3分でわかる市場のしくみ 米国上場の中国企業による香港上場ブーム
2020.06.22 (月)
Q. 米国上場の中国企業による香港上場ブーム!何が起きているの?
A. 新型コロナウイルスの流行もあって、ふたたび米中対立が先鋭化してきました。
その波は金融市場にも押し寄せてきています。
5月20日、「中国企業の米国証券取引所への上場を制限する法案」が米上院を通過しました。この法案が施行されると、中国企業は3年連続で中国政府の管理下にないことを証明できないと米国での上場が禁止されてしまいます。
こうした流れを受けて、米国上場の中国企業による香港証券取引所への重複上場が進み始めています。
6/11 ・・・ネットイース(ネットサービス大手)
6/18 ・・・JDドットコム(Eコマース中国No.2)
重複上場(Dual Listing)の意味は?
重複上場とは、ある企業が異なるふたつ以上(Dual)の取引所にそれぞれ株式を上場(Listing)することです。
当然取引所によって上場の基準や適用される法律等が違うため、コストや制度対応の労力が大きいです。
それでも、上場先での知名度の向上や流動性の確保等の面からメリットもあります。
また米国上場の中国企業が香港に重複上場する大きなメリットのひとつは、中国本土の個人投資家という巨大なマーケットへのアクセスが可能となることです。
中国国内の個人投資家は、米国株にアクセスできないケースが多いです。中国企業が米国のみ上場ですと、自国の有名な大手企業でありながら株式への投資はできない、ということが起こります。
香港であれば、ストックコネクト(※)を通じて中国本土の投資家が取引することができるようになるのです。
※ストックコネクト・・・中国本土(上海・深セン)と香港の取引所をつなぐシステム
ちなみにこれに先駆けること約半年、アリババグループが香港への上場を果たしました。
中国のリーディングカンパニーである同社ですが、実は2014年頃にも香港への再上場を目指しています。
しかしその際、種類株式を巡って香港取引所と折り合いがつかずに、結局は断念してアメリカに上場した過去があります。それから数年を経て、香港取引所の制度改革もあって、念願の香港への上場が認められました。
それまで中国企業が米国・香港での重複上場をしているケースは少なく、アリババがその道を拓いた形になります。
今後も、バイドゥなどの、そのほかの米国上場の中国企業も同じ様に香港上場を目指すと思われます。
依然として香港の情勢は米中対立の狭間で難しい状況となっていますが、皮肉にも取引所としてのプレゼンスは上がってきており、引き続き注目の市場です。
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