
Aizawa Market Report 2025年全人代「政府活動報告」の要旨
2025.03.10 (月)




2025年全人代「政府活動報告」の要旨
2025年3月5日、中国北京で全国人民代表大会(以下全人代、中国の国会に相当)が開幕し、李強首相は会議の冒頭で「政府経済報告」を行った。その要旨を以下にまとめた。
2024年の政府活動の成果
李強首相は、昨年を振り返り「外部の圧力が強まり、内部の困難さも増す中、政府と国民は厳しい情勢を乗り越え、経済成長の主な目標を達成することができた」と発言した。
2024年の主な実績
- 2024年の GDP 成長率:前年比+5.0% (目標は+5%前後)
- 都市部の新規雇用:1256万人 (目標は1200万人以上)
- 都市部の調査失業率:1% (目標は5.5%以下)
- 消費者物価指数:前年比+0.2% (目標は+3%前後)
- 国民一人当たりの可処分所得:1%増加(目標はGDP成長率と同水準)
- 穀物の生産量:4兆斤(目標は1.3兆斤≒0.65兆kg以上)
- GDP単位当たりのエネルギー消費:3%超を削減(目標は5%削減)
- 都市化比率:67%に上昇(前年は2%)
- 外貨準備高:2兆米ドル超
- ハイエンド製造業と設備製造業の付加価値:それぞれ9%と7.7%増加
- 製造業投資:2%増加
- 技術契約の成約額:2%増加
- GDP全体に占めるデジタル経済付加価値の比率:約10%
- 非化石燃料エネルギーによる発電量の比率:約4割に迫る
- 奨学金・学生ローンの拡充・金利引き下げによって延べ3400万人の学生を支援
- 生活困窮者に関する給付金を支給、1100万人超を支援
- 中国と国交がある全ての後発開発途上国に対してゼロ関税を実施
- 5の平均濃度が低下、空気、水の質が改善
2025年の主な政府目標と重点施策分野
2025年は第14次5か年計画の最終年度であり、内需拡大とイノベーション・産業融合、不動産・株式市場の安定維持、重大リスクと外部ショックの防止・解消などを通じて、質の高い成長を目指していく方針。
2025年の主な目標
- GDP成長率を前年比+5%前後にする
- 都市部の調査失業率を5%前後に抑える
- 都市部の新規雇用者数を1200万人以上にする
- 消費者物価指数の上昇率を2%前後に保つ
- 国民所得の伸びを経済成長率と同程度の水準にする
- 国際収支均衡の状況を保つ
- 穀物生産能力を4兆斤(0.7兆kg)以上にする
- GDP単位当たりのエネルギー消費を3%削減する
- 一般公共予算の支出額を7兆元(前年比+1.2兆元)とする
- より積極的な財政政策を実施する
- 財政赤字の対GDP比を4.0%前後(赤字規模5.66兆元、前年比+1.6兆元)とする
- 地方政府特別債券の発行規模を4.4兆元(前年比+0.5兆元)とする
- 超長期国債を1.3兆元(前年比+0.3兆元)発行する
- 特別国債を5000億元発行する
- 今年の新規政府債務の合計規模は11.86兆元(前年比+2.9兆元)とする
- 適度に緩和的な金融政策を実施する
- 適時に金利と預金準備率の引き下げを実施する
- 不動産と株式市場の健全的な発展を促す取り組みを更に強化する
- 技術革新とグリーン経済、消費拡大、民営・中小零細企業向けの金融支援を強化する
- 人民元レートを合理的な水準に維持する
- 国民の生活水準向上と消費促進、雇用拡大、負担軽減に向けた取り組みを強化する
2025年の重点施策分野
- 消費促進に注力し、投資効率の向上と全方位の内需拡大を図る
- 地域に応じた「新質生産力」を発展させ、産業の近代化を加速させる
- 教育の質を高めて人材育成に注力し、国全体の技術力を高める
- 必要性の高い改革を早期に実施し、経済成長における制約を取り除く
- 対外開放をより一層拡大させ、対外貿易の安定と海外資本の定着を図る
- 重点領域におけるリスクを防止・解消し、システミック・リスクを防ぐ
- 食料の安定供給と農村振興、貧困撲滅に注力する
- 新型都市化を通じて地域間の均衡発展を促す
- 環境保護を強化し、低炭素かつグリーンな成長モデルへのシフトを早める
- 雇用の安定化と社会福祉の向上を通じて国民生活を改善する
今回の全人代に対する見方
今回の全人代では、前年の重点施策として掲げられた「財政出動の拡大」がより強化され、財政赤字の規模(5.66兆元)と地方政府特別債券の発行規模(4.4兆元)、超長期国債の発行(1.3兆元)、特別国債の発効(0.5兆元)を合わせた今年の新規政府債務規模は11.86兆元(約243兆円)に上っている。この巨額の資金は地方政府の債務支払いやインフラ整備、土地と在庫住宅の買い取り、耐久消費財の補助金、大型国有銀行の資本増強などに充てられ、経済全体の下振れリスクを封じ込める役割が期待される。
金融政策の面でも、「適時に金利と預金準備率の引き下げを実施する」、「不動産と株式市場の健全な発展を促す取り組みを更に強化する」文言が盛り込まれており、巨額な財政出動と金融緩和に支えられて中国・香港の株式市場は今後「不景気の株高」が持続する可能性が考えられる。
また今回の全人代ではITなど民営企業について「プラットフォーム経済の健全な発展を促し、イノベーションや消費拡大、雇用確保における積極的な役割を発揮させる」と好意的なコメントが見られたことから、過去に独禁法違反で処罰されたアリババ・グループ・ホールディングを筆頭に大手IT企業を取り巻く政策リスクは大きく後退したと受け止められた。
全人代で発表された政策の恩恵を受ける主な業種として、半導体やEV、AI、ロボットなどのハイテク関連、電力インフラやデータセンター関連、家電・自動車関連・製造装置関連(買い替え促進のための補助金、設備更新支援など)などが考えられる。
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