投資のコンシェルジュ 第6回 2022新年度、投資の厄介者「インフレ」を味方に付ければ恐くない? (後編)
2022.04.11 (月)
J-REITの仕組みを確認しましょう
「インフレに強い」資産、「J-REIT」の仕組みを確認します。REIT(上場不動産投資信託)という制度は各国で導入され、日本では2001年に「日本ビルファンド投資法人」「ジャパンリアルエステイト投資法人」の2銘柄が上場しスタート。現在は61銘柄(2021年12月末)へ拡大しています。
図1.で仕組みをみると、多数の投資者からの資金を元に銀行借り入れを加え、オフィスビル、ショッピングセンター等の建物を購入し、その賃貸料及び所有物件の売却益を投資者へ配当として分配する、シンプルな「大家さん」ビジネスです。ほとんどのREITはスポンサーと呼ぶ親会社(不動産会社が多い)から分離して設立され、スポンサーが建設(開発)した物件等を取得して賃貸ビジネスに特化します。
東京証券取引所の上場REITの受益証券は上場株式と同様に市場で売買されています。REITによる「不動産」投資なら、いつでも売買でき、「不」が取れた「動産」投資と言え、日々、時価がみえるのも便利。2022年4月6日現在、市場規模(東証REIT指数・除く配当)は16.7兆円、1日平均500億円前後の売買が行われています。
特徴は「高い配当利回り」です。2022年4月6日現在、市場平均の配当利回りは約3.6%と、TOPIX約2.2%、10年物国債利回0.2%と比較して魅力的。REITは、利益の90%以上を投資者へ分配(配当)することで法人税が免除される制度であり、高分配が魅力です。
一方で、事業は賃貸借のみに限定され、一般的な不動産会社の様な不動産開発は禁止されていますが、それだけに、安定したビジネスモデル、と言えます。
J-REITにも業種があります
図2は、J-REITが保有する用途別と地域別の構成比です。各社で保有物件の種類は異なり、株式銘柄の業種に相当。「オフィスビル」が約4割と最大。ネット販売の拡大で急成長する「物流」が約2割、ショッピングセンター・飲食店ビル等の「商業施設」、マンションなど「住居」、「ホテル」、介護施設等の「ヘルスケア」、複数の業種が入居する「複合施設」などがあります。各社は、概ね、50~100物件前後を保有しています。
J-REIT保有物件を地域別にみると、東京都及び首都圏が約7割を占め、他は大阪、名古屋、福岡、仙台の4大都市圏と、収益力が高い地域に集中。個人では取得が難しい優良高額物件でも、REITには、個別銘柄で10万円程度、J-REITへ投資する投資信託では1000円程度の少額から投資が可能。東京・丸の内の様な、超一等地の優良物件の一部収益を投資割合に合わせ享受できます。
投資のヒント① 長期投資で安定したリターン実績
図3は、J-REIT市場創設の頃(2003年3月末)からの、「配当込み東証REIT指数(赤線)」、「配当を除く東証REIT指数(青線)」、「TOPIX(東証株価指数、黒線)」の推移です。
一般的な値動きで用いられる「配当を除く東証REIT指数」をみると、リーマンショック前の2007年高値に到達していませんが、それでもTOPIXと同等のリターン。
一方で、実際のトータルリターンに近い「配当込み東証REIT指数」では、足元こそ、2021年8月高値からやや下げた位置ですが、例えば、リーマンショック前2007年、チャイナショック前2015年、コロナショック前2020年の高値の、どの高値で投資を始めても、数年以上の中長期投資では、それ以上の価格へ上昇、リターン獲得が出来ています。
これは、高い分配金が、①株価変動を安定化させる、②分配金が積み上がる、2つの効果と考えられ、今ですと、「年率3.6%程度の分配金+中長期投資の値上がり益」により株式投資に匹敵するリターンが期待できます(2004年~2021年の「配当込み東証REIT指数」の年平均リターンは約7.8%、同「TOPIX配当込み」は約5.7%)。
1,100兆円の国内ゼロ金利預金の代替運用先として非常に魅力的な投資対象と言えます。
投資のヒント② 脱コロナで上昇が始まった可能性
図4は、配当を除く東証REIT指数の年初来の推移(2022年1月4日~同4月6日)です。足元では、2022年初の高値を伺う上昇基調。この上昇は、3月17日、政府が新型コロナ「まん延防止策」解除を決定したタイミングから始まっています。
「まん延防止策」は、オフィスビルでは在宅勤務増加による需要減、商業施設では入居する飲食店などの時間短縮等による売上減少、ホテルは旅行客減少などが懸念され、REIT株価には重石であり、その解除を待つ投資家の買いが一斉に始まった格好。
今後も、同感染再拡大の懸念は残りますが、ワクチン接種や治療薬の開発が進み、重症化リスクはコロナショック当初より格段に低下。政府はロックダウンなど経済封鎖を控える方針へ転換しており、それら懸念はピークアウトして、今後は、各種不動産のニーズ回復への期待がREIT株価を押し上げるとみています。
投資のヒント③ 再び地価が上昇
本年3月22日に公表された2022年1月1日現在の日本の地価を示す「公示地価」は2年振りに上昇に転じ、新型コロナ感染拡大による不動産需要の減少のボトムアウトが概ね確認され、REIT各社が保有する土地を含む物件価値の上昇が期待できることも、J-REITの株価には強い追い風です。
図5、今回の公示地価の状況をみると、全国・全用途が昨年のマイナスから本年はプラス(+0.6%)へ浮上。用途別でも各用途がプラス。特に、落ち込みが大きかった商業地が見事にプラスへ転じ、「脱コロナ」を強く印象付けます。
REITの収益は、「家賃収入+物件売却益」であり、地価上昇は将来の「物件売却益」の増加=増配が期待でき、株価の上昇要因です。地価は経済循環により数年に渡るトレンドになることが多く、当面の好材料と考えられ、投資好機が訪れたとみています。
インフレが家賃と地価を押し上げる可能性
そして、インフレという、日本にとって平成バブル崩壊以降、約30年のデフレからの脱却がJ-REITへの投資リターンを飛躍的に向上させてくれるとみています。
冒頭で申し上げました通り、J-REITはインフレを投資テーマとした場合に選好される資産。主な理由は、①REIT各社は賃貸借契約更新時の賃貸料(家賃)引き上げやすい環境となり、増配(分配金の増加)期待が高まる、②インフレが地価を持続的に押し上げて、REIT各社の資産価値の将来への上昇が株価に織り込まれる、の2点が挙げられます。
J-REITの株価は、コロナショック後に、一時、3万円を超えた日経平均と比べ、未だ、出遅れであり、今後の「脱コロナ」の恩恵は大きく、一方で、デフレからインフレという日本経済の大きな転換点に際し、分散投資の一部には必須の資産と考えています。
一方で、J-REITの個別銘柄の選別は、不動産市況などの見極めなどが必要で、一般的には難しい面があります。そこで、専門家が多角的に銘柄を厳選、少額からでも分散投資できる投資信託を通じた投資が有効です。J-REITへご投資の際は、是非、アイザワ証券の各店へお立ち寄り頂き、ご相談ください。
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