マーケットのミカタ 日銀の金融政策正常化の思惑は続く
2023.02.03 (金)
日銀の金融政策正常化の思惑は続く
アメリカ経済は徐々に減速へ
1月18日、アメリカの12月の小売売上高と鉱工業生産指数が発表されました。まずはそれぞれの推移を見てみましょう。
グラフからこれまで堅調に伸び続けていた小売売上高は徐々に減少してきていることが分かります。また、鉱工業生産指数と設備稼働率も足元で低下してきており、国内外の需要減少から企業活動が軟化しはじめていることが示唆されます。
FRB(アメリカの中央銀行)が景気を減速させてインフレを抑えるために実施している金融引き締めの効果が、実体経済に徐々に表れてきたといえるでしょう。
日銀の経済見通しは海外経済減速から若干の下方修正
1月17日と18日に開催された日銀金融政策決定会合で、金融緩和政策の維持と日銀による物価と経済の見通しが発表されました。まずは物価と経済の見通しを見てみましょう
実質GDP成長率の見通しについて、2023年度は政府の経済対策があるものの海外経済の減速から下方修正しており、2024年度も経済対策の反動減を見込んで下方修正しています。
また物価見通しについて、2023年度は企業の価格転嫁がさらに進むが政府の経済対策により電気代やガス代が補助されることで物価上昇は減速し、2024年度は経済対策の反動から若干の上振れを見込んでいます。
日本の12月の消費者物価指数は前年同月比で4%にまで上昇していますが、2023年度以降は政府や日銀が目標とする2%の物価上昇を下回ると日銀はみています。
また日銀は、2%の物価上昇を安定的に持続するために必要な時点まで金融緩和政策を続けることを掲げており、今回の会見でも黒田総裁は金融緩和政策の修正を強く否定しています。金融政策の正常化は4月8日に任期満了を迎える黒田総裁の後任が実施することになりそうで、次期総裁が誰になるか注目が集まっています。
日銀の金融政策正常化の思惑は続く
最後に、現在次期総裁候補として名前が挙がっている3名について見てみましょう。
雨宮氏と中曾氏は黒田総裁の考えに近いと言われており、両氏が新総裁となった場合は賃金上昇率が2%の物価上昇目標と整合的な水準になるまで金融緩和政策を維持する可能性があります。
一方で山口氏は白川元総裁の考えに近いと言われており、同氏が新総裁となった場合は就任後早期にイールドカーブ・コントロールが解除される可能性があります。
また、誰が新総裁になった場合でも、マイナス金利政策とETF購入については早期に終了されるとみています。
いずれにしても日銀の金融政策正常化の思惑は続き、銀行セクターに追い風が吹く状況は当面継続すると予想しています。
- 当記事は、アイザワ証券のラップサービスの一つ「スーパーブルーラップ」のファンドマネージャーである三井郁男が作成したレポートを、添田恭平が再構成したものです。
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