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コラム

投資のコンシェルジュ 第7回 「J-REIT投資」を活用した「ゴールベース・アプローチ」の考え方(前編)

2022.05.16 (月)

アイザワ証券 金融商品部

河西 幸弘

投資のコンシェルジュ 第7回 「J-REIT投資」を活用した「ゴールベース・アプローチ」の考え方(前編)

本連載「6」では、世界的に厄介者扱いの「インフレ」を捉えた日本の不動産投資信託「J-REIT」への投資をご紹介しました。

世界的なインフレについて

「物価高」を示すインフレーション(インフレ)が世界で問題に。主要国のインフレ率(20223月・前年同月比)は、米国:8.5%、英国:7.0%と高く、日本はスマホなど通信費の大幅な低下が指数を1%以上押し下げて0.8%ですが、その効果が剥落する4月には2.0%を超える予想が大半。

インフレの原因は、歴史上、1970年代~1980年代の「オイルショック」や日本の1989年「バブル経済」など様々ですが、今回は、

  1. 新型コロナウイルス感染拡大を背景とした製品・サービスの供給不足
  2. ロシア進軍によるエネルギー及び穀物の供給不足

という「供給不足」が主な要因と言われ、各国は需要を抑える政策金利引き上げを実施。それにより、住宅ローン、自動車ローンなど貸出金利を上昇させ購買意欲を押し下げる政策へ乗り出すなどインフレ鎮静化へ躍起。一方で、米国中心に原油・天然ガス等の増産効果により2022年末へ向け資源価格は落ち着きをみせ、インフレ鎮静化がみえてくると予想します。

世界の「分断」がインフレ水準を押し上げる

10%へ迫るインフレは2022年末へ向けて沈静化する見通しですが、世界的なインフレ水準は、2019年のコロナショック前より切り上がる可能性があります。

図表1、米国の長期の消費者物価の推移を大まかにみると、1990年以前の3%~6%水準から、1990年以降は3%が上限に、リーマンショック(2008年)を挟み、以降は0%~2%へさらに低下。

それが、20171月・米トランプ大統領就任以降、コロナショック時の低下をのぞき、実は上昇傾向にありました。米中貿易戦争で始まった関税合戦が一因で、20222月ロシア進軍まで含め、世界経済の「分断」、「米ソ冷戦」への回帰という潮流が背景と考えられます。

1990年以降のインフレ率低下は「1989年ベルリンの壁崩壊」=米ソ(東西)冷戦の終結、により、国境に構わず、世界中から人件費が安く、製品が安くできる場所で生産することが出来るようになりました。最たる国が中国。いわゆる、「グローバリズム」、世界経済の「協調」時代です。それにより、例えば日本では、100円ショップが急激に成長しました。

その流れを変えたのが、米トランプ政権と中国・習政権による米中貿易戦争。さらに、ロシア進軍は「分断」を決定づけました。過去30年の「安い国」では作れない、「サプライチェーン」の見直しが迫られ、経済のブロック化が進展し、インフレ率は上方へレンジ訂正を余儀なくされるとみています。

投資はインフレ対応へ、「不動産投資」が魅力的

前述、インフレ率の上方への水準訂正を前提とすれば、金融市場では様々な投資チャンスがみえてきます。株式投資は勿論ですが、本誌「第6回」でご紹介した「J-REIT」は、足元で3.7%(20224月末)と高い分配金(配当金)利回りに加えて、家賃上昇、保有不動産(物件)の価格上昇などが見込まれ、安定したリターンが期待でき、魅力度は高いと考えます。

「第6回」文中でご紹介した3つの「投資のヒント」を備忘録として下記にまとめます。

詳細は、「J-REITの仕組み」と併せ、是非、「第6回」にてご確認ください。

投資のヒント① 長期投資で安定したリターン実績

・「配当込み東証REIT指数」は、足元(2022年5月2日)20218月高値からやや下げた位置ですが、例えば、リーマンショック前2007年、チャイナショック前2015年、コロナショック前2020年、どの高値で投資を始め数年以上投資した場合、買値以上の価格へ上昇。

・これは、高い分配金による①株価変動の安定化、②分配金(配当金)が積み上がる、の2つの効果で、今ですと「年率3.7%程度の分配金+値上がり益」により株式投資に匹敵、もしくは、上回るリターンが期待できます(2004年~2021年の「配当込み東証REIT指数」の年平均リターンは約7.8%、同「TOPIX配当込み」は約5.7%)。

投資のヒント② 脱コロナで上昇が始まった可能性

  • (配当を除く)東証REIT指数の年初来の推移では(2022年1月4日4月6日)、政府が新型コロナ「まん延防止策」解除を決定(2022年3月16日)したタイミングから上昇を開始。
  • 「まん延防止策」は、オフィスビルは在宅勤務増加で需要減、商業施設は飲食店の時間短縮等による家賃減少、ホテルは旅行客減少、などが懸念されていた為、その解除は、REIT株価の重石がとれて投資家の買いが一斉に始まった格好。
  • 今後も同感染再拡大の懸念は残りますが、①ワクチン接種や治療薬の開発進展、②政府はロックダウンなど経済封鎖を控える方針へ転換、により、懸念はピークアウト。

投資のヒント③ 再び地価が上昇

  • 本年322日公表の202211日現在の日本の地価を示す「公示地価」は2年振りに上昇。新型コロナ感染拡大による不動産需要減少の底打ちが確認され、REIT各社が保有する物件価値上昇が、今後は、J-REITの株価を押し上げる可能性。
  • 2022年は、全国・全用途が昨年のマイナスから本年はプラス(+0.6%)。用途別でも、特に、落ち込みが大きかった商業地がプラスとなり、「脱コロナ」を強く印象付けます。
  • REITの収益は、「家賃収入+物件売却益」であり、地価上昇は中長期のトレンドになりやすく、将来の「物件売却益」の増加=増配が期待でき、株価の強い上昇要因であり、投資好機とみています。

東証REIT指数(配当込み)は、20223月は6.9%の上昇、同4月は1.2%の下落でしたが、TOPIX(同3+3.2%、同4-2.4%と比較し好成績。インフレ対応資産、そして、脱コロナ、が追い風の投資対象として、魅力度は高まっているとみています。

後編では、個人の金融資産設計と「ゴールベース・アプローチ」について考えていきます。

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ライター

河西 幸弘

アイザワ証券 金融商品部

河西 幸弘

国内大手の証券・保険会社において、リテール、事業法人、機関投資家等への金融商品の営業を、大手運用会社では15年に渡りRM(リレーション・マネジメント)等を経験。その間、証券アナリスト(CMA)、日本FP協会(CFP)、1級FP技能士等の資格を取得。そして、2021年4月、アイザワ証券入社。金融商品部において投資信託や債券等のストラテジックな商品提案を推進する一方、難解な金融市場の「分かりやすい」解説に挑む。

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