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かぶかはふしぎでうごいてる??? 第21回 何かが起こった!どう考える?

2023.09.13 (水)

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

かぶかはふしぎでうごいてる??? 第21回 何かが起こった!どう考える?

世の中は騒がしいもので、常に何かが起こっています。経済や株式市場、企業・・・いろいろな主体に影響が生じます。その時にはすごい出来事が発生したような気もするのですが、思い起こせば世の中では常に何かが起こっていて、何もない平和な一年があったものかと考えることもあります。

その時々の出来事に対して様々な解説が飛び交います。解説することを仕事としている人が存在する以上、この動きは常に生じます。その解説が本当に正しいのかは歴史に問い合わせるしかすべはありません。ただ、自分なりに知識を高めることによって、自分なりに正しいと考えられる解釈が出来るように努力することはできます。

幾つかの例により、現在生じていることへの解説を試みます。もちろん、この解説が正しいか、否かも歴史に検証してもらうしかありません。

「かふしぎ」で試みていることは、例を挙げてみることで、皆様に考えるネタを提供することです。そして、皆様が考えるための手助けとなれば、執筆妙味につきます。それでは、書き始めますが、批評者としてのスタンスでお読みいただければよろしいかと考えています。

1.「日本株が上がった!」理由は?

2023年の前半に生じた日本株の上昇は話題になりました。米国株式市場と比較しても、力強い展開だったことも目を引きました。

日経平均株価の動き(2022/9/14~2023/9/5)

2023年の1月から6月まで急激に日経平均株価が右肩上がりになっている

この上昇の背景として言われていたことを思いつくがまま列挙すると、

  1. 円安の効果
    1
    つ目は、円安効果で輸出関連の日本企業の収益が回復する。
    2
    つ目は、円安により海外投資家にとっては為替換算した日本株が安く買えるようになった。
  2. 東証改革
    これを契機にして日本企業の変革が期待され、日本の低バリュエーションに再評価が芽生える期待。
  3. バフェット効果
    著名投資家のバフェット氏が日本株に強気論を言った。特に、バフェット氏は割安な良い企業を長期投資するイメージが強いため、日本株式市場の再評価につながった。
  4. 罫線的に見てみると
    2年程度のもみ合い期間が生じており、日柄調整が進んでいたため上昇しやすい状況だった。

日本株と米国株の動き(2019/9/17~2023/9/5)

※青い線が米国株(ダウ30種平均)、オレンジの線が日本株(日経平均225種)です。
 オレンジの線の方が先に調整に入り、もみ合い期間が長いことから日柄調整が進んでいたと考えることが可能です。

上記のことはいずれも当てはまっていると思います。しかしながら筆者は中国経済の中期的成長力が低下してきたとの認識が広がってきたことの影響が大きいのでは?と、考えています。

国際分散投資を行っている投資家の視点に立って考えてみます。これまで日本株がアンダーウェイト(運用のベンチマークとなる指数における日本株の構成比よりも少なく日本株を保有すること。これは、日本株が他の国の株式よりもパフォーマンスが低くなると考えている投資家が多いことを意味しています)にしている投資家が多いといったことを見聞きした方もいらっしゃると思います。

国際分散投資を行う投資家の中には地域ごとに担当者を付け、北米担当、欧州担当、アジア担当・・・としているケースが少なくありません。アジア地域の担当者が中国をオーバーウェイト、日本株をアンダーウェイトとしていた場合を想定します。

中国経済に対する懸念論は数年前からありますが、現実は他国よりも高成長でした。一方、日本株は自国の経済が低成長を続けていたことや、企業の躍動感にも欠けるため、割安感はあったものの人気のある市場ではありませんでした。

しかしながら、今年に入り中国経済への懸念が高まってきました。それも、短期的な停滞というよりも、中長期的な懸念です。ここで、アジア地域の担当者はどう動くでしょう。

全員が同時に行うとは思えませんが、それなりの投資家が中国株のオーバーウェイトをやめるために中国株のウェイトを下げたかもしれないという仮説は成り立つと思います。中国株を売却した資金が日本株に向かったという仮説も成り立つと思います。

