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China Market Eye 中国経済の回復が本格化か?

2023.02.01 (水)

アイザワ証券 上海駐在員事務所

柳 林

China Market Eye 中国経済の回復が本格化か?

中国では今後リベンジ消費が本格化か?

2022年の中国の小売売上高はほぼ前年比変わらずと、消費の伸び悩みが目立ちました。政策金利の予防的な引き締めなどが消費の足かせとなっています。また、昨年末にかけて中国のゼロコロナが堅持されて、外出自粛が厳格に実施されたことも消費低迷の一因となりました。

その一方で、直近は感染拡大のピークアウト機運も高まりつつあり、都市部ではかつての活気を取り戻してきました。これから中国ではリベンジ消費が本格化してくる可能性があるとみています。

足元の旅行、レジャー関連消費は好調

全体には低迷していましたが、いくつかの業種では回復の兆しも出てきました。その第1弾が旅行・レジャー関連です。移動制限の解除などによって、これまでは抑制されていた消費などが増加しています。例えば、1日当たりの中国国内フライトの運航便数は、ゼロコロナ政策の完全撤廃を宣言された2022年11月末から1か月半の間に約4倍の12,000 便の大台に急増しました(前図参照)。

また中国のハワイともいわれている海南島では、春節(旧正月)にかけて高級ホテルや離島免税店がにぎわったほか、マカオのカジノ観光客の増加も目立っています。現地の報道によると、今年の春節期間中の中国各地の旅行・施設予約件数は、前年同期に比べて8割程度増えたようです。中国人の旅行・レジャー関連の消費の好調さがうかがえます。

春節休暇期間の映画館の興行収入は記録的な水準に

そのほか、飲食サービスや映画館などの接触型サービス消費の増加も顕著です。特に好調さが目立っているのが映画館利用者の増加です。実際、今年の春節連休中前半(6日間のうち3日目まで)の中国の映画興行収入は、既に40億元を上回っており、6日間で80億元(約1,500億円)超と記録的水準に達する見込みです(前図参照)。

(参考:2021年の年間の日本の映画興行収入は1,600億円程度)

消費全体はまもなく本格回復か?

映画館の興行収入などが好調な反面、上海市内の大型ショッピングセンターなどにおける客足の戻りは依然低調で、中間層を中心とした大衆消費の回復遅れが目立ちます。ウィズコロナが浸透してくることと、経済の国内大循環復活・波及に伴う雇用・所得情勢の好転が重要と思われます。今後、中国経済が本格回復を目指していくための必須条件だとみています。

なお、中国人にはメンタルの切り替えが早い世俗的楽観主義者が多く、重商主義という伝統も強いという傾向があります。政府からの継続的な政策支援が期待できることも、中国の消費拡大の追い風になると予想されます。足元の感染状況は予想以上に落ち着きつつあり、消費全体の本格回復時期は近づいていると思われます。

ここ数年の中国では、不動産市場の低迷が景気を落ち込ませていました。昨年来、中国当局は利下げなど各種の緩和措置を実施していますが、不動産の低迷に歯止めがかかりませんでした。中国が厳密なゼロコロナ政策を続けていたことが、大きな問題であったと思われます。

しかし直近は、ウィズコロナの政策に方針を転換してきたことで、これまでの重石がなくなり、今後の不動産市場の底入れが早まる可能性が出てきました。不動産市況の好転に伴って、家電や建材など関連消費の回復も期待できるとみています。

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ライター

柳 林

アイザワ証券 上海駐在員事務所

柳 林

中国遼寧省瀋陽出身。日本の証券会社で中国株の調査に従事したのち、2003年にアイザワ証券に入社。投資リサーチセンター(現市場情報部)で中国株の調査、分析を担当する。2005年にアイザワ証券子会社の上海藍澤投資諮詢有限公司の社長に就任、2008年よりアイザワ証券上海駐在員事務所の首席代表を務める。日本からは分かりづらい中国の「リアル」な姿を現地から伝える。

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