コリアインサイト 韓国半導体銘柄の下振れ、その理由は?
2024.09.30 (月)
HBMと韓国半導体業界の好景気
半導体メーカーのサムスン電子(韓国:005930)は2024年9月現在、韓国株式市場の時価総額の23%を占める巨大企業です。さらに同じく半導体メーカーであるSKハイニックス(韓国:000660)まで含めると、時価総額の30%にもおよびます。つまり、韓国の株式市場は半導体市場の動向に影響されやすいことが想定されます。
今年7月中旬までは韓国の半導体企業の株価は好調でした。サムスン電子の株価は年初の78,000ウォンから7月11日には88,800ウォンまで上昇、またSKハイニックスについても同時期で140,000ウォンから248,500ウォンまで上昇しました。この上昇の直接的な要因は広帯域メモリー(HBM)です。
現在様々な分野において、AIの普及が拡大しており導入企業も増加しています。しかしAIの性能向上のためには大容量のデータ処理が必要であり、そのデータ処理のためには高速計算が可能なエヌビディアの画像処理半導体(GPU)が必須です。GPUが生産する大容量のデータ保存に特化した半導体メモリーこそがHBMです。HBMは従来の半導体メモリーと比較して生産が難しいと言われていますが、その需要が増加し続けていることから、現在高価格で取引することができます。韓国の半導体企業はその恩恵を受けているということです。
ここで注目すべきところは、株価上昇の幅です。サムスン電子は年初から最高値まで約15%上昇しましたが、SKハイニックスは約77%上昇しました。 この違いはHBMの市場シェアです。
2023年末、SKハイニックスのHBMのシェアは53%で世界1位、サムスン電子は35%で世界2位でした。SKハイニックスはHBM技術の可能性に注目し、2012年から着実に技術を開発してきました。一方サムスン電子はHBM技術に懐疑的で、2019年にはHBM技術への投資を中止しています。その結果が現在の株価と市場シェアの差で現れたと考えられます。
2ヶ月続落したサムスン電子とSKハイニックスの株価
この2社が7月11日に最高値を記録した後、8月初旬に入り状況は一変しました。8月5日のブラックマンデーは日本でも最も大きな下落幅を見せましたが、韓国も例外ではありません。韓国株式市場も8.8%下落し、サムスン電子は10.3%、SKハイニックスは9.8%下落しました。
<サムスン電子の株価チャート>
<SKハイニックスの株価チャート>
当時の下落の最大原因は、日銀の予想外の金利引き上げによる円キャリートレードの清算でしたが、AI産業の収益性に対する懸念も原因の一つでした。日本と韓国の株式市場はその後株価を戻しましたが、サムスン電子とSKハイニックスの株価は下がり続け、9月19日現在、最高値からサムスン電子は29%、SKハイニックスは39%下落しました。
外資系証券会社が9月15日に発表した報告書では、サムスン電子の目標株価を105,000ウォンから76,000ウォンに、SKハイニックスの目標株価を260,000ウォンから120,000ウォンに引き下げ、HBM市場の供給過剰、既存の半導体メモリー市場の需要減少を理由に半導体メモリー市場に対する否定的な意見を提示されていました。
鋭い分析なのか、奇遇なのか?
韓国の半導体業界は先程の報告書に反論しました。まず、HBM市場の場合、受注生産を行うため、供給過剰は起こりにくく、またHBM需要の根底にあるAIへの投資を過小評価したという指摘を行いました。従来の半導体メモリー市場についても、需要の鈍化はある程度は認めるものの、需要と供給のミスマッチを誇張していると述べています。
韓国半導体業界はこれから正念場を迎えると考えられ、その動向が注目されます。
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