かぶかはふしぎでうごいてる??? 第14回 相対的に見てみる~レシオケーターについて~
2022.12.26 (月)
今回は相対的に見ることでマーケットの動きを理解する方法を紹介します。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが「レシオケーター」について解説します。「相対力チャート」、「レラティブ・ストレングス」と呼ばれることもあるチャートの一種なのですが、使い方を覚えると、様々な示唆が得られます。
レシオケーターの作り方
(対象とするものの価格)÷(比較するものの価格)で作れます。
株式の場合には、個別銘柄の株価と日経平均のような指数を比較することが多く、(対象銘柄の株価)÷(日経平均株価の値)のように計算します。以下にExcelでの作り方を例示します。
これでは短期間過ぎますが、同様の計算を長い期間で行えば大丈夫です。日足、週足、月足のいずれにしても大丈夫です。
レシオケーターの見方
グラフが右肩上がりの場合にはマーケット(この場合では日経平均)よりも強く推移している状況です。
グラフが右肩下がりの場合にはマーケット(この場合では日経平均)よりも弱く推移している状況です。
図-1、図-2で赤い点線で囲んでいる所は横ばいの動きになっています。この場合にはマーケットと同じ程度の動きを示している状況です。
では、次の例のような場合にはどちらの銘柄(図-3と図-4)が強いか判断できるでしょうか?
目盛りが異なるので、一目ではどちらが強い(右肩上がりの勢いとしての角度)のか解りません。これを回避する方法を次に紹介します。
指数化(起点を100にする方法)することで目盛りを合わせる方法があります。先ほどと同じようにExcelの表を例示します。
計算式の中で「$」が使われていますが、これは式をコピペした時にセルの位置が変わらないようにする方法です。
この方法で図-3と図-4を作り直します。図-3→図-5、図-4→図-6に修正です。
明らかに図-5の銘柄Aの方が右肩上がりの角度が急であることが読み取れます。この結果から、銘柄Aの方が銘柄Cよりも強い動きを示していることが解りました。
グラフは目盛りの取り方で見え方が大きく変わるので、目盛りの幅(縦軸を80~130にしている)を合わすと理解が高まります。特に、今回のように角度を見る場合には、その違いが顕著になります。
ただ、投資判断としては「出直り初期」と考えて銘柄Cを評価することも可能です。「力強く推移している銘柄」と「出直りから上昇期に向かいつつある銘柄」のどちらを選択するかは別の問題になります。
【応用例】下落相場から先に抜け出した銘柄に注目する
厳しい下落相場では多くの銘柄が軟調な動きを示します。その中から、次の上昇相場で有望な銘柄を検討するヒントとなるのが、いち早く底を打った銘柄です。
需給面から考えると、軟調相場にもかかわらず株価が底を打ち始めた状況は、その銘柄に注目している投資家が増加している状況が予想されます。例を見てみましょう。期間は2010年12月から2015年12月の5年間の月足チャートです。
日経平均は2つある赤丸で囲んだところで安値をつけ、その後上昇に転じました。罫線用語でいえば、「ダブルボトム」や「二点底」と呼ばれる形です。
次に個別銘柄である「銘柄S」のチャートを見てみます。
日経平均が最初の底を付けた辺りから上昇に転じ、日経平均が2回目の底をつけに行く段階でも、下落していません。その後の動きは5年で約4倍程度の上昇となり、同期間の日経平均の上昇率を大きく上回っています。
この動きを解りやすく見るために「レシオケーター」を利用してみます。
株価が底を打つかなり前から底を打ち(赤丸の位置)、株価が底を打った後は本格的に上昇し始めています。
注意してもらいたいのは、その銘柄が何かの好材料が出たために上昇したものでないことを確認してください。材料が出たから株価が堅調になったのと、該当企業の株価が割安だと考える投資家が増加したことで堅調になったのは、少し意味合いが異なります。
いろんなもので比較してみる
比較対象とするものは日経平均とは限りません。例えば、業種別指数(例えば、東証電機株指数)と電機セクターに所属する個別銘柄を比較すると、業種内での優劣が解ります。
銘柄X(電機株)は電機セクターの中でも堅調に推移している銘柄であることが解ります。ここで注意してもらいたいのは、電機株の中では比較優位な動きをしていても、電機株自体が弱含んでいた場合には、マーケット対比では弱含みである可能性があることです。更に調べてみましょう。
図-11を見ると、足元では出直りの兆しもありますが、電機株指数は日経平均に対して弱含みであることが解ります。次に、銘柄Xと日経平均を比較します。
図-12を見ると解るように、銘柄Xの動きは日経平均対比では横ばい程度の動きでした。
ポイントは、「何を目的に比較するのか」を考えて利用することです。例示した状況の中で、
- 足元の電機株の動きは良くないが、長期的には出直る可能性が高いと思っている。
- 電機株の中で比較優位の銘柄に投資しておけば、足元の状況(電機株が軟調)でも大きくやられることは無い。
- 長期的には日経平均を上回る投資成果を上げたい。
例えば、1~3の様な投資方針があるのならば、このチャートを確認しながら投資を行うことは有益だと考えます。
グロース市場の動きについても同じようにやってみましょう。
同じグラフ上に両指数を描くと、どこの期間で、どちらが比較的堅調(軟調)なのか解り難い状況になります。これまでと同様にレシオケーターを利用します。
グロース市場は東証プライム市場(日経平均で代替)と比較して、一時大きく劣後した後にほぼ同じ程度の動きに転じ、7月ごろから優位な動きになった状況が解ります。
執筆後記
今回はチャートの一つであるレシオケーターについて説明させていただきました。筆者としては、①様々な事象を比較してもらいたい、②そのためのツールとしてレシオケーターがある、をお伝えしたいと考えながら執筆しました。
話が混乱しない様に、比較するものを日経平均中心としましたが、比較対象には様々なものが考えられます。例えば、
- 銘柄Aと銘柄Bのどちらが強い動きをしているのか
- 最近、好配当銘柄の人気があると聞いたが、本当にそうなのか
などを検証することが出来ます。
※1のケースなら(銘柄A)÷(銘柄B)
※2のケースなら(高配当銘柄を対象とした指数)÷(日経平均株価など)とします。
今回はグラフが多いので苦労しました。グラフを作るのは大した労力ではないのですが、文章の内容に合致する事例を探すことに労力がかかりました。もっと適切な事例はたくさんあると思います。皆さんも、興味があれば試してみてください。出来れば、「なぜそうなっているのか?」を考えることも提案します。そして、その状況が継続されるのか、反転するリスクはどうかも考えてみると、更にマーケットへの理解が深まると思います。今回に懲りずにまた読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、次回もよろしくお願いします。
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