ザ 語源 第36回 首都と資本はなぜ英語でキャピタルか?
2024.07.08 (月)
首都と資本はなぜ英語でキャピタルか?
7月7日、「首都」東京の都知事選挙が行われました。「首都」は英語で「キャピタル:capital」といいます。また事業を興す際に必要な元手となるお金、「資本」も「首都」と同じ「キャピタル:capital」です。株式や債券などの資産を売却する時に得られる譲渡益は「キャピタルゲイン:capital gain」といい、「キャピタル」は投資の世界では馴染みの言葉です。
今回の語源は「キャピタル:capital」を取り上げたいと思います。
まず下のイラストをご覧ください。左から帽子(キャップ)、まんじゅう、キャベツ、牛です。この四つには共通した語源があります。
「帽子」の語源
左の「帽子」から説明します。イラストのような周りをツバで囲っていない「帽子」は「キャップ:cap」といいます。「キャップ」はラテン語で「頭」を意味する「キャプト:caput」が語源です。帽子の周りをぐるりと囲うようにツバがある「ハット:hat」と違い、「キャップ」は「水泳帽(スイミングキャップ)」のように頭の形にぴったり合わせた形なので「頭」を意味する言葉が「キャップ」になったと考えられます。
外来語として定着している「キャプテン:captain」も同じ語源です。リーダーは「頭(あたま)」となって仲間を引っ張っていく存在なので「頭」を表す言葉が「キャプテン」になったと考えられます。
「饅頭」の語源
「まんじゅう」は漢字で「饅頭」と書きます。「饅頭」の起源をさかのぼると、古代中国の三国志で有名な天才軍師:諸葛孔明(しょかつこうめい)の伝説に行き当たります。
孔明が遠征軍を率いて大きな川を渡河しようとしたところ、豪雨により川は荒れ狂い遠征軍は足止めされました。地元住民から人身御供として人間の頭を川に投じれば氾濫を鎮めることができるという風習を聞きましたが、人命を重んじる孔明はその提案を受け入れませんでした。孔明は小麦粉を練った中に牛や羊の肉を入れさらにそれを蒸し上げたものを川に投じ、人身御供の替わりにしました。この伝説が元となり、小麦粉の中に具をいれて蒸した食べ物を「饅頭」というようになったのです(その後人間の頭の大きさほどもある「饅頭」を神に捧げるのは勿体ないということで人間が食べやすいように「饅頭」は小型化されました)。
「キャベツ」の語源
「キャベツ」は英語の「キャベッジ:cabbage」が元になり、「キャベツ」という呼び名で定着したとみられています。元々日本では「キャベツ」を「甘藍(かんらん)」や「玉菜(たまな)」と呼んでいました。「キャベツ」も「キャップ」と同様、ラテン語の「キャプト:caput」が語源です。形や大きさがちょうど人間の「頭」の形に見えることが名前の由来につながったと考えられます。
「牛」の語源
「牛」は英語で様々な言い方があります。「雄牛」は「ブル:bull」、牝牛や乳牛は「カウ:cow」、雄牛でも去勢されたものは「オックス:ox」といいます(有名な英国の大学「オックスフォード:Oxford」は「牛の渡り場」が語源です)。また一般的に畜産用の「牛」は「キャトル:cattle」といいます。
「キャトル:cattle」もラテン語の「キャプト:caput」の「頭」が語源です。放牧されている「牛」の数を確かめる際、「牛」の「頭」の数を数える、これが「キャトル:cattle」の語源になったと考えられています。欧州一帯では畜産による乳製品や肉は生命を維持するための重要なタンパク源でした。従って牧畜で飼育されている「牛」は「財産」そのものであり、飼育されている「牛」の数が富の大きさを示しました。
ちなみに動物の数を数える場合、「何頭」という場合と「何匹」という場合の二通りに分かれますが、人間より大きい動物は「頭(とう)」と数え、人間より小さい場合は「匹(ひき)」と数えるのが通例となっています。
しかし動物の数え方には一部例外もあります。パンダの赤ちゃんは「頭(とう)」と数えます。成長したら人間より大きくなるから初めからこのように数えるのです。またウサギは鳥と同じように「羽(わ)」で数えます。一説には、肉食が禁じられていた日本ではウサギを鳥ということにしてタンパク源にしていたことに由来しているようです。絹(シルク)の原材料となるカイコ(蚕)は昆虫なのに大型の動物と同じ「頭」と数えます。欧州における「牛」と同じようにカイコは富を生み出す「財産」だからです。昔はカイコのことを「お蚕様」と言って敬いました。
このように「頭」を意味するラテン語の「キャプト:caput」は組織のリーダーや重要な部分を表すだけにとどまらず、「財産」や「資産」を表す言葉に広がったと考えられます。一国の中心となる都市を「首都」といい、また同じように事業の元となるお金となる「資本」を「キャピタル」というのは以上の経緯によるものだったのです。
※本記事で解説する内容について、実際の言葉の成り立ちや、一般的とされる説と異なる場合がございます。
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