投資のコンシェルジュ 第9回 日米株価&ドル円市場の行方
2022.07.20 (水)
日米株価&ドル円市場の行方《2022年7月中旬~8月上旬》
〔日本時間:2022年7月12日大引け〕
8月上旬へ向けて、(ロシア進軍の不確定要素を除き)米国株式市場の焦点は二つ。
一つ目は、7/26・27開催の米金融政策決定会合(FOMC)の結果。6月会合では0.75%利上げが実施され、パウエル議長が5月会合後に公言した「0.50%」の利上げを撤回。通常は考慮しない、ブラックアウト(会合の約2週間前からの政策発言自粛)期間中に発表された5月CPIが前年同月比+8.6%と4月8.3%から再上昇したことへの対応だが、市場は不信任を示し、急激に不安定化する「CPIショック」に見舞われた。
7/13,6月CPIは8.8%と続伸予想だが、会合参加者は、総じて0.75%利上げ支持に言及しており織り込み済み。会合後の記者会見で、次会合9月のスタンスに関する発言が注目され、0.5%など利上げ幅の縮小示唆なら、グロース系銘柄の底入れがみえてくる。
二つ目は、7月中旬より本格化する22年4-6月期企業決算。(7/8現在)S&P500ベースの純利益は前年同月比+5.7%、エネルギー関連を除くと-3.0%と若干の減益。これも、直近の下げ相場では織り込みとみられ、同ガイダンスが22年7-9月の予想+10.9%の上振れを示唆する内容となれば、やはりグロース系銘柄の買い直しに期待。
8月上旬の予想レンジは、①NYダウ:34,000ドル、②S&P500:4,400p、③NASDAQ:13,900p、④日経平均:27,700円、⑤ドル円:147.00円、の各水準。①~④は、前号の第7回、8回と同様の考えで、年初来の下降トレンド終焉を確認すべく、200MAの奪回を想定したい。⑤は02年高値136円を既に上抜けて98年8月147円水準までチャート上のフシはなく、6月末の先物市場で「ドル買い」の手じまいで建玉がピークから2分の1に減少しており、再び「ドル買い」に動く余地は大きい。
米7月FOMC後の政策金利(予想)は2.50%と2018年末水準。2022年末は3.50%水準が予想され、FRB想定の中立金利2.50%から逸脱、上げ過ぎで、市場では「景気後退」期入りを指摘する声が日増しに高まる。アトランタ連銀発表「GDPナウ」(前期比年率)は、2022年1-3月-1.6%、同4-6月-2.1%と「景気後退」の前提、二期連続マイナス成長で、同論議は勢いを増す(景気判断は全米経済研究所が行う)。
一方で、6月FOMC見通しの2022年、2023年GDP成長率は+1.7%と3月時点(2.8%,2.2%)から「減速」してもプラス成長想定。アトランタ連銀ボスティック総裁など「米経済は追加利上げに耐えられる(後退なし)」。
背景は堅調持続が予想される個人消費と推察。コロナショックの経済対策(給付金)、昨年までの株高等で、家計金融資産は167.9兆ドル(約2.3京円)と巨額、対する同負債は18.6兆ドル(約2,550兆円)程度、賃金の伸びはインフレと同等、などからGDPの7割を占める個人消費の堅調持続は十分に可能。「減速」はあれど「後退(マイナス成長)」には無理がある。さらに、製造業のサプライチェーン米国回帰で機械等の設備投資が活発化(1-3月前期比年率+6.8%)。第2Q決算時のガイダンス上振れへの期待も十分にできる。この先1月で、全ての答えは出揃うことになる。
ドル円は、2002/2/8:134.71円を抜き(2022/6/14)、1998/8/14:146.38円までチャート上のフシはなく、一方で、日米金利差に加え、経常収支の減少という構造的な通貨安材料により、140円台乗せが視野。欧州利上げでマイナス金利は、最後、日本に残り、「円キャリー取引」が再び活発化の兆しは、やはり、円を押し下げる要因。
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