China Market Eye 海南島の免税店
2022.07.25 (月)
海南島で免税ショッピングが人気に?!
2018年の中国の海外旅行サービス支出は2,768億米ドルと、「爆買い」とも呼ばれるほど中国人の購買パワーは世界を席巻しました。
ところが2019年末以降、コロナ禍を機に厳格な防疫対策が敷かれたため、中国人出国者数は激減しました。2022年1~5月の中国の海外旅行サービス支出は477億米㌦と、2018年同時期の4割程度にとどまっており、そのほとんどは国際収支の旅行サービスに分類される海外留学や短期滞在費用が占めていると思われます。
こうした中、中国政府は①国内消費喚起、②地域経済振興、③一段の市場開放推進といった一石三鳥を狙って、2020年6月に中国最南端の省、海南省を国際自由貿易港として開発することを正式に決定しました。具体策として、ゼロ関税、低税率、規制緩和が3本柱に挙げていますが、今のところ、1人当たり年間最大で10万元(約200万円)までの「離島免税制度」の導入が最も効果を及ぼしています。統計によると、過去2年間で海南省にある免税店10店舗を訪れた来店者数は延べ1,228万人となり、販売額は906億元(1.85兆円)と、国内免税店の販売額の大半を占めました。
海南島に世界最大規模の免税店
「中国のハワイ」とも呼ばれ、ハワイとほぼ同緯度で、美しい海岸線を擁する楽園の海南島(面積は3.54万㎢)。その最南端に位置する三亜市は、世界的に有名なホテルブランドがひしめくなど、中国を代表するリゾート地となっています。特にコロナ禍で海外旅行に行けなかったここ数年は、大勢の国内客を引きつけています。
南国気分でマリンスポーツなどが楽しめる「コト消費」と同時に、「モノ消費」を楽しめるのも海南島の魅力です。観光客が必ず訪れる場所といえば、三亜・海棠湾海沿いの中央に建設された「三亜国際免税城」です。延べ床面積は29万㎡に及ぶ巨大なショッピングモールであり、商業施設の一部はまだ建設中です。そのうち約12万㎡を免税店が占め、単体免税店として世界最大規模を誇ります。そこには300以上の世界ブランドが出店しており、商品数は10万点以上に上ります。「三亜国際免税城」の昨年の販売額は355億元(約7,200億円)と、海南省の全ての免税店販売額の5割強を占めました。
コロナに翻弄される免税店
一方で、海南島の免税店は、大都市を中心とした国内の富裕層からの売り上げに依存しているため、ゼロコロナ政策の影響も大きく受けています。今年3月までは免税店販売が順調に伸びていましたが、上海を中心とした大規模なロックダウンが始まった4月以降、大幅な収入の減少を余儀なくされました。しかし上海ロックダウンが解除された6月以降は、三亜の高級ホテルの宿泊料が軒並み通常よりも60~120%高く設定されたにもかかわらず、満室に近い状態が続くなど、春節の時期に匹敵するくらいの盛況ぶりへと一転しています。
これにより免税店にも大勢の旅行客が押し寄せています。夏休みと重なったほか、2か月に及ぶ都市封鎖で疲弊した上海の人たちが、コロナ禍の閉塞感を吹き飛ばす「リベンジ消費」を楽しもうとしているからです。また、免税店で販売されている海外ブランド化粧品の小売価格は、上海と比較して約2~3割安くかなりお買い得感もあるようです。
海南島は国内消費のバロメーターに?
調査機関では、「三亜国際免税城」の収入は、上海ロックダウンにより2022年は前年比微増にとどまると推測されるものの、営業を開始したばかりでもあることから、2年後の2024年には倍増すると強気に見ています。その理由について、中国の1人当たりGDPは2年後に1万5,000米ドル超となり、「中所得国の罠」を抜け出すと予想、これにより引き続き奢侈品への旺盛な需要が見込まれるほか、同店の好立地やスケールメリット、優れたサプライチェーン、元高なども追い風になると挙げています。免税店の販売動向は中国の国内消費を占う上でも重要なバロメーターとなっているだけに、今後ますます海南島の注目度が高まりそうです。
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