株価の動向を測るチャートの見方【後編】
2021.10.04 (月)
前回の講義では、チャートとはどういうものかについてと、ローソク足について解説しましたが、今回はチャートの重要な要素である「移動平均線」について解説していきます。
移動平均線の見方
さて、前回の講義で示したチャートに線が入っているのに気づきましたか?
この緑の線は「移動平均線」といいます。しばしばチャートに入っており、よくわからない上に、漢字5文字のいかめしい名前に「とっつきにくさ」を感じてしまう人もいるかもしれません。しかしものすごく単純で、チャート分析をする際に重要な判断材料と重宝されます。
まず「移動平均線」とは名前のとおりに移動した平均をつないだ線です。一般的にチャートには「5日移動平均線」と「25日移動平均線」が入っていることが多いようです。以下の計算式で算出された数値を線でつないで描かれます。
<計算式>
5日移動平均線=過去5日の終値÷5日
25日移動平均線=過去25日の終値÷25日
5日移動平均線は投資家の過去1週間の平均の買値を表し、25日移動平均線は過去1か月間の平均の買値を表しています。
また、同じように、
75日移動平均線=過去3か月間の投資家の買いコスト
13週移動平均線=過去3か月間の投資家の買いコスト
26週移動平均線=過去半年間の投資家の買いコスト
12か月移動平均線=過去1年間の投資家の買いコスト
24か月移動平均線=過去2年間の投資家の買いコスト
を表しています。これを連続して計算していき、つなげたものが、緑の線のようになるわけです。
ここまでで、移動平均線がそれぞれの投資家の買いコストであるということがわかりましたね。そうすると、次のようなこともわかります。
移動平均線より株価が上にあるときは、「買った値段よりも値上がりしている」と感じる投資家が多いということ。移動平均線より株価が下にあるときは、「買った値段よりも値下がりしている」と思う投資家が多いということ。
つまり今の株価が移動平均線よりも上にあるか下にあるかで、投資家の気持ちは全然違うということがわかります。
当然、移動平均線より今の株価が上にあると買い意欲は強くなりますし、下にあると売り意欲が強くなります。
特に注目すべきは下図のような赤い丸の部分です。
ここで投資家の心理が「がっかりした/損してる」から「やったぜ/儲けが出始めた!」に180度変わったことがわかります。
このような状況を、
「(上に)ブレイクした」「○○日移動平均線を突破した!」=買い
「(下に)ブレイクした」「○○日移動平均線を下回った」=売り
といいます。
さて、ここまで移動平均線の説明をしてきましたが、ポイントは、
・移動平均線はその期間の投資家の買いコストを表している
・移動平均線に対して、今の株価が上にあるか下にあるかで投資家の気持ちが全然ちがう
・移動平均線より上にあると買い意欲が強まり、下にあると売り意欲が強まる
この様に移動平均線の見方を知っていると、売買の判断材料として、株価が安いのか高いのか、また需給状況もわかりやすくなります。
「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」
前段で、移動平均線について解説してきましたが、移動平均線で短期線が中・長期線に交差すること(例えば、5日移動平均線と25日平均線が交わること)を、トレンド転向のシグナルとして利用されることがあります。買いと売りのシグナルとなり、それぞれ「ゴールデンクロス」「デッドクロス」と呼ばれます。
まず、ゴールデンクロスとは、長期の移動平均線を、短期の移動平均線が下から上に突き抜けたとき(交差したとき)をいい、これから相場が上昇するかもしれないという買いサインの一つになります。ただし、確実に上昇するとは言えないため、株価や他の材料と組み合わせて判断することが大切です。
また、逆に長期の移動平均線を、短期の移動線が上から下に突き抜けたとき(交差したとき)を、デッドクロスと呼びます。 これから相場が下落するかもしれないという売りサインの一つとして、相場の方向性の手掛かりになるものと考えられています。
ただし、株価がボックス圏内(箱の中に入ってしまったかのように、高値と安値が一定の範囲内を行き来している状態)で推移している場合、「ゴールデンクロス」「デッドクロス」は売買サインが本来とは逆になりやすいため注意しましょう。
ゴールデンクロスもデットクロスも株価が転じるサインとして、多くの投資家が売買タイミングを図る際の参考にしています。今まで見えなかった一手先の株価の動きも予想がしやすくなるので、ぜひチャート分析をするときに参考にしてみてください。
ここまで代表的なチャート分析手法を解説してきました。しかし、分析手法はたくさんあります。相場の状況や銘柄によって相性のよい分析手法が異なります。そのため、その時の状況に合った分析手法を探すことも大切です。次回の講義では、有名なチャート分析についていくつか紹介していきます。
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