コリアインサイト 間近に迫る韓国大統領選挙と経済
2022.03.07 (月)
韓国の大統領は強大な権限を持っており、政策の方向によって韓国経済は大きな影響を受けます。しかし、歴代の大統領選挙の公約と選挙後に実行された政策を見ると、双方に著しい差がありました。
このことを踏まえると、株式市場においては、選挙公約の内容よりもトレンドが重要であると考えます。過去の相場を振り返ると、韓国株式市場は概ね大統領選挙から6か月後には強気に推移しています。1981年以後8回の大統領選挙においては、アジア通貨危機とリーマンショック時の選挙を除いて、株式相場は上昇しています。
今回は、3月9日と間近に迫った大統領選挙と経済への影響について見ていきましょう。
産業政策はどの候補に転んでも同じ
どの候補が大統領になってもデジタル、脱炭素、ベンチャー、スタートアップなどの分野への支援は避けられません。ベンチャー企業の育成を通じて雇用を拡大し、大企業よりも中小企業を中心とした支援が予想されます。
2020年末時点でベンチャー企業の雇用者数は70万人、2021年上期末時点では73万人でした。一方、2020年末時点の4大企業グループの雇用者数は69.8万人であったため、ベンチャー企業の雇用者数の方が多かったです。就職難の韓国では、ベンチャー企業の数を増やすことが直接的に雇用の拡大につながるのです。
ベンチャー企業の中でも特に昨年雇用が増えた業種は、順にICTサービス、流通サービス、電気・機械装備となっています。これらの業種は投資額も増えていることから、投資の増加が雇用につながることは明確です。
ベンチャーが活性化するためには、投資資金の回収を円滑に進める必要があります。IPOを通じて、コスダック(KOSDAQ)に上場するケースも増えてくるでしょう。
正反対の財政政策、ポイントは速度か
財政政策に関して、「共に民主党」のイ・ジェミョン候補は財政拡大を主張し、「国民の力党」のユン・ソクヨル候補は財政管理の必要性を訴えています。
韓国の負債比率は45.8%(2021年上期基準)と、格付け会社S&Pグローバル・レーティングの格付けが韓国と同じ「AA」の国々と比べてみても良好な水準となっています。しかし、過去5年間の韓国の政府債務は、米国・イギリス・フランスなどの基軸通貨国を除くと、かなり速いペースで増加しています。
また、米国と日本は政府債務が増加する一方で、企業や家計の民間債務は減少しましたが、韓国は2010年以後、政府、民間ともに負債比率が増加しています。少子高齢化により韓国の政府債務の増加は避けられないと思われるものの、その速度は注視していく必要があるでしょう。
大企業よりも中小企業に
次期政権の政策の恩恵が期待できるのは、大企業よりも中小企業でしょう。財政政策やそのほかの各種政策を通じて、ポストコロナの経済回復を支援することになると思われます。間近に迫る大統領選挙の動向が注目されます。
ご留意事項
免責事項
本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。