外国市場ガイド:ベトナム編
2021.12.24 (金)
「ポストチャイナ」の最有力国に?
長期化する米中貿易戦争がベトナムに特需をもたらしています。
もともとベトナムは、現地マーケットの成長性や若くて安価かつ優秀な人材の存在などを理由に、有望な事業展開先として注目されてきました。さらに、ハノイから国境都市まで150キロ足らずと近い隣国中国では、ここ数年、人件費上昇を背景にグローバル企業による生産拠点の移転を模索する動きがありました。そのような中、米中貿易戦争の激化は、世界的なサプライチェーンに組み込まれた中国企業によるベトナムへの工場移転をも加速させており、ベトナムは「ポストチャイナ」の有力国として存在感を高めています。
ベトナム政府も海外マネーを呼び込むために、2019年にはCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)、2020年にはEVFTA(EUベトナム自由貿易協定)、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)など、大型協定を相次いで合意・発効し、貿易の自由化を促進しています。いずれも価格競争力などの面から、加盟国の中でベトナムが恩恵を受けるのではないかと期待されています。このように、しばらく外国からのFDI(海外直接投資)がベトナムの経済成長を牽引していくでしょう。
教育を重んじる国の方針
ベトナムは東南アジアのインドシナ半島東部に位置する社会主義共和制国家で、その国土はインドシナ半島の東海岸を占めています。ベトナムでは自動車に高い税金が課されたり、鉄道網が整備されていないので、多数の人は移動手段にバイクを利用します。特に通勤、通学のラッシュの時間帯は渋滞がひどく、道がバイクで埋まる光景は観光客にとっても名物になっています。
また、ベトナムは学歴社会の国で、大学進学率は20%前後と高くはないものの、近年ベトナムが急成長を遂げているため、学歴の重要度が高まっています。大学卒業=キャリアとなり、複数の大学を卒業している人もいます。交際相手を選ぶ際や就職においてもその影響力は決して小さくありません。
ベトナム株式市場について
ベトナムの上場証券取引所として、ホーチミン証券取引所とハノイ証券取引所があります。上場基準の関係から、ホーチミンには大企業、ハノイには中小企業が多く上場しています。したがって、上場銘柄数はほぼ同じですが、時価総額には大きな差があります。このような傾向から、私たちがベトナム株投資を行う際も、ホーチミンで取引を行うケースがほとんどです。
そのほか、ハノイには未上場株式を相対取引するUPCoM(アップコム)が併設されています。近年、国有企業の民営化政策に伴い、ホーチミンへ上場する前段階として、UPCoMに登録する大企業も増えています。
ベトナムは証券市場の効率性向上を目的として、両証券取引所を1つに統合することを目標に掲げています。株式取引をホーチミンに集約し、ハノイは債券とデリバティブ(金融派生商品)取引を行う市場へと再編していく方針です。日本でも2013年に東京証券取引所と大阪証券取引所の現物取引(決済時に株券と現金の受け渡しが行われる通常の取引)の統合が行われましたが、将来的にホーチミンは現在の東証、ハノイは大証のような役割を担っていくと思われます。
主要株価指数と為替相場の推移
代表的な上場銘柄
ベトナム株式市場を代表する企業の一つがビングループです。同社はベトナム最大の民間企業で、子会社を通じて不動産開発、ホテルリゾート、テーマパーク、自動車製造、学校運営、病院運営など幅広い事業を展開しています。同社の手掛ける事業は日々の消費の9割弱をカバーするともいわれており、ベトナム人の生活には欠かせない存在となっています。なお、時価総額トップのビンホームズはビングループの中核子会社でベトナム最大の住宅デベロッパーです。
一方で、ベトナムは国営企業の民営化・株式会社化が進められている段階であり、通信会社など未だ上場していない有力企業が多数あります。改革の進展とともに株式市場の拡大が見込まれます。
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