コリアインサイト コロナ禍でどうなる!?韓国エンタメ業界
2021.08.10 (火)
コロナ禍は世界中のさまざまな業種に影響を与えています。例えば、半導体及びIT関連には恩恵をもたらし、反面、航空及び旅行などには悪影響を及ぼしています。
それではエンターテインメント(以下、エンタメ)についてはどうでしょうか。大きな収入源であるコンサートが開催できないため、厳しい逆風にさらされていますが、予想外にも業績は堅調さ維持しています。今後コロナ禍が落ち着きコンサートが再開されれば、さらに収益の拡大が期待されます。
今回は韓国エンタメ業界の現状と見通しについて解説します。
コンサート中止も旧譜が売れる
昨年から今年にかけて、韓国のエンタメ業界において特徴的なのは音盤(CD)の売れ行きが好調だったことです。2020年に、韓国国内の売り上げ上位40曲の音盤販売枚数は、前年比73%増の4254万枚となりました。2019年は前年比8%にとどまったことを考えると驚くべき伸びです。特に今年第1四半期(1~3月)はアーティストの目立った活動がほとんどなかったにもかかわらず、音盤売り上げは前年同期比8%増加し、音源売り上げが同19.5%減となったのと対照的でした。
音盤の売り上げが伸びた要因は、コロナ禍の長期化でコンサートの再開見通しが立たなくなり、「ファンダム」(熱心なファン)の消費が音盤に向かったからだと思われます。音盤は音源と異なり、ポートカードなどの特典サービスがつくなど趣向を凝らした形式で販売されます。こういったサービスは、アーティストに直接会えない「ファンダム」の欲求を満たす効果があるようです。さらにこれ以外にも、音盤の売り上げが伸びた要因があります。
今年第1四半期に、韓国のエンタメ大手3社(SMエンターテインメント、YGエンターテインメント、JYPエンターテインメント)は、いずれも音盤の売り上げが急増しました。
JYPは主力アーティストの新曲の発売がなかったにもかかわらず、旧譜を31万枚販売。また、YGは、人気女性アイドルグループのブラックピンクのメンバー、ロゼのソロデビューと、昨年デビューし人気が急上昇している男性アイドルグループのトレジャーの効果で、前年比10倍増の98万枚を販売。SMも290万枚を販売しました。
2013年には、大手4社(大手3社+男性アイドルグループのBTSが所属するハイブ)の音盤市場シェアは37%に過ぎませんでしたが、今年第1四半期には94%まで拡大しています。これは「ファンダム」による音盤消費の拡大が背景にあるからです。
さらに、「ファンダム」は世界でも増加しつつあります。2020年の音盤輸出額は前年比83%増の1億3620万ドルとなりました。今年に入り販売の勢いはさらに増し、1~4月で5618億ドルと昨年年間の輸出額の41%をすでに達成しています。特に米国向けの増加が著しく、2020年は前年比130%増の2028億ドルと急増しました。米国は日本に次ぐ第2位の輸出先に浮上しています。これは韓流がアジアを超えて欧米に拡散していることを表しています。
コロナワクチンの接種が進んでいる国では、第4四半期(10~12月)にも観客を動員するコンサートの再開の可能性が見えてくると思われます。コンサートが再開されれば、抑えられていた需要が一気に回復することが期待されます。それまでは引き続き、音盤とアーティスト関連グッズの需要が堅調に推移する見通しです。
ファンフラットフォームの浮上
エンターテインメント各社の独自コンテンツやファンと交流ができるサイトなど、ファンとの繋がりを深める非対面式のオンラインツールが増えています。男性アイドルグループのBTSやNCT、セブンティーンなどによる独自コンテンツは「ファンダム」の獲得に寄与しています。中でも、NCTのYouTubeチャンネル登録者数は昨年6月の100万人から、今年に入り300万人を突破しました。
また、コロナ禍でアーティストがファンと対面で交流することができなくなったことから、エンタメ各社は他の方法を模索しています。双方向でコミュニケーションができ、独自コンテンツを見たり、グッズの購入までできるファン向けのプラットフォームを構築し、積極的に活用しています。
コロナ禍でも成長し続ける韓流
「ファンダム」はグローバル化しつつあり、そのペースは来年さらに加速することが予想されます。独自コンテンツを通じて流入した新規のファンが、ファン向けのプラットフォームでアーティストと交流し、ファンとして定着、さらにコンサートの再開で「ファンダム」へと成長していくことが期待されます。
このように、さまざまなツールを通して増える続ける韓流コンテンツとそれを消費するファン、それらがITを通じて世界に拡散して行くことで、韓流関連企業は一段の成長が見込まれるのではないでしょうか。
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