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アジア株週間トピックス 2023年3月20日号

2023.03.20 (月)

アイザワ証券 投資顧問部

明松 真一郎

アジア株週間トピックス 2023年3月20日号

米国のSVBファイナンシャルグループが破綻

米国のSVBファイナンシャルグループ(シリコンバレー銀行)破綻

今年3月10日に米国・SVBファイナンシャルグループ(シリコンバレー銀行)の破綻が報じられ、世界的な金融不安につながっています。この銀行は、主に米国のハイテク業界・スタートアップ企業への融資、支援を行なっている中堅銀行です。

2008年に破綻したリーマンに比べて同行の規模は小さく、今のところ世界経済への影響は限定的との見方が大勢を占めています。ただ、債券や金などが上昇している一方で、株式市場が軟調な動きとなっていることをみると、投資家は安全資産への資金シフトを進めているといえます。SVB破綻の背景、影響などについて考えてみたいと思います。

破綻の背景は?

まず破綻の背景です。

理由はひとつやふたつではありませんが、1つめの要因は、要求払い預金(短期資金)で資金を調達、売却しづらい⾧期資産で運用していたことです。

2つめの要因は、同行の類似銀行のひとつであるであるシルバーゲート銀行が、3月8日に自主閉鎖を決定したことです。昨年の2022年11月に暗号資産取引所のひとつであるFTXが破綻したことで、暗号資産業者向けの融資が多かった同行の破綻につながりました。この破綻が主要因で、SVBにおいて預金流出が目立ちました。

そして3つめが増資計画の却下です。シルバーゲート銀行が自主閉鎖を発表した同じ日の3月8日に、SVB銀行は22.5億ドルの増資計画を発表しましたが、却下されたことで翌9日には420億ドルの預金が流出、取り付け騒ぎとなりました。また2行の破綻を受けて、預金の引き出しが相次いだ全米第29位のシグネチャーバンクが破綻するなど、資金繰り悪化や金融不安などの影響が拡がっています。

これを受け、米財務省や米連邦準備理事会(FOMC)、米国連邦預金保険公社(FDIC)は3月12日に預金の全額保護を発表しました。市場の不安心理の抑え込みを急務に進めています。今回起こった複数行の破綻は、景気後退下での政策金利引上げの影響が徐々に出始めていると思われます。

アジア新興国にはこのたび破綻した銀行と関係の深い銀行は見当たりませんが、不景気のなかで利上げをしている、という点では状況は同じです。今後、ボディーブローのように影響が出てくると思われます。

クレディ・スイス社をUBSが救済

クレディ・スイスをUBSが買収

3月19日には、以前から経営不安が問題視されていた「クレディ・スイス」を、同じスイスの金融最大手である「UBS」が買収することで合意した、と報じられました。買収総額は日本円で4,200億円強となる見通しです。

この合意発表にはスイスのベルセ大統領やスイス国立銀行(スイスの中央銀行)総裁などが会見を行なっていることから、金融不安払しょくのために国を挙げて支援する、という姿勢がはっきり示されたといえます。

ただ、このたびの買収発表によって完全に不安が解消された、とはいえません。同行が発行していた社債のうち、AT1債(約2兆円)は無価値となり、債券保有者が損失を被る可能性が高いとみられています。関係者、関係機関の不安が続きそうです。

リーマンショック当時に比べて世界経済は不安定な状況か?

世界的金融危機の引き金となったケースとして、2008年に発生したリーマンショックがあります。リーマンショックと今回のケースは規模感こそ違うものの、どちらも金融機関の破綻、という点では共通しています。

ただリーマンショックの時と大きく異なっているのは、世界的な景気、インフレ状況、金利水準などがおおむね当時並、もしくは悪い状況です。状況は異なっていますが、今回もリーマンショック時以上に世界経済に大きなダメージを与えると予想されます。また直近は、世界的に銀行株が評価されていたこともあり、リーマンショックの時に比べてその反動は大きいと思われます。

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ライター

明松 真一郎

アイザワ証券 投資顧問部

明松 真一郎

1990年平岡証券(現アイザワ証券)に入社。加古川支店でのリテール営業を務めた後、ディーリング部、営業本部、生駒支店でのバックアップ部門などを経験。2005年に証券アナリスト資格取得したことを機に、市場情報部(当時投資リサーチセンター)に異動。アセアン株を中心としたアジア株の調査、分析を行う。その経験を経て、現在は投資顧問部に所属。

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