ゼロから学べるアイザワ投資大学

会員登録(無料)

記事検索

マーケット

投資のコンシェルジュ 第20回 「2024年、ベトナム経済は再起動へ」ベトナム株価指数の3月の見通し

2024.02.29 (木)

アイザワ証券 事業推進部

河西 幸弘

投資のコンシェルジュ 第20回 「2024年、ベトナム経済は再起動へ」ベトナム株価指数の3月の見通し

2024年3月20日頃のベトナム株価(VN)指数の予想レンジ

VN指数:1,250ポイント
⇒予想EPS(1株当たり純利益):2,046.48の20倍

2023年9月6日・9月12日の高値:1,245ポイント超の水準を想定。

2024年内に史上最高値2022年1月6日の1,528ポイント更新を予想しています。

2022年~2024年2月のVN指数動向

ベトナムは、通貨ドンを米ドルに連動(ペッグ)させているため(1$=24,594VND2024223日時点)、米金利変動の影響を受け易い特徴があります。

2022年は大手不動産会社の不正と不況、そして米国の急激な政策金利の引き上げ(利上げ)等で、1月4日の高値1,525ポイントから1115日の安値911ポイントまで40%の大幅下落となりました。米中の景気減速によりGDP9割に相当する輸出額の減少も株価の下げに追い打ちをかけました。

2023年に入り、7月の米国の利上げ打ち止めと株価上昇の追い風、輸出額減少の底打ち等により、年初の1,007ポイントから96日の高値1,245ポイントまで24%上昇しました。その後、米金利の再上昇で1031日の安値1,028ポイントへ17%下落。そこから、12月の米利下げ観測の急浮上やベトナム政府の景気対策(4回に渡る利下げ、付加価値税引下げ、不動産業界などの社債満期の延長容認など)が奏功し、年末には1,129ポイントへ10%上昇しました。

2024年は昨年来の流れと米株指数の史上最高値更新の追い風もあり、年初から上昇基調で、220日には高値の1,230ポイントへ9%上昇。足元では1,212ポイントとなっており、202389月に挑戦した高値1,245ポイント水準の上抜けを伺う水準に到達しています。

2024年3月20日頃までの市場の焦点

①2月の消費者物価指数が政府目標(4.5%)以下となり、利下げ余地を醸し出すか?

3月19日~20日の米FOMCで「利下げ時期」が明示されるか等によって、新興国各国の株式市場への影響は大きくなるでしょう。一方で、ベトナム国家銀行(中央銀行)は、20233月から6月の4回に渡る利下げの中で、主要政策金利のリファイナンスレート(銀行向けの有担保貸出)を「6%→4.5%」としました。1月のインフレ率(1月29日発表)は前年同月比+3.37%となり、政府インフレ目標の4.5%を十分に下回る結果となっています。2月のインフレ率でも落ち着きが確認されれば、再利下げが意識されやすくなるでしょう。

また、預金金利が2022年末10%水準から2023年末4%水準へ低下したことにより、ベトナム株式市場で売買の8割を占める個人投資家は、低下していた株式への投資意欲を再び高めている模様です。20241月の新規証券口座数は12.5万件と202312月の3.9万件の3倍強となっており、20239月以来の10万件越えとなっています。2023年通年の新規証券口座数39.1万件と比較しても大きな口座開設件数となっており、追加利下げの観測が強まると増加が加速し、VN指数の押し上げ要因となりそうです。

②2024年3月末へ、ベトナム企業の業績回復への期待が高まるか?

欧米の景気抑制的な金融引き締め(利上げ)が終焉、ベトナム経済の主力である輸出回復が期待できる環境下となり、企業業績上振れによる株高のシナリオが描けるか?

2023年のベトナムの実質GDP成長率(前年同期比)は、通年では政府目標の6.5%に届かない5.05%に留まりますが、四半期では、「1Q:+3.41%」→「2Q:+4.25%」→「3Q:5.47%」→「4Q:+6.72%」と時を追う毎に加速しています。さらに、この成長の柱は「輸出」ではなく、「内需」(消費と設備投資が成長率への寄与97%)であることには驚きを覚えます。「内需成長」政策が奏功しています。

そのため、2023年に個人所得の減少等で苦しんだ小売業界の業績反転に期待しています。2024年、全業種平均の利益成長率16.8%に対し、小売業界は赤字から黒字への転換企業もあり、118%の大幅増益が予想されています。2024年1月のベトナムへの外国人訪問者数は前年同期比+73.6%の151.2万人となっており、日本と同じくインバウンド需要が強い味方となっています。

また、2022年に大不況に苦しんだ不動産業界にも復活の兆しがあります。最大手ノバランドは、20234Q純利益の前年同期比伸び率が過去3年で最高の13倍(1.6兆ドン/約96億円)など、各社は政府の債務支援策等で浮上のきっかけをつかんでいます。その他、主力の製造業は、1月鉱工業生産指数で+19.3%(全体は+18.3%)と、米利上げ前の2022年上旬の水準へ回復しています。電子部品や家電は、+20%前後と好調な回復をみせ、未だ回復途上のPC・電子・光学機器(スマホなど)は+5.6%と低いですが、最重要輸出国の米国が利下げ=消費増となれば、2024年中旬以降の「のびしろ」とも言えそうです。

以上の①②の視点より、VN指数は2024年3月末へ向けては2023年来の高値更新となる1,250ポイント水準を目指し、米国の利下げ開始が期待できる79月以降に上げ足を加速、年内に史上最高値1,528ポイント(VN指数の2024年末予想1株利益112.21ポイントに対しPER13.6倍)までの上昇を予想します。

ご留意事項

金融商品等の取引に関するリスクおよび留意点等

お客様にご負担いただく手数料について

免責事項
本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。

ライター

河西 幸弘

アイザワ証券 事業推進部

河西 幸弘

国内大手の証券・保険会社において、リテール、事業法人、機関投資家等への金融商品の営業を、大手運用会社では15年に渡りRM(リレーション・マネジメント)等を経験。その間、証券アナリスト(CMA)、日本FP協会(CFP)、1級FP技能士等の資格を取得。そして、2021年4月、アイザワ証券入社。事業推進部において投資信託や債券等のストラテジックな商品提案を推進する一方、難解な金融市場の「分かりやすい」解説に挑む。

合わせて読みたい

このカテゴリの他の記事

マーケット マーケットのミカタ 日本株は上値が重い状況が続くか

マーケットのミカタ 日本株は上値が重い状況が続くか

2023.03.01 (水)

マーケット 投資のコンシェルジュ 第15回 2023年の日米株式市場とドル円の行方(前編)

投資のコンシェルジュ 第15回 2023年の日米株式市場とドル円の行方(前編)

2023.01.16 (月)

マーケット 投資のコンシェルジュ 第9回 日米株価&ドル円市場の行方

投資のコンシェルジュ 第9回 日米株価&ドル円市場の行方

2022.07.20 (水)

マーケット 投資のコンシェルジュ 第7回 S&P500/日経平均/ドル円市場の見通し(番外編)

投資のコンシェルジュ 第7回 S&P500/日経平均/ドル円市場の見通し(番外編)

2022.05.16 (月)

人気記事

アイザワ証券公式SNSアカウント