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China Market Eye 新旧経済の交代が加速

2024.03.28 (木)

アイザワ証券 上海駐在員事務所

柳 林

China Market Eye 新旧経済の交代が加速

新旧経済の交代が加速

2024年1~2月の経済指標は不動産を除けば、ほぼ全面改善に向かいました。そのうち、EV(電気自動車)や新エネルギー、AI(人工知能)、半導体など新興経済に向けた設備投資と技術改造投資はそれぞれ前年同期比17%と15%増加し、不動産投資の落ち込みを補い固定資産投資全体を押上げました。投資増の後押しを受けて鉱工業生産は前年同期比7%増と予想を大幅に上回りました。また、小売販売は前年同期比5.5%増と粘り強さを見せ、そのうち飲食サービス収入は前年同期比12.5%増とコロナ禍前の2019年を31%上回り、いち早く復調軌道に乗りました。

中国の2024年1~2月の飲食サービス収入

春節中の流動人口が活発化するなど、経済再開後の経済循環は緩やかながら着実に進んでいることが背景です。それを受け、CPI(消費者物価指数)は前年同期比0.7%と昨年8月以来の水準となり、デフレ懸念を一先ず後退させました。消費低迷の元凶である、コロナ禍が勃発してから異常に伸びた家計部門の預貯金残高はここにきてようやく平常時の水準にまで回帰しており、今後マクロ経済の改善や「脱不動産化」の進みに伴って緩やかな消費回復傾向は続きそうです。

3月開催の全国人民代表大会(全人代、国会相当)で、当局は「容易ではない」と強調しながらも、今年の実質GDP成長目標を昨年同様の5%前後に据え置きました。地方政府に対する専用債の新規発行枠は3.9兆元としたほか、政策の連続を重視して1兆元規模の超長期国債を数年にわたって発行していくことも決めました。

産業政策については、財政政策と合わせて引き続き経済構造の転換に軸足を置き、古い経済である不動産部門を下支えすると同時に、経済成長の原動力である工業部門の技術革新「新質生産力」の強化に取り組む姿勢を鮮明にしました。具体的な内需拡大策として、企業の設備更新投資や自動車・家電など消費財買い替えへの促進などが柱です。

2024年の中国の主要経済目標

中国銀行業の中長期ローンの前年比増減

不動産について、住宅価格は全体として5年前の2018年の水準にまで下落しており、不動産投資もベース効果で減少幅が3月から縮小していくと予想されます。また、デベロッパー大手の万科企業はデフォルト(債務不履行)に回避し、デベロッパーオフショア社債指数は小康状態を保っています。

金融・不動産緩和など一連の措置により、深センなど一部の都市に中古住宅取引が活性化するなど「3大プロジェクト」(保障性住宅や城中村再開発、平時・災害時両用公共インフラ建設)の実施に伴って46月に底入れの兆しが見られる可能性が出ています。

中国の個人向け中長期ローンと住宅価格(月次)

一連の政策支援によって中国経済が好転するというのは時期尚早だが、少なくとも不動産の落ち込みをかなり補い生産性向上を通じて国際競争力を高める可能性があります。ただ、デカップリング(中国との切り離し)や保護主義の台頭(中国のデフレ輸出懸念)を背景に、今後経済成長の持続性は外需動向及びイノベーションの成果などに大きく左右されるリスクがあります。

経済指標の改善や政策パッケージを好感して過度な悲観予想は修正され、本土株(全銘柄指数)はハイテク関連を中心に一時的に2月初めの安値から23%リバウンドし、テクニカル的な強気相場に突入しています。海外資本フローについて昨年10月から、外国人投資家は元建て債券を買い越し続け、昨年後半にかけて売り越しが続いた株式市場でも、年初から約700億元の買い越しに転換しました。

当面、本格的な米利下げを前に新旧経済の交代加速を色濃く反映した経済構造調整相場は続く公算が大きく、半導体や自動化など国産化関連や新エネルギー、高配当セクターに引き続き注目したいと思います。

外国人投資家による本土株買い越し(ネット)残高

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ライター

柳 林

アイザワ証券 上海駐在員事務所

柳 林

中国遼寧省瀋陽出身。日本の証券会社で中国株の調査に従事したのち、2003年にアイザワ証券に入社。投資リサーチセンター(現市場情報部)で中国株の調査、分析を担当する。2005年にアイザワ証券子会社の上海藍澤投資諮詢有限公司の社長に就任、2008年よりアイザワ証券上海駐在員事務所の首席代表を務める。日本からは分かりづらい中国の「リアル」な姿を現地から伝える。

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