外国市場ガイド:インドネシア編
2021.12.24 (金)
首都移転構想に賭けるインドネシア
インドネシアはコロナ対策の苦慮してきた国の一つで、特にデルタ株が猛威を振るった2021年7月のピーク時には1日あたりの新規感染者が5万6,000人を超えるなど、アジアにおけるコロナ禍の中心地となりました。足元、感染者が大きく減少する中で、ジャカルタの緊急活動制限(PPKM)を緩和するなど、ポストコロナに向けて舵を切っています(2021年11月末時点)。
ポストコロナにおける経済回復の起爆剤として期待されるのが首都移転構想です。ジョコ・ウィドド大統領は2019年8月、独立100周年を迎える2045年までに首都をジャカルタから東カリマンタン州へ移転することを発表しました。
東カリマンタン州は、従来から石油や天然ガス、石炭などの天然資源が豊富な地域として知られています。近年は州都のサマリンダや港湾都市のバリクパパンを中心に都市開発も進められており、2021年8月には両都市間を結ぶカリマンタン島初の高速道路が全線開通しました。移転にかかる総投資額は466兆ルピア(約3兆6000億円)に上るとみられ、第1期ジョコ政権(2014~2019年)におけるジャカルタ地下鉄開業に匹敵する目玉のプロジェクトとして注目されています。
インドネシアの首都移転構想は、歴代政権でもたびたび浮上しては進まなかった経緯があります。政権2期目の折り返し地点を迎えたジョコ政権が、悲願の首都移転の実現へと前進できるのか今後の進捗が注目されます。
食文化と宗教の関わり
インドネシアは東南アジア南部に位置する共和制国家で、世界最多の島しょを抱える島国です。食の大国とも言われるインドネシアは、各島さまざまな民族による特有の香辛料を使った食事を楽しむことができます。日本でも見かける「ナシゴレン」もそのうちの一つです。
また、食に関連して、国民の大半が信仰するイスラム教では、豚肉を食すことが禁じられていることは有名です。豚由来、動物由来、乳化剤などの動物性にも注意が必要です。アルコールも禁じられていますが、戒律を実行する際の厳密さには個人差があり、料理での使用は可とする考えもあるようです。しかし、一般的に豚肉やアルコール類を製造・取扱う仕事にはよい印象を持たれていないため、これらに従事する企業は注意が必要です。
インドネシア株式市場について
インドネシアの証券取引所の歴史は比較的古く、植民地時代からあります。ただ、本格的に証券市場が展開されたのは1980年代に入ってからであり、証券取引所が民営化されたり、決済機関等が設立されたのも1990年代前半のことです。さらに2007年に、株式取引を扱うジャカルタ証券取引所と債券・先物取引を扱うスラバヤ証券取引所が合併し、現在のインドネシア証券取引所が発足しました。
現在、インドネシア証券取引所には754銘柄が上場しています。また、経済学では、株価は長期的に見るとその国の経済力に見合った水準に近づくという考え方がありますが、インドネシアの市場時価総額は8,088兆ルピアとGDP比52%にとどまっており、依然として成長余地は大きいと思われます。そのほか、代表的な株価指数には、インドネシア証券取引所に上場する全銘柄で構成されるジャカルタ総合指数と、特に流動性の高い優良株45銘柄で構成されるLQ45指数があります。
主要株価指数と為替相場の推移
代表的な上場銘柄
業種別でみると、金融と消費関連の時価総額の比率が高く、前者は全体の約35%、後者は約20%を占めています。
時価総額第2位のバンク・ラヤット・インドネシアは、モスク(イスラム教の礼拝堂)の資産管理を目的として設立されたインドネシアで最も古い銀行で、その後国有の商業銀行へ転換しました。現在は同国の4大銀行の一角であるとともに、マイクロファイナンス(低所得者層向けに小口で融資し企業等を支援する金融サービス)の世界大手でもあります。
そのほか、時価総額第5位のアストラ・インターナショナルは、ASEAN最大の自動車メーカーです。主力の自動車・二輪車事業のほか、重機、鉱業、農業(パーム農園など)、インフラ(高速道路の開発運営など)、不動産などの事業も手掛けています。自動車事業ではトヨタ、ダイハツ、いすゞ、二輪車事業ではホンダ、重機事業ではコマツ、日立建機などと提携するなど、日本企業とも関係の深い会社です。
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