投資のコンシェルジュ 第11回 日米株価&ドル円市場の行方
2022.09.12 (月)
日米株価&ドル円市場の行方《2022年9月上旬~10月上旬》
〔日本時間:2022年9月7日作成〕
10月上旬へ向け、(ロシア進軍の不確定要素を除き)米国株式市場の焦点は、引き続き物価と金融政策の行方。
最大のイベントは、9月21日金融政策決定会合(FOMC)の結果発表。8月26日「ジャクソンホール会議」では、パウエル議長をはじめFOMCメンバーより一層のタカ派発言が連発。
市場は9月0.75%利上げを織り込むが、一方で「データ次第」というワードも繰り返され政策に自由度を残すだけに、9月13日消費者物価指数(CPI)、9月16日ミシガン大消費者信頼感(1年・5年のインフレ期待値)、9月30日個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)、その他、住宅関連指標などの動きには注意。7月分に続きインフレ鎮静化を示す内容となれば、利上げ幅のコンセンサスが下方修正され、特にグロース株が多いNASDAQの急反発が想定される。
「ジャクソンホール」でのパウエル議長講演に政策への新たなアプローチはなかったが、物価抑制へ「消費者や企業へ痛み」を厭わない、旨の発言。同じく、地区連銀総裁からは、金利引き上げ目標(ターミナルレート)について4%水準、引き上げ後はその浸透へ「長期間」高い水準を維持、などタカ派発言が相次ぎ、以降、9月2日までに米国債利回りが10年債で3.0%から3.2%台へ上昇、米株指数はS&P500が-6.5%など大幅安となり、市場は過度な引き締め策による企業業績悪化など景気失速への警戒を強める。
一方で、8月ISM製造業(9月1日)の「支払い価格指数」は、6月78.5から8月52.5へ急低下し原材料価格の低下、8月雇用統計(9月2日)では失業率が3.7%と0.2%上昇、と、FRBの引き締め策浸透がみえた。今後の「データ次第」だが、8月CPI(9月13日)などが一段の物価鎮静化を示せば、利上げ幅縮小の観測が浮上し株価動向が急反転する可能性はある。
10月上旬の予想レンジは、①NYダウ:35,000ドル、②S&P500:4,600ポイント、③NASDAQ:14,600ポイント、④日経平均:30,600円、⑤ドル円:152.20円、の各水準。①~③は、前号・前々号と同じ3月29日高値水準を目標とし、年初来の下降トレンド終焉を確認したい。④は2021年9月高値水準。⑤は、5月24日安値127円→7月14日高値139円のE計算値(一目均衡表より)。
前述「ISM製造業」「雇用統計」に続き、9月6日発表の8月ISM非製造業でも「総合」が前月比+0.2pの56.9p(+0.2)と7月56.7、6月55.3からの回復を鮮明にする一方で、「仕入れ価格指数」が、71.5(-0.8)と、依然、高水準ながら7月72.3、6月80.1から低下傾向を示した。市場は「総合」の強さからFRBのタカ派姿勢が強まるとして米債売り(利回り上昇)、そして株売りで反応。しかし、物価鎮静化を目指すFRBの政策浸透の顕在化から、様子見をやや含めて利上げ幅を0.75→0.50%へ縮小する可能性はあり、その場合の株価急反発には備えたい。
ドル円は、日本時間の9月7日、8月ISM非製造業の結果を受けた米債利回り上昇(2年と30年が年初来の利回り高値6月14日を更新)により、前日142.80円から144.70円水準へ急伸し、1998年8月14日:146.38円へ一気に近づいた。147円を上抜けた場合、150円は心理的なフシだが歴史的な滞在期間は短く、160円(1990年4~6月期)を目指す展開を想定。米利上げ継続による日米金利差拡大、そして、7月の貿易赤字が1.4兆円、12か月連続の赤字で2022年1~6月期国際収支は前年同期比63%減など構造的な実需の円売り材料にも変化はなく、当面、双方によりボラタイルな値動きを続け、一段の上値に居所を探す展開を想定する。
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