Aizawa Market Report ベトナム市場の外国人売り越しと相場への影響
2024.06.24 (月)
ベトナム市場の外国人売り越しと相場への影響
今年5月、ベトナムのホーチミン市場で外国人投資家による株式の売り越し額は単月で約14.8兆ドン(約920億円、ETFやカバーワラントなどその他証券を含めると約15.6兆ドン)と過去最高を記録した(下図参照)。その主な要因として、①米国の利下げ時期後ずれを背景にドン安が進行し、ドン建ての資産からドル建ての資産や金に資金を移す動きが目立ったこと、②ベトナムの4月の消費者物価指数(CPI)が+4.4%と当局の目標レンジ上限(+4.5%)に近づき、今後インフレ抑制のために金融引き締めの可能性が高まったことなどが考えられる。
また個別で目立った動きとして、米国の資産運用大手であるブラックロック社は6月8日に同社が運用する「iシェアーズ・フロンティア・アンド・セレクトEM ETF」(米国:FM)を清算すると発表した(最終取引日は2025年3月31日の予定)。当該ETFはベトナムが属するフロンティア市場に連動する代表的な商品で、運用資産全体に占めるベトナム株の組み入れウェートが高いことから、その売却を進めていく過程で外国人投資家の売り越しは今後も続く可能性が考えられる。実際、当該ETFのベトナム株式の組み入れウェートは、今年5月31日時点で約28%であったが、6月18日には約14%へと半減しており、主にホアファット(ベトナム:HPG)やビンホームズ(ベトナム:VHM)、ベトナム乳業(ベトナム:VNM)、ビングループ(ベトナム:VIC)、マッサングループ(ベトナム:MSN)などの銘柄に対する換金売りが見られた。
直近1年間で見ると、ホーチミン市場では外国人投資家の売り越しが続く中、売買代金全体に占める外国人投資家の比率は10%台と新型コロナ禍前の30%台に比べて相場への影響力が大きく低下している。その一方で昨年末から国内景気や輸出の回復などを追い風に国内勢の商い増加が目立つなど、ベトナムVN指数は海外勢の売り越しにもかかわらず戻り基調を維持している(右図参照)。外国人投資家は一般にバリュエーション重視の傾向があり、その売り越しは株価が割高と解釈することもできるものの、同時に外国人保有枠上限の関係で今まで投資できなかった優良株に投資できる機会をもたらしている。中長期目線で成長が期待できるベトナムの主な優良株として、FPT(ベトナム:FPT)や軍隊商業銀行(ベトナム:MBB)、モバイルワールド・インベストメント(ベトナム:MWG)などに注目したい。
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