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コリアインサイト EVの時代へ、韓国の電装部品メーカーは?

2021.07.05 (月)

有進投資証券

成 承桓

コリアインサイト EVの時代へ、韓国の電装部品メーカーは?

昨年、韓国のスマホ市場のシェアはサムスン電子が65%、アップルが20%、LG電子が13%でした。しかし今年、LG電子がスマホ事業からの撤退を発表し、市場に衝撃が走りました。LG電子撤退の背景には電気自動車(EV)事業の強化があります。

世界各国のEV市場は増勢を強めています。今年1~5月の国別EV販売台数を見ると、中国は前年同期比225%増、ドイツは同232%増、米国は同106%増となりました。各メーカーから多様なモデルのEVが発売され、今後さらに急拡大すると思われるEV市場ですが、EVはこれまでのディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどによる内燃機関自動車とは異なり、電装部品がより重要となってきます。今回は、この重要部品を製造する韓国企業について見ていきましょう。

EVのエンジンであるモーター

EVの駆動モーターはエンジンの役割を担う中核部品です。最近はマルチモーターを採用するモデルが増えており、EV向けの駆動モーター市場は、2021年の41億ドルから2025年には129億ドルまで拡大する見通しです。今のところ突出した企業はありませんが、各自動車メーカーのグループ企業などが供給を担っています。例えば、現代自動車(韓国:005380)には現代モービス(韓国:012330)が納入しています。

そのほか、LG電子(韓国:066570)は洗濯機に使うスマートインバーターモーターを用いた駆動モーター技術を保有しており、今年、カナダの自動車部品大手のマグナ・インターナショナルと合弁会社を設立します。この事業は、LG電子の新たな成長の原動力の一つとして貢献が期待されています。また、大手総合商社のポスコ・インターナショナル(韓国:047050)の子会社のポスコSPSは、駆動モーターコア事業を強化し、世界の主要自動車メーカーからの受注を目指して、モーター部品のメーカーとして生まれ変わることを明らかにしました。

一方、現代自動車においては、2月に発売したEV旗艦モデルの「アイオニック5」が、モーター駆動・部品の生産不良により調達が滞り気味で生産に支障が出ています。

ADAS(先端運転支援システム)

ADAS(先端運転支援システム)
ADASは、ドライバーの安全性と利便性を図るために、多様なセンサーを使って周囲の状況を感知し、ドライバーを補助したり、ドライバーに代わって自動車を制御するシステムです。

機能としては、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール:アクセルとブレーキを自動的に操作して運転を支援する機能)、AEBS(衝突被害軽減ブレーキ)、LKAS(車線逸脱防止支援システム)などがあります。今後、自動運転のレベルが高まるほど、ADASセンサー市場の成長が期待されます。矢野経済研究所によると、2025年までのADAS装着率は日米で90%、欧州で80%、中国で70%を超えると予測しています。

車載用カメラモジュールメーカーには、世界シェア第2位のLGイノテック(韓国:011070)や第5位のMCネックス(韓国:097520)などがあります。MCネックスは、主に現代・起亜自動車向けにカメラモジュールを供給しており、韓国国内では80%の市場シェアを占めています。

MLCC(積層セラミックコンデンサ)

MLCCはこれまで主にスマホやPCなどのIT機器に使われてきましたが、電装部品の需要増加とともに急成長しています。EVには、テレビやスマホとは比べものにならないほどのMLCCが搭載されています。車載用MLCCの市場は、2019年の33億ドルから2022年には57億ドルまで拡大すると予測しています。

車載用MLCCは高度な技術力が必要であり、現在は日本の村田製作所とTDKが市場シェアの90%を掌握しています。一方で、韓国のサムスン電機(韓国:009150)もシェアを拡大しつつあります。

車載ディスプレイ

車載ディスプレイは、コネクテッドカーや自律走行車の発展とともに通信の双方向性が必須となりつつあります。車載ディスプレイ市場は、売上高ベースでLGディスプレイ(韓国:034220)が92.5%、サムスンディスプレイ(未上場)が6.9%、中国のBOEテクノロジー・グループ(深センA:000725)が0.6%のシェアを占めており、LGディスプレイが圧倒的なシェアをもっています。

今後は多様な素材によるフレキシブル及びローラブルディスプレイが採用されたモデルが増えると思われます。市場の拡大や高級化が進むでしょう。

EV関連で注目したいLG電子

LG電子が手掛ける主な電装部品は次のとおりです。

①AVN(オーディオ、ビデオ、ナビゲーション)、LCDクラスタ、 センターインフォ メーションディスプレイ(CID)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、テレマティクスなどドライバーの安全性と利便性を提供する部品
②車両セキュリティ、無線充電器、スマートアンテナ、ADAS
③駆動モーター、コンバーター、バッテリーパック、電動コンプレッサーなどの電気自動車の中核部品
④ヘッドランプ(2018年に欧州の自動車用ライト大手ZKWグループを買収し、売り上げを拡大中)

前述のとおり、7月には駆動モーターとバッテリーヒーターなどを製造する部門を分離し、マグナとの合弁会社「LGマグナ・イーパワートレイン」を立ち上げます。同社に対するLG電子の出資比率は51%になる予定です。

マグナは、ゼネラルモーターズ(GM)、BMW、フォードモーター、クライスラー、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ホンダなど、すでに世界中の主要自動車メーカーを顧客に抱えています。家電メーカーから電装部品メーカーへと生まれ変わろうとしているLG電子の今後が注目されます。

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ライター

成 承桓

有進投資証券

成 承桓

全南大学卒業後 、 未来アセット証券 、 教保証券 、 SK 証券を経て 、 2008 年に有進投資証券入社 。 国際営業チーム 、海外事業 チーム 、 海外投資チームを 経て 、 2021 年よりマルチ金融チームで日本の不動産及び金融商品を 担当している 。趣味はランニングと映画鑑賞 。

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