投資のコンシェルジュ 第7回 「J-REIT投資」を活用した「ゴールベース・アプローチ」の考え方(後編)
2022.05.16 (月)
「安定収益+ゴールベース・アプローチ」によるライフ・プランニング
J-REITの投資妙味がいよいよ高まっている現状についてご報告して参りました。ここで、もう一段、J-REITの長期的な収益の安定性を確認し、その特徴を生かした、個人の金融資産設計と「ゴールベース・アプローチ」について考えていきます。
長期投資で収益の安定性が高い「J-REIT投資」
※「第6回」参照
「図2」はJ-REIT市場創設期(2003年3月末)以降の「配当込み東証REIT指数(赤線)」、「配当を除く東証REIT指数(青線)」、「TOPIX(東証株価指数、黒線)」の推移です。
一般的に、J-REITの株価動向をみる「配当を除く東証REIT指数」では、リーマンショック前2007年高値に未達、TOPIXと同等のリターンに留まりますが、実際のトータルリターンに近い「配当込み東証REIT指数」をみると、足元は2021年8月高値から若干下げた位置ですが、例えば、リーマンショック前2007年、チャイナショック前2015年、コロナショック前2020年の高値の、どの高値で投資を始めても、数年以上の中長期投資では、それ以上の価格へ上昇、利益の獲得が出来ています。
その要因は、以下が考えられます。
- 不動産賃貸という安定したビジネスモデル
- ゆえに、家賃を源泉とする安定した分配金(配当金)が着実に積み上がる。
- 低インフレの日本でも、家賃や地価が徐々に上昇、株価を押し上げる。
簡単に言えば「赤字になり難く、黒字が積み上がる」。現状でも、株価上昇はさておき、足元では、年率3.7%程度の分配金は十分に期待できます。1,100兆円の国内ゼロ金利預金の代替運用先として非常に魅力的な投資対象であり、その収益の安定性は「資産設計」に適していると考えます。
ゴールベース・アプローチによる資産設計
個人の経済的なライフ・プランについて、目標金額(どれだけのお金を)と時間軸(ゴールはいつ?)を併せて考えることを、この章では「ゴールベース・アプローチ」とします(定義はいくつかあるようです)。日本の銀行や証券会社等の営業スタイルが資産管理型へ移行する昨今、各社でゴールベースに基づく提案が活発化しています。
ライフ・プランニングで考えおきたい、各イベントでの必要なお金はいくつかあります。年齢、家族構成等により、必要項目の違いはありますが、代表的なライフ・イベントと概算の必要金額を以下に示します。
一般的に、直ぐに用立てることが難しい、高額なものは沢山あり、いつ(時期)、いくら(必要金額)の目標を定めるプランニングの必要性は高く、確定利回りの貯蓄と併せて、効率的な目標金額へのアプローチへ、投資信託などリスク性資産の活用を、アイザワ証券では、ご提案させていただきます。
ゴールを目指す、計算とは
ライフ・イベントへ向けた経済的なプランニングでは、元本に対し想定される運用利回りを掛け算・割り算し、具体的な数字をはじき出す、便利な「6つの係数」があります。
運用成果の計算
【1.終価係数】
・元本(万円)を、一定利回り(%)で、一定期間(年数)、運用できた場合の金額を計算。
【2.現価係数】
・一定期間(年数)、一定利回り(複利、%)で運用し、目標金額を受け取りたい場合に、現在、必要となる元本の計算。
積立金額の計算
【3.年金終価係数】
・毎年、一定金額を積み立て、一定期間(年数)、一定利回り(複利、%)で運用できた場合の合計金額の計算。
年金/ローンの計算
【4.減債基金係数】
・一定期間(年数)、一定利回り(複利、%)で運用し、目標金額を受け取りたい場合に、毎年の積立金額の計算。
【5.年金現価係数】
- 一定利回り(複利、%)で運用し、一定期間(年数)に渡り、毎年、一定金額を受け取る為に、現在、必要となる元本の計算。
