コリアインサイト センチメントの悪化が続く韓国の債券市場
2022.11.02 (水)
米国の利上げにつれて韓国の金利が急騰しています。拡大基調が続いていた不動産市場にも直撃し、不動産売買件数の急減と価格調整に入りました。米国の利上げの影響が資本市場に広がり、ゼネコンや金融会社が資金確保に奔走するなど金融街のセンチメントは急速に悪化しています。
今回は、直近韓国で最も不安視されている短期金融市場の状況を見ていきたいと思います。
利上げせざるを得ない韓国
米連邦準備制度理事会(FRB)がジャイアントステップ(政策金利を一度に0.75%引き上げること)に踏み出してから、韓国の10年物国債の利回りは高値を更新し(4.655%)、CD(譲渡性預金)金利も急騰しています。また、格付けAA-及びA0の社債は、信用スプレッド(国債との金利差)が2008年のリーマンショック以来最大となっています。
レゴランド事件で債券市場が一時、麻痺状態に
韓国東部の自治体、江原道は、2011年に英国のマーリン・エンターテイメンツと契約を締結し、レゴランドのテーマパークの建設を進めてきました。しかし、建設用地での遺跡発掘やコロナ禍などで多くの工事が遅延し、工事費が大幅に増えたことから、2,050億ウォンに上る資産流動化企業手形(ABCP)を発行しました。
このABCPは江原道が保証をつけたものでしたが、10月4日、このたび新しく就任した江原道知事が開発を担当していた公社の回生申請を行いました(事実上の経営破綻)。自治体が保証していたABCPが不渡りとなったことから、債券市場は一時、麻痺状態となりました。あまりにも大きな衝撃を受けたことから、韓国政府と江原道がABCPの償還や他の支援策を表明し、過度な不安は和らいだものの、債券市場を巡る不安要因は依然として残っています。
債券市場のセンチメント悪化が株式市場にも直撃
金利の急騰とレゴランド事件で不動産市場に対する懸念が広がり、建設会社、不動産プロジェクト・ファイナンス(PF)市場で発行を担った証券会社にまで影響が及んでいます。証券、建設、REIT(不動産投資信託)まで株価が急落しました。
しかし、問題となっているPF ABCPの発行金額は四半期当たり6~7兆ウォン規模と、一般のコマーシャルペーパー(CP)の60兆ウォンや、ABCPの40兆ウォンに比べて大きくはありません。また、近年、銀行や証券会社の健全性が向上しているため、政府がうまく対処すればいずれ解決へと向かうと予想されます。
しばらくリスク回避の流れか
一方で、投資家は経済財政の健全性に対してより厳しい目を向けるようになっています。韓国の政府負債比率はGDPの47.2%と、他国に比べて良好なものの、家計負債はGDPの105%、企業負債は同113%と、高水準です。韓国の金融市場では、米国の利上げが落ち着くまでリスク回避する流れが続きそうです。
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