポストコロナに向けて着実な前進
2023.02.28 (火)
ポストコロナに向かって政策転換を着実に進めている中国
2月中旬の時点で新型コロナ感染症に関連した中国の院内死者数と重症者数がいずれも1月初めのピークから98%減少しました。それを受け、中国の衛生当局は2月23日「今回の新型コロナウイルスの感染拡大は基本的に終息した」と宣言しました。迅速な防疫政策転換により最小な代償かつ最速での解決につなげた、という結果は中国にとってベストシナリオだったといえます。
感染拡大の早期ピークアウトに伴って、中国社会・経済の正常化も予想以上に進んでいます。例えば、上海や北京など主要都市の地下鉄乗客数は軒並みゼロコロナ政策前を超え、国内フライト運航便数も一気に昨年夏場の水準を回復しています(上図参照)。春節(テト/旧正月)や1月の消費・物流動向を見ても、人の移動は既にコロナ前の9割に達しており、そのうち映画観客数や宅急便などがコロナ前を上回りました。
海外企業の対中投資が急増
また、旅行やレジャー、飲食などの接触型サービス業だけではなく、会議や企業訪問、イベント、コンサートなども過去3年間はゼロコロナ政策でオンライン開催を余儀なくされましたが、今や急速にオフライン化に戻ろうとしています(前頁写真参照)。
今後、仮に変異株などでコロナ感染が再拡大したとしても限定的なものに留まるとみられ、政策が後戻りする可能性は殆どなく、中国はポストコロナに向けて着実に前進するでしょう。
予想を上回る経済再開のスピードを受け、IMFは今年の中国成長見通しを5.2%に引上げ、中国の世界成長貢献率は25%に達すると予測しています。今後の景気回復の進捗についてはパンデミックを経て強靭化された製造業は回復が最も早く、抑圧されてきた旅行・レジャー・飲食・美容・カジノなどのサービス部門のリベンジ消費も見込まれます。
一方、所得、雇用見通しの改善に大きく依存する大衆消費の全面回復は緩やかなペースに止まりそうです。なぜなら、近代的経済システムは業種間・地域間で波及する循環経済及びジャストインタイム式の生産・物流を基盤とするだけに、ゼロコロナにより遮断されたためその傷跡を修復して経済を再循環させるのに時間がかかるためです。
旅行、飲食などサービス業が本格回復
さらに、ゼロコロナ政策により遮断されていた海外との人の往来も経済再開に伴って活発化しています。すでに中国各地の地方政府・企業幹部が日米欧諸国に出張し、受注拡大や外資企業誘致に注力しており、ドイツのフォルクスワーゲンやメルセデスベンツ、アメリカのアップルやファイザーなど数十社の多国籍企業トップが相次ぎ中国訪問の意向を示すなど、海外企業も対中投資の拡大を目論んでいます。例えば今年1月の海外からの対中国直接投資金額は前年比14.5%増え、そのうち製造業向けが40.4%増となりました。
中国の回復は世界経済の押し上げ要因にも
中国の経済再開は製造業の供給力拡大と同時に、中国人旅行者の増加を通じて世界経済を上振れさせる可能性が出ています。
2月20日に発表した中国旅行研究院の予測によると、今年の中国国内旅行者数は前年比73%増の延べ45.5億人、観光収入は前年比89%増の約4兆元とそれぞれコロナ前の2019年の76%と71%の水準に達する見通しです。夏場にかけて中国国内旅行市場はコロナ前並みの全面回復が見込まれます。
その一方、中国人海外旅行者数(香港・マカオ向けを含む)は過去3年間の年平均で2,600万人程度と2019年の15%程度、海外旅行支出(留学や出張などを含む)もその3分の1にまで落ち込みました(「中国の海外旅行者数」図参照)。年明け後、中国ではパスポートやビザの発給が再開されるようになり、各地の役所で海外ツアー関連の業務が急増しているようです。
大手旅行サイトのトリップ・ドット・コムによると、2月から東南アジアを中心に20か国をカバーする1,200以上の海外ツアーを販売開始しており、5月のゴールデンウイーク期間の予約が殺到しているようです。
中国旅行研究院では、中国人海外旅行者数は国内旅行の回復にやや遅行するが、今年で5,000万人弱とコロナ前の32%前後に達すると予測しています(「中国の海外旅行支出(月次)」図参照)。
経済活動の再開により中国経済の再循環の実現はもはや時間の問題であります。それは中国経済を押上げると同時に、その波及効果として中国人観光客が増加する渡航先の国にとってサービス輸出が増えることで成長率の押し上げ要因になることも期待されます。
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