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かぶかはふしぎでうごいてる??? 第24回 企業分析 価格効果と数量効果(前編)

2023.12.13 (水)

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

かぶかはふしぎでうごいてる??? 第24回 企業分析 価格効果と数量効果(前編)

今回は企業利益を考えるためのツールとして、価格効果と数量効果について記述してみます。

会社の利益の増減は〇〇%増益とか、◇◇%減益などと伝えられることが多いです。この利益の変化率で株価が動くとするとしたら、この背景にあることを知っておくことは有益です。

同じように売上高が増えても増益率は異なります。利益の増減要因は複雑で簡単に分析できるものではありませんが、基本的な要因を知っておくと企業の利益について理解が深まるのではないかと考えています。

1.価格効果

販売価格の変動が利益に与える影響を「価格効果」と呼びます。これを考える時には1品単価で考えると理解しやすいです。以下の例は単純化して考えるためにそれぞれ商品の種類が1つしかなく、商品を1つしか売らない企業と仮定して考えます。

<考察1>

どちらの会社も一品当たりの利益が10円増加しましたが、増益率でみると、A社は33.3%増益(40÷30-1)、B社は14.3%増益(80÷70-1)。A社はB社よりインパクトがあります。

しかし、A社の売上高利益率は30%(30÷100)、B社の売上高利益率は70%70÷100)だったので、B社の方が高収益企業です。値上げによる効果は低収益企業の方が大きいという所が利益変化率に対して注意する点の一つです。

<考察2>

逆に価格が1割値下がりしたケースを考えてみます。

A社の一品当たり利益は20円に減少し、B社の一品当たり利益は60円に減少します。

減益率でみるとA社は33.3%減益、B社は14.3%減益でA社の方の減益インパクトが強い結果となります。

<考察3>

前述したことを別の視点で考えてみます。インフレが生じて販売価格が上がりだすと、高収益な優良企業よりも、収益力の低い企業の方が利益の変化率が高くなります。

インフレが継続する期間、原価の上昇の影響、販売数量の先行きなどの他の要因は考えなければなりません。しかし、極めて単純に考えると、短期的には利益の変化率に着目した場合、収益力の低い企業の方が有望に見えるケースが出てきます。

しかも、低収益企業の中には投資指標が低い会社も多く、短期的には好業績・割安銘柄として評価される局面も想定されます。

この結果から考えられることは、A社は販売価格の変化に対する利益の変動率が高く、B社は変動率が低いと考えられます。

言葉を変えると、販売価格の変化に対するリスクがA社は高く、B社は低いとも言えます。すると、PERのような利益額に対する倍率を示す投資指標はリスクの高いA社には高い評価をしにくく、逆にB社には高い評価をしやすくなるとも考えられます。

一般的には高いPERの企業はROEが高い、高収益企業などが多いと言われますが、利益のリスク(変動率)が低いからとも考えられます。安定成長企業(利益が着実に増加基調になりがち)な企業のPERが高く評価されるのも、このような事が背景にあると考えられます。

2.数量効果

販売数量の変動が利益に与える影響を「数量効果」と呼びます。以下の例は単純化して考えるために商品の種類が1つしかなく、販売価格・原価が固定されている企業と仮定して考えます。

<考察4>

この例での販売数量の増加は、景気が凄く良くなり需要が増加した状況を想定しないと実現性がありません。

通常は、販売数量を増やすためには、製品の改良(研究開発費の増加)、マーケティング費用の増加(CMなどの増加)などが必要になります。これは利益の圧迫要因なので、例であげた様な単純な利益増は期待しにくくなることには注意が必要です。

<考察5>

次は工場の稼働率に着目してみます。高収益な企業は稼働率が高いことが多いです。低収益な企業は稼働率が低く、そのため利益が出にくい状況になっています。

しかし、数量が増加するときには稼働率100%の高収益企業だと設備の増強や深夜稼働(労務費などの増加)などの増産に伴う追加費用が発生するのに対して、稼働率が50%の低収益企業であれば増産に伴う追加費用は低くなります。おそらく、同じ数量増でも低収益企業の方が利益の増加率は高くなると思われます。

これは、価格効果の<考察3>と同じような結論となります。低収益企業の方が増益率の高く見える局面が生じるということです。

執筆後記

株式市場では割安株(バリュー株)の人気が高まることがあります。しかし、よく考えると投資指標の低い銘柄が存在していることに気が付いていない投資家はそれほど多くないと思います。

景気が回復して行くときやインフレが生じて来た時などが、そのような環境と思われます。ただ、その経済環境がどの程度継続されるかを推測することが難しいところはネックになります。また、この視点は短期的な利益増を考えているため、長期的な視点とは少し異なるところがあります。

次回は価格効果と数量効果の両方を考えてみます。解りやすい例も考えておくので、今回に懲りずにまた読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、よろしくお願いします。

(お願い)当文章はアイザワ証券投資顧問部一社員が株式市場における一般的な事象について個人的な見解に基づいた解説を行ったものであり、同部門が提供しているサービスの運用方針とは関係ありません。

ライター

吉田 大路

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

2015年アイザワ証券入社。現在は投資顧問部運用課に所属。当社入社以前は証券系投資信託、生保系投資顧問、信託銀行などで約30年間、資産運用業務を行ってきた。基本的にブログやSNSはやらないので、今回の業務に伴う書き込みが初めての体験。

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