China Market Eye ロックダウン後の上海不動産市場
2022.10.31 (月)
中国の不動産不況は、昨年中ごろからのレバレッジ解消の加速を発端に史上最長の15か月間に及んでおり、今なお出口が見えていません。そのような中、過去20年間、中国の不動産市場をリードしてきた上海の不動産市場に対するロックダウン(都市封鎖)後の動向に注目が集まっています。
上海市街地で住宅価格が高騰
今年4~5月のロックダウン期間中に上海の新築・中古住宅取引はともにほぼゼロ近くに落ち込みましたが、ロックダウン解除に伴って6月から急回復を遂げ、7~9月の新築成約販売金額は前年同期比74%増の2,298億元(4.8兆円)に達しました。平均販売単価も一時的に7万元/㎡の大台に乗せています。
上海市は、不動産不況によって財政難に陥った多くの地方都市とは一線を画し、優良開発用地の集中放出で財源確保に乗り出しました。大手国有・民間デベロッパーは、上海の将来性や優良案件の高収益性を見越して、逆張りのスタンスで積極的に応札。地価の上昇に伴って、1~9月の上海市政府による開発用地の払い下げ収入は前年同期比47%増の2,653億元となり、通年では史上最多となるのが必至の情勢です。
さらに驚いたことに、新天地エリアの築3年の高級物件が30万元/㎡(うち1軒は販売価格が5,000万元超)を超える水準で取引されるなど、中核エリアの住宅価格は異常な水準にまで高騰しています。その連れ高で、上海市街地のごく普通の住宅の売り出し価格も1,000万元前後(約2億円)台に乗せています。今や豪邸の基準は3,000万元(約6億円)以上とされています。
その一方、郊外など立地があまりよくない老朽化物件では値崩れが起き、上海市の住宅市況は2極化の様相を呈しています。その背景には、ゼロ・コロナ政策など景気の先行き不透明感から、富裕層が資産保全のために都心の高級住宅地に資金をシフトさせているのに対し、収入が不安定な一般庶民の購買力は低下していることが挙げられます。
上海の中古住宅市況に異変
ロックダウン解除後の上海不動産市場は急回復と強靭性を見せましたが、かならずしも中国全体の不動産市場の先行きを示唆するものではありません。なぜなら、人口の流出入状況や住宅在庫水準、産業構造、不動産政策の違いなどから、住宅価格の下落圧力については各地域でばらつきがみられるからです。
上海では長年にわたる厳格な購入制限措置により、投機活動(仮需)がほぼ剥落し、一部の地方都市で発生した住宅の引き渡し遅延もありません。また。上海不動産市場は、新築市場を中心とした中国の他の地域と異なり、全体の60~70%を中古住宅が占めていることから、中国では需給バランスが取れた最も健全な大都市と言われています。
ただここにきて、堅調だった上海市の中古住宅市況にも異変が生じています。ロックダウン後の新規開発用地の大量供給により、消費者の多くは中古住宅から新築住宅に買い替えようとしており、中古住宅と新築住宅の取引比率は、これまでのほぼ3対1から崩れ始めているからです。夏場ごろから中古住宅の売り出し件数は急増しており、住宅市況の上昇に陰りが見えています。
上海の住宅市況はすでにピークアウトか
中国当局は、「共同富裕」と「質的成長」の方針の下に、社会格差と資源配分の歪みを拡大させるような不動産市場の過熱については抑制する決意が固く、不動産市場への支援はあくまでも低位安定を目指すものとみられます。
したがって、上海といえども、超富裕層向けの住宅市場を除けば、市場全体を取り巻く環境は従来よりも厳しい状況に変わりはありません。中長期的に見れば、上海市の住宅価格が最も大きく上昇した時期は過ぎており、今後、住宅市況は所得・雇用など中国経済のマクロ見通しに大きく依存することになるでしょう。
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