亜州潮流 「世界で最も解決が難しい紛争」
2023.12.25 (月)
当記事は2023年11月13日発行「アイザワ・グローバルマンスリー11月号」より抜粋しております。
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「世界で最も解決が難しい紛争」
世界で最も解決が難しい紛争とされるイスラエルとパレスチナ間(アラブ諸国)の摩擦は、およそ2000年前、ローマ帝国との戦いに敗れたユダヤ人がその地を追われたことから始まる。
パレスチナと名付けられた同地域には、ユダヤ人が去った後、アラブ人(同、パレスチナ人)が居住していたが、第一次世界大戦時のイギリスの3枚舌外交(終戦後のオスマン帝国からのアラブ人の独立を支持する「フサイン=マクマホン協定」、イギリス・フランス・ロシアで領土分割を決めた「サイクス・ピコ協定」、ユダヤ人にパレスチナ地域での国家建設を認める「バルフォア宣言」)により火種が生まれる。アメリカなどの後ろ盾を得て、ドイツのホロコーストなど迫害を受けていた多くのユダヤ人が出自・宗教的に重要とされる地域「ナショナル・ホーム(民族的郷土)」であるパレス
チナに移住を始めたことで、居住区を奪われるパレスチナ人との間で摩擦が発生することとなった。
第二次世界大戦終結後、国連がパレスチナを「ユダヤ人の国」と「アラブ人の国」に分割することを提案。ユダヤ人側は提案を受け入れイスラエルを創設した一方、アラブ側は拒否し、1973年の第四
次まで続く中東戦争が勃発。1993年、イスラエルとパレスチナの二国家共存を目指した「オスロ合意」がなされ、パレスチナ暫定自治政府が誕生するも、アラブ側は過激派によるテロ、イスラエル側
は国際法的に違法とされる入植行為が継続される等、その後も双方の衝突が続いていた。
今回、イスラエルが攻撃の標的としているパレスチナ暫定自治区“ガザ”は、イスラム過激派テロ組織であるハマス(イスラム抵抗運動)が武力で実効支配している地域とされる。鹿児島県の種子島ほ
どの広さで、およそ200万人を超えるパレスチナの難民が住み「世界で最も人口密度の高い地域の一つ」とされるほか、難民や、それを隠れ蓑にしたテロ組織への対策などから、イスラエルによる監視
や行動の自由の制限が厳しく「天井のない監獄」とも言われている。
10月7日の攻撃はハマスによるもの。イスラム過激派によるテロであり、戦争の構図はイスラエル対テロ組織である。イスラエルによるガザへの長期にわたる締め付けから、同地域市民の生活が疲弊し、不満が蓄積したことにより今回の軍事行動に至ったのではないかとの憶測もあるが、真偽は不明だ。ただ、イスラエルが受けた攻撃としては50年前の第4次中東戦争以降最大規模で、多くの自国民を失ったイスラエルが早期に矛を収めるのは難しいだろう。イスラエルによる攻撃の被害者には難民が多く含まれており、憎しみの連鎖が拡大するなか、そもそもの話し、中東諸国はイスラエルを侵略者と捉えている節があり、今後、戦闘の長期化に加え各国への戦火拡大の可能性にも注意が必要だ。
イスラエルは中東のシリコンバレーと呼ばれるほどのIT国家で、アルファベット(GOOGL)やインテル(INTC)などの名だたる企業が開発拠点を置く。一人当たりGDPは5万ドルを超え、教育を含
め、国としてのポテンシャルが非常に高いだけに、戦争によりイスラエルが失うものは大きいだろう。歴史の背景に多くの課題を抱え、解決が難しいことは理解できるが、当事者同士、憎しみを乗り
越えなければ解決できない。我々は、ただただ、戦争の早期終結を願うばかりだ。
※「亜州潮流」はアジア新興国のトレンドを解説したコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。
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