マーケットのミカタ 10月の株式市場見通し
2022.09.22 (木)
10月の株式市場見通し
8月のアメリカのCPIは市場予想を上回る
9月13日に、8月のアメリカのCPI(消費者物価指数)が発表されました。まずは総合CPIと、食料・エネルギーを除くコアCPIの推移をグラフで見てみましょう。
グラフを見ると、総合CPIとコアCPIともに市場予想を上回っており、特にコアCPIは前年比でみた伸びが前月より大きくなっていることが分かります。
コアCPIが予想を上回った主な要因として、コアCPIの約3分の1を占める住居費が大きく上昇したことなどが挙げられます。住居費は一度上昇すると下落しにくい側面があり、市場ではインフレの高止まりが長期化する懸念が高まりました。
アメリカ株式市場は上値の重い状況が続く可能性
株式が割安か割高かを測る指標の1つに、イールドスプレッドがあります。イールドスプレッドは、長期国債の利回りから株式益利回りを引くことで求められ、株式の割安感・割高感を債券の金利と比較して相対的に判断できる指標です。まずは、日米のイールドスプレッド(注1)の推移をグラフで見てみましょう。
(注1)アメリカのイールドスプレッドは「米国債10年金利-S&P500指数益利回り」で算出し、日本のイールドスプレッドは「日本国債10年金利-TOPIX益利回り」で算出しています。
グラフを見ると、アメリカのイールドスプレッドは足元では割高な状況が続いていることが分かります。債権と比較したアメリカ株式の割高感が解消されるためには、企業業績が拡大するか、米国長期金利が大きく低下するか、株式市場が大きく下落するかのいずれかが必要です。
世界的な景気悪化に伴うアメリカの企業業績の悪化が懸念されていることや、FRBの金融引締め長期化により米国債金利が高止まりする可能性があることを考慮すると、アメリカ株式市場は上値が重い状況が継続する可能性があります。
一方、日本のイールドスプレッドは比較的割安な水準にあり、また企業業績の回復から更に割安感が強まる可能性があります。
割安感の顕在化から、10月以降に日本株は再評価される可能性があります。
円安は一服し、内需株優位の展開になる可能性
最後に、足元で急速に進んでいる円安について考えていきます。
まずは、アメリカの政策金利見通しのグラフを見てみましょう。
市場では、アメリカの政策金利は2023年3月にピークを付けて、その後、緩やかに低下していくことが予想されています。また、利上げのピークが近づいてきていることから、今後の政策金利の見通しに対する不透明感は徐々に緩和される可能性があります。
日米金利差はこれ以上広がりにくい点を考慮すると、足元の急激な円安は一時的に一服する可能性があります。
円安が一服した場合、ハイテク企業などの輸出型製造業の株価は上値が重くなり、インバウンド関連などの内需関連企業の株価が堅調に推移する可能性が高まるとみています。
- 当記事は、アイザワ証券のラップサービスの一つ「スーパーブルーラップ」のファンドマネージャーである三井郁男が作成したレポートを、添田恭平が再構成したものです。
- 「スーパーブルーラップ」の詳細はこちらから
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