投資のコンシェルジュ 第5回 ドル円市場の見通し(番外編)
2022.03.16 (水)
ドル円市場の見通し《2022年3月上旬~4月上旬》
(日本2022年3月11日現在:117.28円)
4月上旬へ向けて、ドル円は2016年12月高値118.66円を目指す動きを予想。日米金利差拡大に加え、原油など資源高騰による貿易など国際収支赤字が実需の円売りに作用。その先には、日本のインフレが通貨安へのしかかる展開を想定。政府・日銀の言及有無はあるが、地政学的リスクの高まりもあり、心理的な120円のフシは通過点とみる。
3月11日の海外市場では、米金融政策決定会合(FOMC、3月15日から16日)での政策金利引き上げを前に、ドル円は22年1月4日及び2月10日の2回、ほぼ同値の高値116.30円水準をあっさりと上回り、一気に117円台へ上昇。一方でのゼロ金利継続を強調する日米の金利差拡大はあるが、投機筋など市場は既に織り込みのはずで、他要因の作用と考えることが妥当。
大きな要因として、実需の円売りとなる日本の国際収支赤字が考えられる。財務省による1月国際収支統計(3/8発表)では、海外とのモノ・サービスなど取引状況を表す経常収支は1.2兆円と2ヶ月連続の赤字で、2014年1月1.45兆円に次ぐ2番目に大きな金額。原油輸入額が前年同期比+86%など資源価格上昇が主因だが、小麦など食品価格上昇も追い打ち。国際収支赤字は実際に円を売り、ドルを買って海外へ支払う為、実需の円売り要因としてドル円を押し上げる。
その他、本シリーズ「第1回」でご報告の通り、日本のデフレ終焉(=通貨高要因)、そしてインフレへの転換(=通貨安要因)を市場は長期の構造的な円安要因と捉える時期に入った可能性。さらなる円安要因として、ロシア、中国と国境を接する日本の「地政学的リスク」の高まりが急浮上。実際、3月11日には「千島列島でロシアがロケット発射」の一報でドル円は前述の本年2度の高値を上抜けた格好だ。
米2月消費者物価指数(CPI)は7.9%(市場予想通り)と1月7.5%から続伸、3月CPIは一段の資源高から伸張は予想されるが、現状のそれら物価高は金融政策の問題ではなく、FRB・パウエル議長は3月上旬の議会証言でその認識を明言し市場の信頼を得ており、ドルへの信頼は厚い。これまで米国側要因がドル円相場では材料視されてきたが、今後は日本側要因を注視する必要がある。
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