Aizawa Market Report アジア通貨安懸念が再燃、ASEAN市場への影響は?
2024.04.24 (水)
アジア通貨安懸念が再燃、ASEAN市場への影響は?
4月16日、国際通貨基金(以下、IMF)は四半期ごとに発表する「世界経済見通し」で2024年の世界経済の成長率予想を3.1%から3.2%に上方修正した。主要国の中で、米国の2024年の成長率見通しは前年比+2.1%から+2.7%に大きく引き上げられた一方、中国と日本の成長率見通しは据え置き、ユーロ圏とASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)の成長率見通しは引き下げられた。足元世界全体のインフレ率は低下傾向にあるものの、米国の利下げ後ずれ観測や中東情勢の緊迫化など不透明要因も多く、通貨安の動きが目立つASEAN諸国への影響が気になるところだ。
IMFが公表したアジア新興国・途上国の経済指標見通しによると、ASEAN諸国の2024年の実質GDP成長率見通しは、インドネシアが5.0%、タイが2.7%、ベトナムが5.8%、フィリピンが6.2%、マレーシアが4.4%と、前年に比べて成長の加速が見込まれている(下図参照)。また今年1月に発表された予想(ベトナムのみ昨年10月発表の予想)と比べて、フィリピンとマレーシアはそれぞれ0.2と0.1ポイントの上方修正、インドネシアとベトナムは据え置き、タイが1.7ポイントの下方修正となっており、需要の回復が遅れているタイを除くと総じて堅調な予想になっている。
しかし、直近のASEAN主要国の物価・為替動向を見ると、今年2月から各国の消費者物価指数(CPI)は再び上昇し始めており、為替面でベトナムドンは過去最安値を更新、インドネシアルピアとフィリピンペソも過去最安値に迫る動きを見せている。
今のところCPIの上昇はコメ価格の高騰による一時要因が大きいが、アジア通貨安が更に進行すれば輸入原材料の値上がりを通じて国内消費に悪影響を及ぼし、インドネシアとフィリピンの経常赤字拡大につながる可能性が考えられる。またアジア新興国の通貨安は一般に株式市場の逆風として捉えられ、食品・飲料や日用品、医薬品など消費関連企業の業績を圧迫するだろう。
一方、景気全体が大きく崩れない前提ならば、貸出と利ザヤが拡大するインドネシアのバンク・マンディリ(BMRI)とフィリピンのバンコ・デ・オロ・ユニバンク(BDO)など大手銀は比較的堅調な業績が期待できそうだ。ベトナムでは1~3月の対米輸出は前年同期比24%増加したことから、家具や水産物、アパレルなどの輸出回復で恩恵を受ける企業に注目したい。
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