マーケットのミカタ 半値戻しの達成と、FOMCの政策金利予測
2022.08.25 (木)
半値戻しの達成と、FOMCの政策金利予測
アメリカの株式市場は6月の安値から半値戻しを達成したが、やや過熱気味か
アメリカのS&P500指数は8月12日、1月3日の高値から6月16日の安値までの下落幅の50%を戻す「半値戻し」を達成しました。まずは、アメリカのS&P500指数のグラフを見てみましょう。
グラフを見ると、S&P500指数は6月中旬に底打ちしてから、急激な上昇ペースで半値戻しを達成しています。景気減速懸念や企業業績に強弱が入り混じり、先行きが不透明な状況が続く中で、株価は極めて堅調に推移しています。
足元の株価上昇から、株式市場では楽観的な考え(インフレが落ち着き、金融政策が緩和され、景気も堅調に推移するという考え)が広まっていることが考えられます。
FOMCメンバーと市場では、政策金利の見通しが異なっている
足元の株価は堅調に推移している一方で、FOMC(注1)のメンバーと投資家の間で、今後の政策金利の見通しに差が生じています。まずはFOMCメンバーと市場の政策金利予測を示したグラフを見てみましょう。
グラフについて、黄色の点はFOMCの各メンバーの、各期間における政策金利予測を示しています。緑の線はFOMCメンバーのそれぞれの予測の中央値を結んだ線です。赤い線はFF金利先物(注2)を示しています。
緑の線(FOMCメンバーの予測中央値)を見ると、2023年末までは利上げが続き、2024年から利下げに転じるのが適切と考えていることが分かります。一方、赤い線(FF金利先物)を見ると、2023年から利下げが実施されると予測していることが分かります。
このことから、市場ではFOMCメンバーの予測より早く利下げに転じると予想しており、現在の株式市場はやや楽観的になっていると判断できそうです。
(注1)連邦公開市場委員会の略称で、アメリカの金融政策を決定する委員会
(注2)米政策金利の将来水準を想定して取引される先物商品で、将来の政策金利の市場予想を表す指標
政策金利の市場予想が修正され、株価の下落に繋がる可能性に注意
FOMCメンバーと市場の間で、政策金利の見通しに差が生じていることから、この差が修正される可能性があることに注意が必要です。市場の楽観的な予想が修正された場合、株式市場は短期的に調整する可能性があります。
またそうなると、為替市場では日米金利差の拡大期待が再度高まり、円安が進行しそうです。株式市場においては、金利上昇に伴いグロース株を中心に下落する可能性があります。
投資判断としては、個別企業の業績を吟味する重要性が増す局面が訪れたといえるでしょう。
- 当記事は、アイザワ証券のラップサービスの一つ「スーパーブルーラップ」のファンドマネージャーである三井郁男が作成したレポートを、添田恭平が再構成したものです。
- 「スーパーブルーラップ」の詳細はこちらから
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