かぶかはふしぎでうごいてる??? 第8回 マーケットを自分なりに理解する
2022.06.20 (月)
今回は小ネタを三つ取り上げてみました。楽しんでいただければ幸いです。
自分がマーケットの主役だと考えてみる
「株式と債券は逆方向に動くことが多いため、両方保有することによって分散投資の効果が期待できます・・・」
このようなことをご存じの方もいらっしゃると思います。何故、そうなるのかを「かふしぎ」風に考えてみましょう。次に作り話を記載します。
読者の皆様がマーケットに大きな影響を与える巨額の資金を運用する巨大機関投資家であると仮定してください(産油国の王様とでもしましょう)。仮に、運用している資金1,000兆円を株式50%、債券50%の割合で保有していたとします。また、現在は運用資産の流出入が少なく、運用金額は安定しているとします。
作り話①
最近、世界情勢に暗雲が立ち込めてきました。運用資産のリスクを低下させたくなってきたので、比較的リスクの高い株式の割合を5%低下させ、リスクの低い債券の比率を5%高めることを決断しました。
すると、50兆円の売却が株式市場に発生し、50兆円の買付が債券市場に発生します。株式は下落し、債券は上昇します。結果は一般的に言われているよう、株式と債券は逆方向に動きました。
作り話②
世界景気が好調を続け、原油価格が上昇し、運用資産が増加しました。今回は増加した100兆円分の運用資産を追加投資する必要が生じました。そこで、現在の投資割合通りに株式の50%分である50兆円で株式を買い付け、債券の50%分である50兆円で債券を買い付けました。この場合には株式も債券も上昇します。一般的に言われている通常の動きと異なる結果となります。多分、隣の国の王様も同じことをしているでしょう。
作り話③
世界景気が底割れし、原油価格も低迷、運用資産を取り崩す必要性に迫られました。今回は苦渋の決断で100兆円を減額することにしました。そこで、現在の投資割合通りに株式の50%分である50兆円分の株式を売りつけ、債券の50%分である50兆円で債券を売りつけました。その結果、株式・債券共に下落しました。
通常は株式と債券は異なる動きをすることが多いのですが、常にそのようになるとは限りません。その背景には様々な理由があるのですが、需給面から考えれば上記のような説明もできます。
債券価格が上昇(下落)すると金利は低下(上昇)します。作り話①のケースであれば債券上昇(金利低下)・株式下落となり教科書通り逆方向の動きになります。作り話②のケースであれば、金利低下・株式上昇となり、昨年までのマーケット環境が類似の状況となりました。ご存じの通り株価は上昇を辿りました。作り話③のケースであれば、金利上昇・株価下落になります。このようなケースは経済的に非常に危険なので、政策当局が対応をとります。
今回は巨大機関投資家を題材にして説明しましたが、実際の経済においては中央銀行がお金の量を調整することで、堅調な経済状況が生じるようにしています。
実際の経済現象は教科書通りにならないことも多く、その背景がどの様になっているのかをイメージできるように需給面から考察してみました。マーケットで生じている現象が何となく腑に落ちない時には、自分が主役になってみて考えてみると理解できることがあります。
分散投資の裏技
投資をするときには分散投資が有効であることは様々な所で紹介されており、読者の皆様も耳にされたことが多いと思います。当シリーズにおいても分散投資の有効性について何度か記載させていただいています。今回は視点を変えてみた「かふしぎ」風の分散投資の考え方を紹介させていただきます。
一般的なサラリーマンの家計は、企業から支払われる給与(フロー)と貯蓄・財産(ストック)の2つの側面を持っています。一般的に投資と呼ばれるものはストックを増やすことを目的としています。しかし、ストックの原資はフローから生じます。その意味では、ストックを増やす最も堅実な方法はフローを増加させることなのですが、これはなかなか一筋縄ではできません。
すごく仕事の出来る方で、どこの業界・企業であっても高給を得られるようなスペシャルな人は別として、平均的なサラリーマンであれば、給与水準(フロー)は就業している業界もしくは企業に左右されてしまいます。新卒から定年まで30年以上ある長期間の中では業界・企業ともに浮き沈みが発生します。考え抜いて選択した有望業界・企業が30年以上有望であり続ける可能性はそれほど高くありません(筆者は泣き続けました)。