この仮説に基づくと、中国経済の失速の影響が世界経済に悪影響を与えるために日本株も調整する可能性があるという仮説は後退します。中国株(経済)への見通しが後退するにつれて、日本株への資金流入が期待されるという、皮肉な構図が想像されるのです。そして、前述していた4つの日本株への期待感も株価堅調への後押しとなります。

足元を見ても、中国の不動産問題が大きく取り上げられても、逆に日本株は騰勢を取り戻している状況です。

果たして、この「かふしぎ」風の相場解釈は正しいのでしょうか?もちろん、筆者は正しく感じるように文章を書いています。その文章に惑わされないようにして、皆様も検討をしてみてください。

また、長期的視点と短期的視点で解釈が異なることもあります。ここにも注意を払ってみてください(解説は執筆後記にて)。

2.「為替が動いた!」理由は?

まず、為替の動きを説明する、比較的有名な二つの理論を紹介します。

1.購買力平価説

2つの国の通貨間の為替レートは、その国々の物価水準に基づいて決まる。具体的には、ある商品が2つの国で販売されている場合、それらの通貨の為替レートはその商品の価格が等しくなるように調整されます。

この理論を利用した有名なものがビックマック指数です。ビックマックの価格を比較して為替の水準に見当を付けようとするものです。

現在、米国では5.5ドル程度で売られており、日本では450円です。均衡する為替レートは、
5.5
ドル×80円=440
となり、ビックマックの価格で考えると現在140円台半ばの為替は何だろうということになります。

この理論では現状では大幅円高を示唆するものとなってしまいます。

この理論で注意したいのは、この物価水準の違いが為替レートの変化で解消されるケースもありますが、米国の価格が下がる(デフレ)もしくは日本の価格が上がる(インフレ)で調整されることも考えられることです。

2.金利平価説

 2つの国の通貨間の為替レートは、それらの国の金利差に影響を受けます。金利差が大きい場合、高金利の国の通貨はプレミアムがつき、高金利通貨高、低金利通貨安のように為替レートが変動します。

現在の状況で説明がつきやすいのがこの理論です。ご存じのように米国の金利は日本の金利に比べてはるかに高いです。現在の円安傾向を説明するにはこれが使いやすいです。

しかし、この理論は為替の水準を示すものではありません。金利差が大きいからと言って高金利の国の通貨が果てしなく上昇するかと言えば、それはあり得ないと考えるのが妥当でしょう。

この他にも、ソロスチャート、経常収支などいろいろな為替の説明理論等があります。ただ、常に当てはまるものはなく、その時の様々な要因によって説明が異なることが多いのが為替です。

執筆後記

前回の三部作では少し理論に偏った文章が続いたため、今回は時事ネタを取り上げてみました。

『1.「日本株が上がった!」理由は?』では、このような考え方もあるけれども皆様はどう考えますか?これは株式需給を推測する手法のため、企業の内容や経済の動きを背景に考えませんかといったいつも書いている論調とは異なります。

※執筆後記にて解説をするとしたところを下記に示します。短期的視点で中国経済の失速により中国株から日本株に資金移動が行われる仮説を示しました。ただ、これは長期に継続されるものではありません。どこかで中国株が大幅アンダーウェイトになれば、そこで資金移動は終わります。中国景気が長期的に失速してゆくなら、それが世界経済に与える影響を考えなければなりません。これが長期的視点での問題です。

『2.「為替が動いた!」理由は?』では、理論の限界を示唆したつもりなのですが、これは「株価は理論で動いている」を背景とした主張とは異なっており、自己矛盾を抱えた文章になっています(ただ、株式や債券のようにインカムがある資産と異なり、為替は単なる交換比率です。ここに、理論を構築する難しさがあります)。なかなか、一貫性を貫くのは難しいことだと再確認することになりました。とはいえ、今回に懲りずにまた読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、よろしくお願いします。

(お願い)当文章はアイザワ証券投資顧問部一社員が株式市場における一般的な事象について個人的な見解に基づいた解説を行ったものであり、同部門が提供しているサービスの運用方針とは関係ありません。

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ライター

吉田 大路

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

2015年アイザワ証券入社。現在は投資顧問部運用課に所属。当社入社以前は証券系投資信託、生保系投資顧問、信託銀行などで約30年間、資産運用業務を行ってきた。基本的にブログやSNSはやらないので、今回の業務に伴う書き込みが初めての体験。

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