コリアインサイト 世界的な納車遅れ、韓国の自動車メーカーは
2021.10.11 (月)
車載用半導体の供給不足が、世界の自動車メーカーの生産に影響を与えています。
自動車メーカーの営業員によると、新車の納車までに人気モデルでは4~5か月、その他のモデルでも3か月以上かかっているようです。また、納車までの期間は今後さらに伸びる可能性が高いと言われています。
そのほか、半導体だけではなく鉄鋼価格の値上がりも生産コストを押し上げています。景気が良くない状態であるにもかかわらずコストだけが上昇してしまう状況です。今回は足元の自動車業界について見ていきましょう。
韓国車メーカーの9月販売状況
韓国自動車メーカーの9月の国内販売は、前年同月比33.7%減の9.2万台でした。メーカー別では、現代自動車が同34.6%減、起亜自動車が同30.1%減、韓国GMが同36.5%減、雙龍自動車が同53.0%減、ルノーサムスンが同25.5%減などと、いずれも不振でした。
ただ、電気自動車(EV)の販売は好調で、現代自動車のアイオニック5は2,983台、起亜自動車のEV6は2,654台となり、EVだけが前年に比べて増加傾向となりました。そのほか、海外売上は同15.6%減(現代自動車は同19.4%減、起亜自動車は10.1%減)でした。
販売不振の主な原因は、1)車載半導体の供給不足、2)他の部品でも輸送の遅れと納品の遅れが発生、3)連休による操業日数の減少です。特に半導体不足は、マレーシアにおける7~8月の新型コロナウイルスの感染再拡大で生産に支障が出たことや、港湾での人手不足が輸送に影響を及ぼしました。
調査機関のグローバルインサイトによると、世界の生産台数の減少は、2021年第2四半期に260万台、第3四半期に380万台、第4四半期に320万台に上るとみられています。これは下期に生産の遅れが上期に比べて70%も拡大するということを示します。
その一方で、第3四半期の見通しを現代・起亜自動車グループに当てはめてみると、同グループの世界シェアは8%程度のため計算上は34万台くらいの生産台数の減少が見込まれますが、実際は14~15万台程度にとどまったもようであることから善戦していると言えるでしょう。
生産コストの上昇とその影響
自動車部品の供給不足は第4四半期から緩やかに緩和すると思われるものの、問題は原材料・資材の高騰です。原材料価格の値上がりは2022年に以降、生産原価の上昇へとつながることが予想されます。
現在、現代・起亜自動車グループは売上の73%程度を原価が占めていますが、足元の原材料価格の値上がりは2022年以降、本格的に原価に反映する見通しです。特に鉄鋼価格は年初来で約7割上昇しています。原材料・資材の値上がりにより、原価率は0.4%上昇し、利益を圧迫することが予想されます。
自動車メーカーの業績回復のポイントは
自動車業界を取り巻く逆風の中、現代・起亜自動車グループの業績回復の鍵はEVの販売動向になると思われます。
2022年に、現代自動車のアイオニック5が米国で、起亜自動車のEV6が欧州で発売されます。米国政府は米国でEVを販売するにあたり、現地生産を求めています。これにより米国での増産だけではなく、新工場の建設も行われる見通しです。これをきっかけに販売台数の拡大につながることを期待しています。
ご留意事項
免責事項
本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。