投資のコンシェルジュ 第7回 S&P500/日経平均/ドル円市場の見通し(番外編)
2022.05.16 (月)
日米株価&ドル円市場の行方《2022年5月上旬~6月上旬》
(2022年5月9日現在)
6月上旬へ向けた焦点は、ロシア進軍の不確定要素を除いて2つを視野に。一つは、5月米金融政策決定会合(FOMC)の結果の市場の織り込み方。同7月会合までの政策を具体的に示すのは異例で、市場の信認を得ることができれば、堅調な企業業績を足掛かりに株価急反発もありそうだ。
もう一つは、予備選本格化で機運が高まる米中間選挙(11月8日)の行方。トリプル・ブルー(大統領と上院・下院それぞれで過半数を民主党が占める)のバイデン政権ながら、アフガン撤収の混乱(2021年8月)、大型政策は党内対立で頓挫、コロナショックによる供給不足でインフレが惹起、ロシア進軍がそれを追い打ち。支持率低下に悩む民主党の苦戦は必至だが、共和党も決め手にかける。市場が政権安定志向なら、予備選で民主党の支持回復となれば株価上昇へつながる。
6月上旬の予想レンジは、①NYダウ:35,000ドル、②S&P500:4,500p、③NASDAQ:14,500p、④日経平均:29,500円、⑤ドル円:135.00円、の各水準。①~③は200MA(移動平均線)水準、④は2022年初の水準、⑤は2002年2月高値の水準を想定。
米国5月FOMCは政策金利を0.5%引き上げ(誘導目標0.75%~1.0%)と予想通りだが、6月、7月会合まで3回、同幅引き上げる通常(0.25%刻み)の倍速利上げ。一方で、間髪入れずの「量的引き締め(QT)」は、6月~8月に475億ドル/月、9月以降は上限950億ドル/月と先々の時期と規模を発表、前回QT(2017年~2019年、500億ドル/月)の倍速。
「先々まで」、「倍速」という異例の発表手法に、当日(5月4日)の米国3指数はS&P500が3%高など大幅高と一旦は好感。しかし、翌日から5月9日まで大幅続落、それぞれ年初来安値を更新し、過剰気味の拒否反応。『「倍速」に景気が耐えられるか』などスダグフレーションを連想させ、米10年債利回りは2.9%から3.2%台へ急上昇、それをみた株式市場がグロース株主導で急落した格好。
しかし、会合前の同政策のアナウンス、先々までの具体的な政策表明を、市場は次第に評価するとみる。一方で、2022年1-3月決算はS&P500ベースで10.4%増益(5/6、434社発表時点)と発表前6%から上方修正され、好調な企業決算を織り込む「業績相場」への移行を想定。また、5月11日・米4月消費者物価指数(CPI)が前年同月比+8.1%と3月同+8.5%から減速が予想され、インフレ鎮静化はグロース株の買い手掛かりになる可能性。
2022年の米中間選挙は、上院3分の1(35議席)、下院全議席、州知事などが改選となる。予備選は本選への各候補者を1人に絞るが、日程は州ごとでテキサス州(3月1日)が皮切り。オハイオ州の予備選挙(5月3日)では、共和党・トランプ氏が支持する候補者が勝利し、同氏の影響力と次期・大統領選への党内求心力をまずは誇示。一方の民主党は、党内・穏健派とリベラル派の対立が大型法案の足枷だが、予備選でリベラル派が優位となれば、さらに難しい政策運営を迫られる。「最高裁判所判事」など様々な承認権限を持つ上院の多数派維持は、2024年の大統領選を優位に進めるカギでもあり是が比で守りたい。山積みの課題を克服すれば株高要因。
ドル円は、リーマンショック前高値(2007/06/22:123.89円)、「黒田ライン」(2015/06/05:125.63円)、を短期間で抜き去り、一段の上値を予見させる。2002/02/08:134.71円を上抜けると、ロシアショック直前の1998/08/14:146.38円までフシはない。東京都区部の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+1.9%、日本の4月CPIの市場予想は2%前後(3月+0.8%)と急伸の予想であり、「物価高=通貨安」と市場が受け止めれば、135円が視野へ。
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