コリアインサイト 本格化するメタバースビジネス
2021.12.27 (月)
以前、「メタバースが新たな世界を切り拓く」において、メタバースとこれを活用した韓国のエンターテインメント産業を紹介しました。
その後、コロナ禍による非対面化とIT技術の目覚ましい進歩や、韓流コンテンツの世界的な認知向上などが追い風となって、メタバース関連ビジネスが本格化しています。さらに、仮想通貨やNFT(非代替性トークン)ビジネスとともに、MZ世代(ミレニアル世代とZ世代、1980~2000年代生まれ)のライフスタイルに浸透しつつあります。
今回は現実のエンターテインメントビジネスが、メタバースやNFT、仮想通貨と有機的に繋がり、急成長している仮想世界ビジネスについてみていきましょう。
NFTは一点もののデジタル資産、仮想通貨は貨幣
メタバースは単純な想像の空間ではなく、実際に経済活動が行われる空間に発展しつつあります。現実の世界と仮想の世界の境界は曖昧になりつつあるのです。
例えば、メタバースに出店している商店や美術館、カジノなどからNFT化されたアイテム等を仮想通貨で売買し、そこで得た仮想通貨を取引所で現金化することで現実の世界でも使えるようになります。すでに多くの人がこのような取引を行っていますが、今後より多くの企業やクリエイターが参加することで、市場規模は一層拡大していくことが予想されます。
IP(知的財産)保有企業はメタバース投資を加速
最近、米国のフェイスブックがMetaに社名変更をし、世界が驚かせました。まだ、遠い世界のことのようだったメタバースに、フェイスブックのような大企業までもが多額の投資をするようになってきています。それはメタバースビジネスが現実味を帯びてきており、メタバース内での経済活動が、エンターテインメントとPlay-to-Earn(遊んで稼ぐ)などを通じて具体化されつつあるからです。
それでは、ビジネスモデルを具体的に見てみましょう。
2020年2月、韓国の大手エンターテインメント会社、SMエンターテインメント(韓国:041510)の孫会社のDearU(韓国:376300)は、好きなアーティストと1対1でチャットができるプライベートメッセージサービスの「DearU bubble(ディアユー・バブル)」を開始しました。SMエンターテインメントだけでなく、FNCエンターテインメントやJYPエンターテインメントなど、23社に所属する229人のアーティストが同サービスに参加しており、有料購読者は120万人に上ります。
同社はこのサービスからもう一歩踏み込んで、2022年3月に「マイホーム」というサービスをリリースする予定です。メタバースに自分の部屋を作り、アーティストのグッズで飾ることができます。さらにここで飾られるグッズはNFT化されていることから、仮想通貨を使って売買できます。
例えば下の事例のように、NFT化された1点もののグッズで飾った部屋に、有名なアーティストのアバターが訪問したら、この部屋の価値が上がる可能性があります。そうなれば、この部屋とグッズは仮想通貨を使って高く売買することできるという仕組みです。
そのほか、アフリカTV(韓国:067160)は、NFTプラットフォームの「AFTマーケット」で買ったBJ(ブロードキャスト・ジョッキー※)のアバターが活動する仮想空間、「Freeblox」をリリースする計画です。このサービスでは仮想通貨を使ってゲームやショッピング、ライブストリーミング、不動産取引などができる予定です。
※韓国版「ニコニコ動画」の「アフリカTV」動画配信する人たちのこと
投資家の関心と資金を集める
フェイスブックの社名変更や、ブロックチェーンゲームの「The sandbox」のアルファテスト実施、韓国大手企業のSKグループによる投資などをきっかけに、メタバースビジネスは投資家の関心と資金を集めています。
「The sandbox」の仮想不動産は、11月に1か月間で1,000%も上昇し、他のメタバースプロジェクトにも資金が向かっています。メタバースビジネスは今後の大きな流れの中で、大きな「生態系」を築いていくとみられます。
関連する韓国の上場企業として、ハイブ(韓国:352820)、SMエンターテインメント(韓国:041510)、JYPエンターテインメント(韓国:035900)、SKホールディングス(韓国:034730)、NAVER(韓国:035420)などが挙げられます。
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