投資のコンシェルジュ 第17回 日米株価&ドル円市場の行方《2023年4月》
2023.04.04 (火)
日米株価&ドル円市場の行方《2023年4月》
〔日本時間:2023年03月30日記事作成〕
2023年4月の焦点(地政学的な要素を除く)は、①3月上旬勃発の欧米金融ショック「シリコンバレーバンク(SVB)ショック」の行方、②4月中旬から始まる2023年第1Q米企業決算、③3月物価動向指数とそれをみて5月FOMCへ向けた主要メンバーの発言。そして、ドル円市場では、④新総裁就任後初の日銀政策決定会合(4/27~28)が注目される。
4月株式・ドル円の方向性は、①NYダウ:35,300ドル、②S&P500:4,300ポイント、③NASDAQ:13,100ポイント、④日経平均:29,200円、⑤ドル円:140.00円と、本誌・第16回(3月)と同様とし「SVBショック」の早期収束による上昇トレンド回復に期待。①は2022年3月高値、②③④は2022年8月高値を意識、⑤は再び200日移動平均(MA)137円水準への反転を予想。
《①「SVBショック」の行方》
短期収束を見込む。主要顧客基盤がテック系ベンチャーのSVB(3/10破綻)、仮想通貨業界のシルバーゲート・キャピタル(3/8事業清算)、同じくシグネチャー・バンク(3/12破綻)と一業種偏重の特異な事業形態を持つ中堅銀行のバンク・ラン(取付騒ぎ)に起因する金融ショックは欧州へ波及。クレディ・スイス(3/19、UBSが救済買収)、ドイツ銀(3/24株価急落に劣後債早期償還で対応)へ飛び火。
高インフレに上乗せのショック回避へ、米政府・FRBの対策は迅速。バンク・ランの連鎖回避へ、最長1年の資金供給策「銀行ターム資金供給プログラム(BTFP)」による預金全額保護を決定(3/12)。
一方、身構える欧州ではクレディの預金流出(3/13頃)へスイス中銀は500億スイスフラン(約7兆円)を貸与(3/16)し、UBSによる買収を仲介。ドイツ銀では異変当日にショルツ首相が「収益性が高く心配ない」とし、政策対応を匂わせる。いずれも、貨幣発行権を持つ政府・中銀の躊躇ない対応が連鎖阻止に奏功。
一方、3/22の米FOMCでは0.25%利上げ(FFレート5.0%)としたが、パウエル議長は会見で「利上げ停止の検討」を認め、利上げ最終局面を示唆。次回会合(5/3)に0.25%利上げして5.25%が最終到達着地点なら、ショック前の市場の同予想5.75%から2回の利下げ相当と2024年以降に予想された利下げが大幅な前倒しになる格好。金利に敏感なグロース株が多いNASDAQは上げ基調を強め「怪我の功名」。インフレ抑制へ株高に牽制的な発言を繰り返した当局も、今は株高の「慈雨」を許容とみる。
《②2023年第1Q米企業決算》
第2Q以降の業績見通し(ガイダンス)の方向性が焦点。3/30現在、各メディアではS&P500ベースの第1・第2Qまでは若干の減益(-7%前後)、第3Q以降は増益(+3%前後)、第4Q以降は二桁に届く増益を予想。「利下げ停止」見込みで各社が第2Q以降のガイダンスが予想を上ブレると、年末へ向けた増益を織り込む「レンジ切り上げ相場」になる可能性はある。
直近(3/29)、米マイクロンの第2Q(2月末)決算は市場予想を下回る売上となったが、第3Q(5月末)は予想通り。加えて今後のAI関連の需要伸張が伝えられ、翌日の株価は上昇。足元の市場は「売り」より「買い」材料を求める。2024年第1Qの二桁増益の確度を高めたい意向とみる。
《③米物価動向》
次第にインフレ率の低下基調が顕在化、「利上げ停止」を正当化する経済指標が増えるとみる。
まず、生産者物価指数(PPI)は2月に前年同月比で総合4.6%、コア4.4%とピークの2022年3月(11.7/9.7)から半減、総合がコア(食品・エネルギー除く)を下回り、製造業の物価沈静化は鮮明。同消費者物価の総合6.0%、コア5.5%をそれぞれ下回り、卸売り段階の値上げ浸透に一巡感。
一方で、個人消費支出(PCE)価格指数(実際の販売されたモノ・サービスの価格)は1月に上昇(総合5.4%/コア4.7%とそれぞれ+0.1%)。見通し辛いが、2月数値(3/31発表)の予想は総合5.1%/コア4.7%と食品・エネルギー含む総合は低下見込みで、人流回復で上昇する医療・旅行等のサービス価格へ次第に浸透し、コアも緩やかな低下トレンド入りし「利下げ」への政策転換を促すとみる。
《④新総裁就任後初の日銀金融政策決定会合》ドル円の見通し
10年国債利回りの誘導目標・イールド・カーブ・コントロール(YCC)の変更なしを予想。欧米金融ショックの余波を警戒し、3/30現在、市場の同利回りは0.31%と政策±0.5%の範囲内。解除しても影響は軽微で「このタイミングで」はあるが、その場合でも、5年以内の利回りを安定させる措置など緩和姿勢を打ち出すとみる。
「SVB」は、運用する債券の価格下落が破綻の一因で、それは本邦銀行でも同様。日銀視野外からの欧米ショック連鎖がないとは言えず、次回(6/15~16)以降への持ち越しを予想。米利上げ継続の一方での緩和継続は、イベント通過後の円安ドル高要因とみる。
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