コリアインサイト 政権交代で変わるエネルギー政策
2022.04.04 (月)
韓国の大統領選挙が終わりました。野党の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補が勝利し、5月10日に政権交代することが決まりました。特にエネルギー政策については、大統領選挙期間中に激しい攻防が繰り広げられたことから、今後大きく変化することが予想されます。
韓国の原発業界は世界でも優れた技術を誇っていましたが、現政権の脱原発政策により大きく後退してしまいました。脱原発の白紙化により、再び競争力を取り戻せるチャンスがやってきたと思われます。
今回は、政権交代が韓国のエネルギー産業に与える影響について見ていきましょう。
公約に掲げられたエネルギー政策
注目すべきエネルギー政策は2つあります。
1つ目はカーボンニュートラル(炭素中立)と炭素税政策です。有進投資証券の推定では、2030年までに発電部門だけで二酸化炭素の排出量を2億トン以上削減しなければなりませんが、産業別に排出目標を調整すれば緩和される可能性があります。
また、与党側候補は、新たに炭素税を導入して国民基本所得の財源にすることを公約に掲げていましたが、ユン候補は炭素税の導入に対して慎重な見方を示していることから、この政策は見直されそうです。
2つ目は原発に関する政策です。現政権で中断されていたシンハンウル原子力発電所の3号機と4号機の建設が直ちに開始される見通しです。当時建設受注した韓国電力、韓国電力技術、斗山重工業などの関連会社では、すでに受注残高として計上されていましたが、現政権の脱原発政策により建設が中断されていました。
そのほか、すでに決まっていた他の原発投資も再開する見通しであるうえ、既存の原発についても運転期間の延長が期待できます。
一方で、石炭など化石燃料の発電所の割合は3分の1に縮小する計画です。今後、韓国のエネルギーは原発の活用に加えて、LNGや再生エネルギーの拡大も見込まれます。
エネルギー関連企業への影響
韓国の電力関連会社は、脱原発政策の中、足元の石油価格の急騰とドル高ウォン安の進行により大きな損失を抱えています。しかし脱原発の白紙化により、中長期的にファンダメンタルが改善しバリュエーションが正常化されるでしょう。企業ごとの見通しは次のとおりです。
- 韓国電力:発電コストの低い原発の割合が上昇することで、ファンダメンタルの改善が見込まれる。
- 韓電KPS:新規原発の建設後(約7年後)から整備関連の売上が生じる見通し。加えて、既存の原発の運転期間延長も収益を押し上げることが期待される。原発1基当たりの営業利益は約100億ウォン増加すると推測される。短期よりも長期での効果が期待される。
- 韓国電力技術:海上風力、バイオマスなどが好調。加えて、原発建設では1基当たりの営業利益は200億ウォン程度の増加が見込まれる。
- 斗山重工業:現在の受注残高は14兆ウォン、そのうち原発は1兆ウォンを占めていると推測。会社側は、今後、受注残高について8兆ウォンの増加を見込んでいる。しかし、国内での原発建設の活性化と海外受注を勘案すれば10兆ウォンの増加も可能か。さらに、海上風力発電やLNG発電の増加も持続的な成長に寄与する見通し。
エネルギー関連産業は国民の生活に深く関わっているため、政策が与える影響は大きいと推察されます。したがって、株式市場においても関連業種の動向が注目されます。
そのほか、今回はテーマ上あまり触れませんでしたが、新政府は韓日関係の改善にも意欲を示していることから、こちらの進展も期待されます。
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