コリアインサイト 韓国の不動産開発市場の状況
2024.02.20 (火)
米国の利上げに伴って韓国でも2年前から政策金利が上昇しています。それまで低金利による恩恵を受けていた不動産市場は金利上昇による打撃を受け、回復の兆しがなかなか見えにくい状況です。さらに不動産プロジェクトファイナンス(以下、PF)が問題となっており、建設工事が止まってしまった現場が数多く見られます。
今回は韓国の不動産開発市場の状況と今後の見通しについてご紹介したいと思います。
零細な韓国の不動産開発業者
日本のように不動産開発業者の資本金が大きく、資金力があれば金利上昇の場面でも問題ないでしょう。しかし韓国の場合、ほとんどの開発業者は規模が小さい零細企業であり、調達できる資金は手掛けるプロジェクトの10%以下という場合が多いです。足りない資金はPFを使って調達しますので、資金調達が困難な場合は会社が破産するケースが少なくありません。
国内16位のテヨン建設の再建手続き
開発業者の資金力が乏しいことから、施工を担う建設会社は連帯保証や債務引受といった方法でプロジェクトを進めてきました。しかし金利上昇に伴う資金調達コストの増加や資材価格の高騰は、建設会社を苦しめています。そんな中で国内建設業界、第16位のテヨン建設が経営再建の手続きに入りました。
このことは韓国の不動産開発の現状を示しています。
影響を受ける第2金融圏
証券や貯蓄銀行などの第2金融圏は、今回の不動産PF危機で大きく影響を受けると思われます。例えば、優良不動産開発プロジェクト向けのシニアローン中心を取り扱う銀行のPF貸付延滞率を確認すると1%を切っています。その一方で、証券会社と貯蓄銀行はリスクのある不動産開発プロジェクト向けの劣後債が多いため、PF貸付延滞率がますます高まっているのが分かります。
しかし、結論としてはリスクに晒されているPFの貸し手は限られているため、金融市場への影響も限定的ではないかと思われます。
出所:韓国金融委員会(FSC)
また当局は2022年にテーマパーク「レゴランド・コリア」を巡る債務不履行問題が発生して以降、政策的な対応を迅速に行うようになっており、不動産需要の促進や市場安定化を図る対策を実施しています。
韓国の不動産市場は厳しい時期を経験していますが、構造調整を通して、より強い体質に変化すると思われます。
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