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China Market Eye 新エネルギー車の拡大に注目

2023.04.28 (金)

アイザワ証券 上海駐在員事務所

柳 林

China Market Eye 新エネルギー車の拡大に注目

「上海モーターショー2023」

世界最大級のモーターショーである「上海モーターショー2023(オート上海2023)」が4月18日から始まりました。

中国の経済再開に伴って海外メーカーが 一斉に世界最大の自動車市場に戻ってきました。若年層を中心に中国各地からの来場者が100万人を超えると見込まれるなど、クルマに対する中国消費者の熱い情熱も改めて感じさせます。

4月18日~27日開催 「上海モーターショー2023」(第20回上海国際自動車工業展覧会)の入り口
36万平方メートルの展示スペースに1,000社以上、150以上の新型車が出展。週末の来場者数は25万人を超える盛況ぶり、10日間で延べ100万人超を見込む

ガソリン車かEVかの論争は終了、地場勢を先頭にEV化・スマート化が加速

150以上の新車モデルのうち、3分の2以上を新エネルギー車が占めたようです。ガソリンエンジンの新車を公表したメーカーについても、同モデルの新エネルギー車を同時公開するか、新エネルギー車のコンセプトカーモデルを発表していました。

昨年の中国のEV販売台数は596万台と全世界の59%を占めており、このような中国新エネルギー車市場の離陸(テイクオフ)を背景に海外勢もついにEV化の流れに舵を切ったといえます(下図参照)。

中国の新エネルギー車販売台数とその販売比率

一方、パンデミックを経て中国企業はBYDや吉利(ジーリー)など民間メーカーを中心に技術力を磨きながら、国内にバッテリーなど自動車部品のサプライチェーンの垂直統合を図ってきました。

産業集積やスケールメリットのほか、消費者体験や走行ビックデータの蓄積、斬新なデザイン性、革新的スマート化技術の積極応用などを通じて、実力とブランド認知度を飛躍的に向上させています。BYDの新車販売平均価格が昨年で初めてフォルクスワーゲン(VW)を上回ったのは、中国企業の先進性を消費者が認め始めた象徴的な出来事といえるでしょう。

今年の中国新エネルギー車販売台数は850~900万台を予想されます。EV産業チェーンの台頭を原動力に中国の自動車輸出台数は昨年末から月次ベースで既に世界トップに躍り出ており、今の勢いが続けば2~3年以内に中国ブランドが世界シェアの10~15%(600~750万台)に拡大する可能性があります(下図参照)。

中国・ドイツ・日本の自動車輸出台数

百花繚乱のローカル勢、巻き返しを図る海外勢、チャレンジ的中国消費者が市場のスマ ート化を加速

いうまでもなく、技術力及び製品力の向上で勢いを増すローカルブランドはモーターショーの主役です。特に業界のリーダーであるBYDへのユーザーの関心度は非常に高く、業界最高峰を誇る超高級モデルの「仰望」(価格:109.8万元)を近くで見るだけで長蛇の列ができるほどです。

BYDの独立した超高級ブランド、「仰望」の巨大展示場
高性能なオフロード電動SUV「U8」とスポーツEV「U9」同時デビュ。車両価格80~150万元

BYDは半導体などの内製化により、7万元帯の小型EV「シーガル」(航続距離:305~405km)の開発にも成功し、全価格帯の制覇を目指しています。「シーガル」は予約殺到で人気なミニEV「五菱宏光」に取って代わる国民車になるか注目です。

BYDの小型EV「シーガル」 中国のみならず世界でも大ヒットの可能性を秘める。航続距離305~405Km、価格7.88~9.58万元

また、長城汽車や吉利、NIO(ニオ) 、広州汽車など有力メーカーは揃って大規模なブースを構えて出展しています。スタイリッシュなデザインや新たな自動運転プラットフォームの採用、800V充電システムの搭載、一体化車体プレス技術の導入、デュアル高速充電、四輪駆動のパワートレインなどにより更なるブランドプレミアムの向上を狙います。

長城汽車のHAVALブランドの「PHEV」(ミドルクラスSUV)。中国のアウトドアブームに乗る
広州汽車傘下の純電動「Hyper GT」。価格21.99~33.99万元、テスラのモデル3を迎え撃つ

コンパクトカーやセカンドカー、アウトドアなどに焦点を合わせた細分化ニーズを取り込む動きもあります。さらにEVの快進撃を支える陰の主役であるCATLも出展しています。

長城汽車傘下のコンパクトEVブランド「欧拉(ORA/オラ) 」。女性ユーザーに人気、簡潔かつ質素な車内デザインが特徴
CATLの電池交換ステーション。僅か2分間で電池を交換できる。業界規格の標準化を狙う

一方、BMWやベンツ、レクサスなどの日欧勢は新型EVもしくは中国専用車を次々と投入するなど、強いブランド力を強みに保守的なイメージを刷新し、巻き返しを図ろうとしています。

特に欧州勢、中国依存度の高いポルシェやランボルギーニ、マセラティ、ロータス、ベントレーなどといったスーパーカーブランドは中国市場重視の姿勢を鮮明にしており、中国EV化の流れに合わせたEVモデル投入を加速しています。

マセラティの出展ブース。純電動SUVを世界初披露、EV化戦略を推進
独メルセデスベンツ社の電動SUVフラッグシップ・マイバッハ「EQS450」

中国の消費者は総じて若年層が多く、新しい技術に非常に好奇心旺盛かつチャレンジ的であるため、EVを家電やスマホのように取り扱う傾向が強いという調査も出ています。巨大さと多様性を持ちながら、先進技術への受容度が非常に高く、EV化・スマート化を加速する土壌があり、中国は自動車の世界潮流をリードする可能性を秘めるとえいます。

これから世界規模の自動車・部品メーカーが出てくるかどうか中国自動車市場からますます目を離せません。

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ライター

柳 林

アイザワ証券 上海駐在員事務所

柳 林

中国遼寧省瀋陽出身。日本の証券会社で中国株の調査に従事したのち、2003年にアイザワ証券に入社。投資リサーチセンター(現市場情報部)で中国株の調査、分析を担当する。2005年にアイザワ証券子会社の上海藍澤投資諮詢有限公司の社長に就任、2008年よりアイザワ証券上海駐在員事務所の首席代表を務める。日本からは分かりづらい中国の「リアル」な姿を現地から伝える。

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