- 一定利率(複利、%)で借入れ、一定期間(年数)に渡り、毎年、目標金額を返済して完済する場合の、現在の借入金額の計算。
【6.資本回収係数】
- 元本を一定利回り(複利、%)で運用しながら、一定期間に渡り、毎年、均等に回収する(全て回収する)ことができる金額の計算。
- 一定金額を一定利率(複利、%)で借入れ、一定期間に渡り、毎年、均等に返済し、完済することができる金額の計算。
以上です。お気づきかと思いますが、【1】と【2】、【3】と【4】、【5】と【6】は、それぞれ逆数の関係です。ゆえに、3種類を覚え、必要に応じて、下記の「係数早見表」を活用すれば、計算できます。(紙面都合上、抜粋にて掲載していますので、表外のデータについては、アイザワ証券のお店へお問い合わせください。)
これら計算式を使えば、目標金額の確保へ向け、必要な元本や運用利回りが簡単に試算できます。そこで、安定収益が特徴のJ-REIT及び世界各国のREIT=「不動産投信」は、投資商品でリスクはありますが、目算が付けやすい、便利な投資対象と考えられます。
ライフ・プランニングで頼りになる、J-REITへの投資
22年4月末現在、(配当を除く)東証REIT指数の予想利回りは3.7%。前述の通り、地価上昇、脱コロナを追い風に、J-REITは、当面、年当たり値上がり益が期待できる状況ですが、ここでは、若干の値上がり加味し、「利回り+値上がり益」の期待リターンを年4.0%と仮定。「6つの係数」を活用し、ゴールベース・アプローチの例を挙げてみます。
設問1
Q、Aさんのご長男は13歳。5年後の大学進学を想定し、それまでに、入学時の初年度費用と大学を4年間で必要な全費用500万円について、毎年、一定金額をJ-REITで運用(複利)する投資信託へ投資(積み立て)し、準備したいと考えています。J-REITの期待収益を4%と仮定し、毎年の一定(積立)金額を試算してください。
A、減債基金係数で計算します。
▷およそ465万円の積立元本+35万円(元本に対し約7.5%)の期待運用益が試算できます。日本の10年国債利回り(上限0.25%)の場合と比較してみてください。
設問2
Q、Bさんは58歳。今日の誕生日に、65歳から毎年100万円ずつ10年間受け取るライフ・プランを計画。現在、勤務する会社からは60歳時に退職金1,000万円を受け取る予定で、⑴半分はその資金へ運用するが、⑵不足額は、今から積み立てたい。毎年の積立額を計算して欲しい。(1)、(2)とも、J-REITへ投資する投資信託(期待収益は年率4%と仮定)での運用を想定している。
A、複数の係数計算を組み合わせて算出する。
○65歳から、毎年100万円ずつ、10年間受け取る(総額1,000万円)為に、年率4%で運用できると仮定した場合に必要な元本を、年金現価係数で計算する。
○60歳から退職金の半分・500万円を年率4%で65歳まで5年間、運用した場合の金額を終価係数で計算する。
▷500万円の元本へ+108万円(約21.6%)の期待運用益が試算できます。
○58歳から65歳まで7年間、年4%で203万円を積立てる毎年の金額を減債基金係数で計算する、
▷およそ182万円の積立元本+21万円(元本に対し約11.5%)の期待運用益が試算できます。日本の10年国債利回り(上限0.25%)の場合と比較してみてください。
設問1、2とも、J-REIT投資の期待収益を4%と分配金水準のみで計算してみましたが、前述の通り、長期では年当たり7%水準の実績があり、一段の元本の負担軽減が可能とも言えます(設問1の場合、93万円→87万円)。
安定収益が特徴のJ-REITを始め、世界的なインフレで注目される各国REITへの投資とライフ・プランニングについて、是非、アイザワ証券のお店へご相談ください。
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