かぶかはふしぎでうごいてる??? 第12回 チャートについて考える(後編)
2022.10.19 (水)
今回は第11回(前編)の続きです。後編ではチャートの使い方としていくつかの提案をしてみます。チャートを利用するときに、このような視点も含めて分析されると「マーケットに対する理解が高まると思います」的なことをいくつか取り上げます。この程度の話ですが、お付き合いいただければ幸いです。
トレンドは友達?
- このチャートはある銘柄の2003年からの月足チャートです。
- トレンドが発生している所に青い矢印を付けました。
- 一旦、トレンドが発生すると数年継続されることもあります。このような期間内ではトレンドに従って投資した方がよさそうです。
- このチャートは円ドルのチャートです。1994年から月足で表示しています。
- 為替は一旦大きく動き出すとトレンドが出やすい資産です。(図-1)と同様にトレンドが出た所に青い矢印を付けました。
- チャートをよく見ると、トレンドが逆転した後には、急激に逆方向への動きが生じています。トレンドの最終局面でそれまでのトレンド方向にポジションを持つと短期間で大きな損失が出ます。トレンドが変化するときの動きがどのようになっているかも、確認したい事項の一つです。
株価や資産の動きにはトレンドが発生することがあります。このトレンドと上手く「友達付き合い」出来ると、チャートから読み取れることが増えます。
あいまいな記憶なのですが、過去にチャートの大家らしき人物が「トレンドは友達」と記されていたのを思い出し、文中で引用させてもらいました(真偽は確かではない)。
しかし、人間関係と同様でトレンドとの付き合い方も、一つ間違えると面倒なことになってしまいます。あくまでも上手に付き合うことが大切かと。
他の指標と併用する
- これは日経平均と円ドルチャートを併記したものです。期間は2007/01/04〜2008/12/29の週足です。
- 見事なまでに動きが一致しており、円ドルの動きを見ていれば日経平均の動きもわかりそうな気がします。
- 同じもので、期間を2020/10/12〜2022/10/11の週足に変えてみました。最近の動きになります。
- 図-3と異なり、動きの連動性がありません。
複数の指標を並べて見比べることはマーケットの理解を深めますが、ある期間に生じている関係が常に生じるものではないことに注意してください。
その時の、経済情勢やマーケットの見方によって、資産価格の動きは変わってきます。ある期間における状況を把握する目的としては有益ですが、それが継続するかは状況次第です。
加えて、円ドルの動きが解ることを前提とした議論であるため、動きが一致「するか・しないか」のリスクを負うよりも、解る円ドルに投資した方が合理的との考え方もあります。
実際の投資に利用するならば、資産Aの動きには自信がないが、資産Bの動きには自信がある。かつ、現状では資産A・Bには強い動きの一致が見られている。そして、現在の経済情勢に変化が生じない見通しがあり、かつ、資産Bに投資できない理由があるときには、有効な手法となります。
次は、株価と業績に影響を与える指標についてです。
- 石油会社INPEXの株価と、原油価格の指標であるWTIを併記しました。期間は2021/11/29〜2022/10/12の日足です。
- 今年の6月ごろまでは動きが一致していますが、その後は弱まっています。
- 石油会社の収益に原油価格は大きな影響を与えるため、株価と原油価格の動向が一致することには納得性があります。
- それでも、連動性が弱まることがあります。これが短期的な動きなのか、長期的な動きの中でのアヤなのかは、ご自分の見通しの下で判断するしかありません。
過去の動きからヒントを得る
チャート分析の基本的な考え方の一つは、過去の動きには法則性があるとの前提に基づいて判断することです。
その前提に従えば、過去の値動きを示したチャートを「見て・考える」ことによって、何らかの示唆が得ることが出来る例を以下に紹介してみます。かっこよく言えば「歴史に学ぼう」といったところです。
題材として、銘柄AとBを取り上げます。銘柄Aは総合化学の会社であり、市況産業です。銘柄Bはハイテク部品を作る会社であり、この数十年間のIT化の恩恵を受けて成長産業と見られています。
この情報では、銘柄Aは循環株(シクリカルストックとも言われ、株価が循環するような動きを示す)と考えられ、銘柄Bは成長株(株価の上げ下げは生じるが、長期的には利益成長に伴って株価が上昇トレンドを示す)と推測されます。裏を取って行きましょう。
次に、利益の状況を見て確認してみます。
- 銘柄Aは利益水準が増加しているものの、利益が循環的に推移しています。一方、銘柄Bは一時的に利益が落ち込む時期もありますが、趨勢的には利益水準を切り上げています。
次に、株価の動きを確認してみます。
- 銘柄Aの長期チャートです。期間は1992年1月からの月足です。長期的には株価が循環していることが読み取れます。
- 銘柄Bの長期チャートです。期間は1992年1月からの月足です。長期的には株価が上昇傾向にあることが読み取れます。
データを確認して行くことによって、最初の推測が確からしいことを確認できました。チャートを使うことにより、マーケットでの評価も確認できます。前編でも記しましたが、目的に合った期間のチャートを使うことがポイントです。
企業の収益動向に大きな変化がなければ、これまでの株価推移が再現される可能性があるのではないかと考えるのが、長期チャートの利用法の一つです。
執筆後記
話にはオチを付けないといけないと考えている筆者は、オチがつくような事例を探して取り上げています。読者の皆様の中には反例に気付かれた方もいらっしゃると思います。それは素晴らしいことです。その気付きを大切にしてください。
このような記事を読む時に、筆者が大切にしていることは、その文章を「丸飲み」にしないことです。これは新聞などのメディアに対しても同様です。筆者は、読者の皆様が考えるための題材を提供できれば良いなと思いながら執筆しています。
「過去の動きからヒントを得る」の所では、日柄分析や黄金分割による水準目途の計算などを紹介するのがタイトルに一致した内容なのでしょうが、今回はあえて避けました。いつか、紹介するかもしれません。急ぎの方はググってください。
これまでチャートを題材にしなかった理由の一つには、たくさんのグラフを作成する手間を避けてきたこともあります。今回はグラフを多く作成したため、通常よりも作成するのが大変でした。少しでも楽しんでいただけば救われます。
これに懲りずにまた読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、次回もよろしくお願いします。
ご留意事項
免責事項
本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。