かぶかはふしぎでうごいてる??? 第11回 チャートについて考える(前編)
2022.09.14 (水)
「かふしぎ」ではチャートを投資判断の主軸に置くことは避けるべきと考えています。しかしながら、株価の動きを予測するのが目的である以上、株価の動きを投資判断の一因とすることを否定することはできません。
いつものように、書店に並んでいる書籍のキャッチコピーのような「株価の動きが手に取るようにわかるスペシャルチャート」、「わたしはこのチャートで億万長者になった」のような喉から手が出てくるようなことは申しません(申せません)。
今回は、チャートはこのように利用すると「マーケットに対する理解が高まると思います」的なことをいくつか取り上げたものです。この程度の話ですが、お付き合いいただければ幸いです。今回は前編・後編の二本立てです。
期間によって見え方が変わる
- このチャートを見ると、まだ弱そうな動きが続きそうな感じがしますね。
- こちらのチャートでは足元は弱含みの動きですが、今後下がり続けるかは判断しづらいところです。
- このチャートだと、上昇局面中における調整局面なのか?その前に生じた急上昇の反動安なのか?判断に迷うところです。上昇傾向の中での動きのようにも見えます。
期間を変えて見てみると感じ方が異なるケースは多いです。長い期間になると日々ベースのチャート(日足と言います)では見難くなるので、状況によって週ベース(週足)、月ベース(月足)を利用します。
気付かれている方も多いと思いますが、このチャートは米国ダウ工業株30種平均のチャートです。すべて、2022年9月上旬までのグラフです。異なるのは始点が異なることによる期間の長さと、日足・週足・月足の違いです。グラフに日付(X軸)や水準(Y軸)を表記していないのは、直感的な感じ方を考えてもらいたいため、恣意的に削除しました。
チャートは期間を変えて見ていただくと理解が深まります。加えて、ご自分が想定している投資期間に沿った期間のチャートを中心に見ていただくことも提案します。例えば、10年以上投資することを前提に考えているものを、1か月程度の日足によって判断を下すことが、今一であることは直感的に理解していただけると思います。
順張りと逆張り
世の中には、価格を様々な手法で計算して作成したチャートが存在しています。それらのチャートの見方は様々なものが紹介されており、どれを使えばよいのか迷われている方もいらっしゃるかと思います。「かふしぎ」では「このチャートは良いよ」的な紹介をするのではなく、「このように見ると当たる」のような実用的なものではなく、チャート全般における基本的な考えかたを紹介したいと思います。
チャートの見方を大別すると、「順張り型判断」と「逆張り型判断」の2つに分類することが可能です。
順張り型判断は上昇してきたら買いシグナル。下落してきたら売りシグナルを示唆するものです。移動平均線(※)の「ゴールデンクロス」や「デッドクロス」などがよく知られるものです。筆者は不案内ですが「MACD」(※)も順張り型に含まれます。
逆張り型は上昇が続き過熱感が出てきたら「売りシグナル」。下落が続き下方への過熱感が出てきたら「買いシグナル」を示唆するものです。RSI(※)などがよく知られるものです。
※ここで記述されているチャートの内容や見方については、ネットで調べてください。これを記載すると文章構成が崩壊してしまいます。また、ネット上には驚くほどたくさんの記事が存在しています。不親切なことで大変申し訳ありません。
順張り型の特徴としては比較的損失が少ないのですが、利益は大きく取れません。比較的には低リスク・低リターン型の判断方法です。
一方、逆張り型は外れた時に大きな損失が生じますが、うまく機能した時の利益は大きいです。比較的には高リスク・高リターン型の判断方法です。
少し補足すると、逆張り型が高リスクなのは次のような例を想定すると解ります。価格下落により逆張りポイントでエントリーしたにも係わらず、その後下落が継続した場合には買いシグナルが点灯し続けます。どこかで反発してエントリーポイントを越えてくれば良いのですが、下げ続けた時には対処不能になる上、損失が広がります。
順張り型の場合は、価格上昇により順張りポイントで買いエントリーしたにも係わらず反落した場合には、価格下落による売りシグナルが発生するので損失が膨らんでいくことにはなりにくい仕組みです。
逆張り型の弱点に対する対処法として知られるものは、最初の買いシグナルでエントリーしたにも係わらず、下落が続いたときのために損切ポイントを最初に決めておき(例えば、10%損失が発生したなど)、その状況になった場合には損失確定の売却を行うと言った方法です。ただ、その後どうするのか、筆者は知りません。
その他、注意したいのは、複数の判断基準があった方が良いと考えて順張り型の指標と逆張り型の指標を併用することです。これをするとシグナルが多発して判断が出来なくなります。価格が上昇して順張り指標に買いシグナルが出たにも係わらず、その直後に逆張り指標に売りシグナルが出ることも想定されます。これでは、使い物になりません。
結論的には、ご自分の投資スタイル(投資方針、投資期間など)を考えて、どのような指標を参考にすべきかを考えることはメリットがあると思います。
「だまし」について
チャート分析で困ることの一つが「だまし」です。価格が行ったり来たりのボックス圏での動きの時によく起こる現象で、「買いシグナル」と「売りシグナル」が頻繁に出る状況のことを言います。
しかも、ボックス圏なので上がりも下がりも限定的なため、一般的には利益は出ないことが多く、「売買をすれども、すれども、我が懐温まらず」の状況になります。
だましを減らす方法は単純で計算期間を長くすることです。
- ここでは25日移動平均と50日移動平均を利用しています。ゴールデンクロス、デッドクロスをみるとシグナルが多発しています。また、シグナルの出た所でアクションを起こしても上手くいく感じがしません。これが「だまし」の多発です。
- 100日移動平均と200日移動平均と計算期間を長めに変更しました。シグナルの出方は減りました。シグナルの所でアクションを起こしても上手くいく感じはしませんが「だまし」は減りました。
移動平均のような順張り指標では、大きなトレンドが出た時には効果が出るときもありますが、この例のようなボックス圏の動きの時は苦戦します。
どちらかと言えば、このようなボックス圏の時は逆張り系の方が勝率は高くなると思います。ただ、気を付けてもらいたいことは、この先にボックス圏が続くのか、トレンドが形成されるようになるのかを前もって推測することは難しいことです。もっとも、この先のことが解るならチャートを使う必要はないですよね。
執筆後記
これまで、株価を理屈で説明することを目的として文章を書いてきました。時には、価格に振り回されないようにと、価格変動によって投資判断を行うことに否定的な論調が多かったと思います。
にもかかわらず、価格で価格を分析するチャートについて書くことには躊躇いもあったのですが、マーケット分析として一つのカテゴリを占めているチャートを避けることもないだろうと考えました。ネタに詰まって苦し紛れに取り上げたのではないと、ご理解いただければ助かります。次回には、この題材の後編を書いて、「そういうことね」と感じてもらえるオチが書ければいいなと、考えを巡らせています。
今回はスマホで読んでくださる読者様に配慮して、センテンスを短くし、改行を多用しました。少しは読み易くなったでしょうか。これに懲りずにまた読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、次回もよろしくお願いします。
ご留意事項
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