マーケットのミカタ 底堅い米国経済と長期金利
2022.06.13 (月)
底堅い米国経済と長期金利
アメリカの経済は底堅く推移しています
6月3日に、アメリカで5月の雇用統計が発表されました。雇用統計には失業率や平均時給、部門別の雇用者数などの項目があり、毎月第一金曜日に発表されます。また雇用統計の結果はアメリカの政府や中央銀行の政策にも影響するため、非常に重要な経済指標です。まずは景気との連動性が高い「非農業部門の雇用者数」のグラフを見てみましょう。
5月の非農業部門雇用者数は市場予想では32.8万人の増加が見込まれていましたが、前月から39万人の増加と予想以上の結果で、堅調なペースで雇用が拡大していることが示されました。またグラフの青い点線で囲んだ部分を見ると、コロナが感染拡大した2020年の3月と4月に大きく減少した後は、雇用者数は力強く回復し続けていることが分かります。
次に平均時給のグラフを見てみましょう。指数は、2017年12月の平均時給を100として算出しています。
グラフを見ると、まずアメリカの賃金は長期的に上昇し続けており、4年半で20%上昇していることが分かります。また青い点線で囲んだ部分を見ると、直近はコロナ前と比べて高い賃金の伸び率が続いていることが読み取れます。
以上より雇用者数と賃金からは、アメリカ経済が力強く推移していることが推測できます。
米国長期金利の上昇は続くのか
次に、株式市場と関連性が高いアメリカの長期金利の動向を見ていきます。まずは米国長期金利の代表的な指標である「米国10年債金利」のグラフを見てみましょう。
米国10年債金利は今年に入ってから経済の正常化や急激なインフレなどを受けて、3%を超える水準まで急上昇してきました。5月に入ると一旦は落ち着きましたが、直近では再び上昇に転じ、3%前後で推移しています。今後も長期金利の上昇が継続した場合、割高な成長株の下落圧力となるかもしれません。
アメリカの経営者は今後の景気後退を懸念しています
これまでに発表されている経済指標では、アメリカの景気が失速していくことを示唆するデータはあまり出ていませんが、アメリカの経営者の中には今後景気が悪化していくことを懸念している声も上がっています。
JPモルガンチェースのジェイミー・ダイモンCEOは「ハリケーンはすぐそこにある」と経済の先行きリスクを懸念しています。またゴールドマンサックスのジョン・ウォルドロンCOOは「これほどのショックが重なるのはかつて経験したことがない」との懸念を示しています。
実態経済はまだ堅調ですが、今後の見通しに対しては弱気な意見も多く、株価の反発がいつまで続くのか注意が必要でしょう。
- 当記事は、アイザワ証券のラップサービスの一つ「スーパーブルーラップ」のファンドマネージャーである三井郁男が作成したレポートを、添田恭平が再構成したものです。
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