最近は世の中も変化してきているので、有望業界・企業に転職を繰り返すという方法もありますが、誰でも簡単に出来ることではありません。そこで、自分が就業している業界・企業以外に「あそこはいいなぁ・・・」と思う業界・企業の恩恵を受ける方法が、その株式を保有することです。フロー面での恩恵は期待できませんが、ストック面で恩恵の一部を享受することはできます。これはフロー面とストック面を横断した分散投資とも言えます。
ただし、上手くゆくには「あそこはいいなぁ・・・」と思った業界・企業が本当に良いのかを見極める必要があることは言うまでもありません。普通、転職をした場合にはn年ぐらいは勤めてみようと考えて入社すると思います。それぐらいの時間軸で「いいなぁ」と思ったものに投資することを提案します。でないと、転職を繰り返すジョブホッパーのように、株式の売り買いに明け暮れてしまうことになってしまいます。
投資用語解説 第5回 「最終投資家」
チャート分析の考え方の一つに「高値圏での大商いには注意せよ」のような教えがあります。これを「かふしぎ」風に理屈で解説してみます。
大きな機関投資家になると企業の発行済み株式数の数%を保有することもあります。これを通常の状況で売却することは至難の業です。適当に売却すると株価は下落してしまいます。すごい成長企業を発掘して永久に保有する目的なら売却する必要はないのですが、そのような銘柄に巡り合うことはそうそうありません。
そこで、新しい買い手が現れるまで待つことになります。勿論、それほどの株数を買い付けたのですから、それなりの企業であることは調査済みのはずです。そして、思惑通り株価が上昇していた後に新しい買い手が現れました(勿論、その真偽は当事者以外解りません)。売買高が増えてきて売却することが可能となった所で最初に買い付けていた投資家は売却し始めます。その売却した株式を新しい投資が買い付けます。大量の売買になるので大商いになります。その後、株価が上昇すれば「手替わり」といって一段高が見込まれます。反落すれば「大天井」になってしまいます。
どちらになるかは時間が経過しないと解らないのですが、チャート分析的に言うと上昇すれば買い、下落すれば売りだと思います。「かふしぎ」ではチャート分析よりも企業分析に重点をおいて考えたいので、大商いの時点で「新たな買い材料」が出ていれば買い。出ていなければ「売り」と判断するのが賢明だと考えます。もっとも、このような不透明な時点で敢えてその銘柄の投資判断をしなくてもいいのではと考えることが、更に「かふしぎ」的です。また、これも前述した、「自分が主役になって考えてみる」の一例になります。
ちなみに、反落した場合に高値で大量に買い付けた投資家を「最終投資家」といって陰口をたたくこともあります。なぜ、その現象が解るのかというと、マーケットには大量保有報告書を提出するルールがあるため、ある機関投資家が大量に株式の保有・売却をしたことは開示資料で解るからです。
執筆後記
現在はマーケットの入門書、専門書に至るまで、様々な書籍が氾濫しています。ネット上でも様々なコンテンツが乱立しています。まさに情報氾濫時代です。筆者がこの業界に入った時には、やたら難しい専門書か、怪しい感じのする情報誌に二分化していました。当時とは様変わりの時代となっています。しかし、うがった見方をすれば、情報の価値は低落しており、知識ですらアドバンテージの要因とはなりにくくなっています。「かふしぎ」運営者としては、「自分なりの考え方」を身に着けていただくことが付加価値になるのではと思い、今回の企画を施行してみましたが、いかがでしょうか。
前回はテクニカルな話題を取り上げたため面白みに欠けたかもしれません。反省して今回は軽い話題を取り上げてみました。このような文章を作る時に一番苦労するのは「ネタ出し」になります。いいネタが思いつけば、後は勝手に手が動きます(漫画家の先生が言われる「主人公が勝手に動き出す」状況です)。きついネタの時は試行錯誤が続きます。次号に向けて良いネタを生み出すため精進するので、これに懲りずにまた読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、次回もよろしくお願いします。
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