以新伝心 ゲーム会社の新戦略「プレイアブル広告」
2024.02.19 (月)
ゲーム会社の新戦略「プレイアブル広告」
現在スマートフォン向けゲームアプリの競争が激しくなっている。英経済紙のフィナンシャル・タイムズによると、昨年12月下旬にトルコのスタートアップ企業である「ドリーム・ゲームズ(DreamGames)」が開発・運営する「ロイヤルマッチ(RoyalMatch)」がマイクロソフト(MSFT)傘下の「キャンディー・クラッシュ・セガ(CandyCrushSaga)」を抜いて、パズルゲームの収益世界トップに初めて躍り出た。
「ロイヤルマッチ」は2020年7月リリース、日本には2021年2月からサービスを開始しており、リリース後わずか6か月で全世界の総売上高1億ドルを突破し、2023年1月時点で累計ダウンロード数は7000万を超える最も勢いのあるゲームの1つだ。これは上下左右に3つのコマを揃えていく「クラシックマッチ3スタイル」と呼ばれるパズルゲームであり、ゲームを通して報酬・アイテムを入手し、王様の城をリフォームしていくという非常にシンプルなものである。また定期的に行われる時限式のイベントや、やめどきがわからなくなるステージ構成によって、ユーザーが継続的にプレイしやすくなる仕組みを作っている。こうした点も人気の理由に挙げられるが、このゲームが他のパズルゲームと比べて、ここまで成長できたカギは「広告」にあると筆者は考える。
近年、様々なタイプの広告を目にする機会が増えている中で、モバイルゲームの体験プレイができる「プレイアブル広告」が注目を集めている。冒頭部分でゲーム紹介の短い動画が流れ、その後広告をタップするとゲームが体験できる。体験後は、AppStoreやGooglePlayストアからアプリをインストールできる仕組みとなっている。「ロイヤルマッチ」もこのプレイアブル広告を使って、ユーザー数を着実に伸ばしている。実際、筆者も普段使用しているアプリの広告で同ゲームを体験したことがある。直接アプリを体験してもらうことで、より直感的に興味関心を引き出してユーザー獲得につなげていくわけだ。これは、スマートフォンが普及している現代だからこそ可能となった広告であり、ゲーム会社だけでなく、大手IT関連企業も恩恵を受けている。
市場情報会社のMordorIntelligenceによると、モバイルゲーム市場規模は2024年に約1000億ドルと推定され、2029年までに1600億ドル以上に達し、その間年平均10%以上のペースで成長する見通しだ。各ゲーム会社はより多くのユーザーと市場シェアを獲得するために、多額の予算を広告・マーケティング費に投じている。実際、メタ・プラットフォームズ(META)やアルファベット(GOOGL)といった大手IT企業の広告需要は回復しており、今後も主力のネット広告に注力する姿勢を見せている。ユーザーがゲームアプリに夢中になれば、広告以外にアプリ内の課金などの収益にもつながるため、まさにゲーム会社と大手IT企業はwin-winの関係が築けている状態なのだ。世界各国でモバイルゲームの競争が激化している中、「プレイアブル広告」でどのようなビジネスチャンスが生まれるのか、今後も目が離せない。
※「以新伝心」は、新しい出来事に着目し、心に伝えることをコンセプトにしたコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。
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