かぶかはふしぎでうごいてる??? 第19回 PBRとROE、それに影響するいろんなもの(中編) feat. ChatGPT
2023.06.19 (月)
前回はPBRの水準に影響を与える指標として、ROEについて解説しました。今回はROEを理解するために利用されることの多い「デュポン分解」について解説します。
加えて、最近話題に上がることの多い「ChatGPT」を利用して、文章を書いてみます。二つの話題を混在させる試み。楽しんでいただけると嬉しいのですが、どうなることやら。
1. 前回の振り返り
かなり単純化しましたが、前回の解説を思い出していただけたでしょうか。
2. デュポン分解
ROE=当期純利益/自己資本 これが定義式です。
この右辺に売上高/売上高=1、総資産/総資産=1を乗じます。
ROE=(当期純利益/売上高)×(売上高/総資産)×(総資産/自己資本)
当期純利益/売上高は「売上高当期純利益率」と呼ばれ、売上高当たりの利益額なので企業の提供する商品・サービスの収益性を示す指標になります。
売上高/総資産は前述した「総資産回転率」ですね。
総資産/自己資本は分母と分子をひっくり返すと(自己資本/総資産)になり、自己資本比率になります。
書き換えると、
ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×自己資本比率の逆数
これが、一般にROEのデュポン分解と呼ばれているものになります。
ROEの数値は構成される3つの指標値が高ければ良くなります。すなわち、売上高当期純利益率(利益率)は高く、総資産回転率も高く、自己資本比率の逆数も高く・・・、そうなればROEは高くなります。
しかし、最後の自己資本比率は逆数です。10%の自己資本比率の逆数は10(1/0.1)ですね。50%の自己資本比率の逆数は2(1/0.5)ですね。
10%の自己資本比率より50%の自己資本比率の方が安定性は高い企業なのに、売上高当期純利益率と総資産回転率が同じ数値だとすると、自己資本比率の高い方の企業のROEは1/5になってしまいます。(2/10=1/5)
一般的な感覚では、売上高当期純利益率は高い方が良い(同じ売上高から得られる利益が高い=高マージンの商売をしている)。
総資産回転率は高い方が良い(同じ資産から大きな売上高を得ている=効率の良い商売をしている)。
日本の企業が内部留保を高め自己資本比率を高めてきたことはROEの観点からはマイナス要因になります。株式市場で配当を高めろとする声は配当利回りが高くなることの他にも、内部留保が高まらないので自己資本が増大しないことも理由なのです。自社株買いについても株式需給が改善する他にも自己資本が縮小する効果があります。
デュポン分解の利用法は他にもあります。当該企業のROEがどのような特徴で成り立っているのかを理解することが出来ます。
例えば、薄利多売のビジネスモデルであれば、「売上高当期純利益率」は低くなります(薄利ですから)が、「総資産回転率」は高くなります(多売ですから)。多売を更に進めようとすると、会社の規模を大きくしようとするインセンティブが働きます。その規模を大きくするための資金を借り入れで行えば自己資本比率は低下します。すると高ROE企業への道筋が見えてきます。ただ、やりすぎるとバブル崩壊後の巨大チェーンストアのように行き詰まるリスクもあるので、ここは要注意です。
3. feat. ChatGPT
遅ればせながら筆者もChatGPTを利用してみました。
◇「ROEとは」と聞いてみました。
(答えの要約)
ROEの定義を回答した後に、「高いROEは、効率的な資本運用や収益性の高さを示す可能性があります・・・・・ROEが他の企業や業界の平均や基準に比べて高い企業は、投資家の関心を集めやすい傾向があります。・・・・・」
(筆者の驚き)
下線部分である「業界の平均」に注目しているところはさすがだと感心しました。
◇更に、「ROEを投資判断に利用する」と聞いてみました。
(答えの要約)
一般論を述べたのちにポイントを4つ説明しました。
- 業界比較:同業界の他の企業と比較することが重要
- 長期的な傾向:その高いROEが持続するかどうかは重要
- ROEの要因:高いROEを持つ企業が利益率を高めていた場合・・・(略)・・・競争力や効率的なコスト管理がある可能性があります。
- 経営の戦略と競争力:ROEの高い企業は効率的な運営や優れたビジネスモデルを持っている可能性があります。・・・
(筆者の驚き)
(1)、(2)に踏み込んでいることはさすがです。また、ROEが高いだけでなくその背後にある何かを読み解く必要性に言及していることも素晴らしいです。更に、この4つのポイントの後に、「単独の指標だけでなく他の財務指標や業績動向・・・・・」と広い視点で見ることを推奨しているところは、筆者の出番はないかも?と恐れてしまいました。
◇少し意地悪をして「競争力が高い企業はROEが高くなるか」と聞いてみました。
(答えの要約)
「収益の向上」「効率的な資本運用」「優れた経営戦略」について説明した後、「ただし、ROEが高いからと言ってからと必ずしも競争力が高いとは限りません。・・・競争力は様々な要素によって影響を受けます・・・・・
(筆者の驚き)
ROEについて過信せず、他の要因を吟味することを推奨する一貫した姿勢は称賛に値します。
◇ストレートに「PBRを上げるには」と聞いてみました。
(答えの要約)
収益性の向上(前述した売上高当期純利益率のことですね)、資産の効率的な運用(総資産回転率ですね)、財務状況の改善(自己資本比率ですね)、成長の見込み(恥ずかしながら当文章ではこれに言及していません)などを回答していました。
(筆者の驚き)
当文章内ではデュポン分解を利用して説明しましたが、これを平易な言葉で説明しているところに感心しました。
次回に続く・・・
執筆後記
筆者はChatGPTを初めて使いました。Google検索だと出てきた結果を自分で消化しないといけませんが、ChatGPT だと平易な文章で解りやすく説明してくれるところは非常に便利だと感じました。
しかし、便利であるけどもあまり使いすぎると頭が退化してしまうのではないかと思うことが懸念です。それぐらい便利なツールです。これを導入することに遅れた企業はIT化に乗り遅れた企業と同じぐらいビハインドになるのではと感じるほどです。
まだ試されたことのない方は、EC(オンラインショッピング等)の登録と同じ程度の作業で使えるようになりますので一回試してみられるとよろしいかと思います。
「かぶかはふしぎでうごいてる???」は、なんとかChatGPTを上回る文章を作れるよう工夫していきますので、今回に懲りずにまた読んでいただければ励みになります。次回もfeat. ChatGPTを使ってみるかどうかを思案しているところです。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、よろしくお願いします。
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