マーケットのミカタ インフレの注目は財からサービスへ
2022.12.15 (木)
インフレの注目は財からサービスへ
アメリカのインフレ牽引役は財からサービスへシフト
12月2日と5日、アメリカの景気先行指標として注目されるISM製造業景況指数及びISM非製造業景況指数(注1)が発表されました。まずは両指数のグラフを見てみましょう。
グラフを見ると、足元で製造業と非製造業の差が開いています。アメリカでは消費者の需要が財からサービスに移行していることが考えられます。
次に、製造業及び非製造業の仕入れ価格指数についても見てみましょう。
グラフから、製造業と非製造業ともに仕入れ価格は低下傾向にあり、供給制約によるインフレは落ち着きつつあることが考えられます。一方、仕入れ価格指数においても製造業と非製造業の差が開いており、インフレが財からサービスに移行していることが確認できます。
サービスの大部分は住居費が占めており、住居費が来年早々に低下に向かえば、アメリカのインフレ伸び率も鈍化が続く可能性があります。
(注1)製造業、非製造業の購買・供給管理の責任者を対象に各企業の受注、生産、在庫、価格など10項目をアンケート調査し、結果を指数化したものです。50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退を示します。
世界的なサプライチェーン混乱からの回復は足踏みか
アメリカのニューヨーク連銀が毎月公表している、世界のサプライチェーンの混乱や圧力の大きさを指数化したグローバルサプライチェーン圧力指数(注2)が、足元で再び上昇に転じています。まずは同指数のグラフを見てみましょう。
グラフを見ると、9月まではサプライチェーンの混乱からの回復は順調に進んでいたものの、10月と11月は小幅に上昇しており、サプライチェーンの正常化が足踏みしていることが分かります。
足元のサプライチェーン正常化の遅れは、中国のゼロコロナ政策に伴う入荷の遅れが要因として挙げられます。市民の抗議などからゼロコロナ政策緩和の動きが更に広がれば、サプライチェーンの正常化や世界的なインフレ圧力の緩和などが期待でき、株式市場にとってもポジティブにはたらくと考えられます。
インフレ率の低下にはまだ賃金上昇などの懸念材料があるものの、徐々に緩和の兆しも出始めています。
(注2)米国ニューヨーク連邦準備銀行が開発した、米国内や国際的なサプライチェーンにどの程度の圧力や混乱が生じているかを表す指標です。平均を0としており、数値が大きいほどサプライチェーンが逼迫していることを示しています。
- 当記事は、アイザワ証券のラップサービスの一つ「スーパーブルーラップ」のファンドマネージャーである三井郁男が作成したレポートを、添田恭平が再構成したものです。
- 「スーパーブルーラップ」の詳細はこちらから
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