かぶかはふしぎでうごいてる??? 第17回 期間の取り方によって見え方は変わる
2023.04.25 (火)
今回は資料の見方について考えてみます。投資判断を行う時には、何かの理由があるはずです。そして、その理由に整合性があるのかを考えてみることは大切です。
期間の取り方について考えてみましょう。今回は株価チャートと業績動向を例として期間を変えてみると見え方が変わることを示してみます。他の種類の資料(例えば、経済指標や他の資産の動き)でも同じことが言えます。
もちろん、各投資家の皆様ごとに投資目的や投資判断の基準は異なるので、ここで書かれていることが万人に適合するものとは限りません。比較的大多数の方々が納得できるようなことを書くつもりですが、その是非は皆様方の判断で取捨選択してください。
1. 株価チャートを見るときに
まず(図表-1)の株価チャートを見てください。もみ合い圏から株価が抜け出してきており、上昇基調に転じたとの仮説が立てられるような動きです。
次に、同じ銘柄のその後を付け足します。
赤の点線で囲んだところが(図表-1)の期間になります。先ほどの仮定は見事なまでに外れてしまいました。このような状況に陥らないための方法論を考えてみます。
(図表-1)に過去の部分を付け足してみました。
赤の点線で囲んだところが(図表-1)の期間になります。この形だと、1,500~1,600円あたりに抵抗帯がありそうな感じがします。また、600円から2,600円まで大相場を演じた後の調整にしては未了感もあります。
次に(図表-3)に現在まで伸ばしたチャートを載せてみます。
赤の点線で囲んだところが(図表-1)の期間になります。緑の点線で囲んだところが今の所、株価の底値圏になっています。
- 高値から「半値8掛け2割引き」(32倍)の水準である2,500円(高値)×0.32=800円の半値以下となっており、株価水準的には調整一巡感があること。
- 高値から大きく見て2段下げとなっていること。
- 最安値水準でかなりの期間調整していること。
などから、(図表-1)の局面よりはチャート的な側面で有望視する根拠は増えています。また、緑の点線で囲んだ所から先の所は良い感じで上昇していますが、今の所が買いタイミングと判断するには、
- 安値から3倍以上になっており、安値で買われた投資家の利食いが入っても不思議ではない水準。
- 1,000円以上の水準には株価抵抗帯がありそうに見える
などから、疑問点も出て来ることも記載しておきます。
別の視点で、緑で囲まれた所から現在に至るまでの、短いチャートを描いてみます。
赤の点線で囲んだところ辺りから、上昇局面に入ったと判断することも可能なように見えます(ただ、現状株価では利幅としてはそれほど大きくありませんが・・・)。これなら、タイミング的には悪くなさそうです。
(図表-1)で行った判断と、(図表-5)で行った判断の違いは長期間の動きと短期間の動きの利用法です。(図表-1)では短期間だけのチャートで判断しました。(図表-5)では長期的な動きである(図表-4)で状況を考え、かつ、短期的な買いタイミングを図るために(図表-5)を利用しました。
長期の日足が無ければ、月足・週足でも大丈夫です。今回、参考例とした銘柄は上場してから間もない企業だったので長期チャートとしても3年半程度ですが、10年以上の動きが取れる銘柄もたくさんあるので、色々と試して下さい。
2. 業績動向でも同じです
横軸を期間(年)、縦軸を利益額とする図表を見てみましょう。
マスコミ等の銘柄紹介で、この様な図と同時に「3年ぶりの利益更新」とヘッドラインが記載されており、「株価も年初から1割高」と書かれていると、なにか有望銘柄のような気がします。
しかし、この企業の10年間の利益を見直すと次のようであったとします。
赤線で囲まれた所が(図表-6)の所です。このように過去の状況を加味した場合、見え方は大きく変わり、それほど有望には見えなくなるようなケースもあります。
業績についても株価と同じで、短い期間の利益だけをみるとミスリードされてしまいます。今は、企業のIRサイトも充実しており、10年程度の利益推移が開示されていることは珍しくありません。その企業の長期的な利益水準と現状を比較して、その企業の業況感のレベルを確認することは有益だと考えます。
3. (番外編)業績もリバウンドする?
株価が大幅に下落した後に自律反発することが在ることは良く知られています。リバウンドと呼ばれたりもします。
ただ、リバウンド局面から継続的な上昇基調に転ずるには、何らかの株価に対する支援材料が追加されることが必要です。
企業業績もリバウンドすることがあります。
費用が減少しているので売上高の減少が止まると利益は回復します。しかし、どの方策も継続的に何年も行えるものではないので、売上高の回復が続かなければ1~2年で利益の回復は止まってしまいます。
このような利益の回復をどの程度評価するかは難しい問題です。この先に企業がどの様に変化してゆくのか考えることや、株価と投資指標を手掛かりとして考えてゆくのが一般的です。(図表-7)のような例においても、業績のリバウンドなのか、企業の業況が変化しつつあるのかを検討したいところです。
また、時々生じる現象として、費用を絞った所に売上高が回復した企業が利益を大きく伸ばすことがあります。この場合は、株価の大幅上昇が期待できる状況になります。
一つ助言できることは、利益だけでなく売上高の状況も同時に検討することです。
執筆後記
情報については、長期的なものと短期的なものの、両者を見ることをお勧めするというのが今回の趣旨です。チャートの話が一番解り易いかと考えて、例としました。それは業績動向でも経済指標でも同じことです。
次のステップとしては、長期的な情報については、何故そのような経緯を辿ったのか、得られる情報を基にして、ご自分で理解を深めてゆくことです。
- チャートであれば、なぜ?この局面で上昇したのか、下落したのか。
- 業績動向であれば、なぜ?この期間で業績が好調になったのか、不調になったのか。
その背景を基礎として、現在の状況を推察してゆくことを週間つけると投資の幅が広がってきます。
今回は話題について深堀をしていません。次回以降に機会があれば、深く検討してゆきたいと考えています。次回も、今回に懲りずにまた読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、よろしくお願いします。
ご留意事項
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