ザ 語源 第14回 年金(ペンション)
2022.11.11 (金)
年金(ペンション)
11月30日は「年金の日」です。「年金の日」は“国民お一人お一人、「ねんきんネット」等を活用しながら、高齢期の生活設計に思いを巡らしていただく日”として、厚生労働省によって定められました。11月30日は「いい・みらい」の語呂合わせです。
年金は英語で「アニュイティー:annuity」、または「ペンション:pension」といいます。前者の「annuity」はラテン語の「アナス:annus」を語源としています。「annus」は「1年」という意味です。「annus」と同じ語源を持つ単語として「記念日:アニバーサリー:anniversary」、「年次報告書:アニュアルレポート:annual‐report」、「紀元・西暦:アノ ドミニ:anno domini」などがあります。日本語の「年金」は「annuity」を元にその訳語となったと考えられています。
次に後者の「pension」の語源を説明します。日本の公的年金である国民年金と厚生年金の積立金の管理・運用を行っている機関を、「年金積立金管理運用独立行政法人:ガバメントペンションインベストメントファンド(Government Pension Investment Fund)」、略して「GPIF(政府年金運用基金)」と呼んでいますので、現在の年金の訳語としては「ペンション」のほうが適しています。
「ペンション:pension」はラテン語の「ペンド:pendo」を語源としています。「pendo」の元々の意味は「吊るす」、「ぶら下げる」です。古代西欧人のお金の支払いは、硬貨をはかりで測って払われたので、「ペンド:pendo」は「吊るす」「ぶら下げる」の他に「支払い」も意味するようになりました。
「pension」と同じ「吊るす」「支払う」という語源を有する単語としては「ペンダント:pendant」、「サスペンダー(ズボン釣り):suspender」、「費用:expense(外に支払うということ)」などがあります。年金は毎年定期的・継続的に給付されるものなので、支払いを意味する「pension」が年金を表すようになったのです。
さて、「ペンション」というと私たち日本人は「洋風の民宿」をイメージするのでないでしょうか。「洋風民宿=ペンション」は、フランス語の「パンシオン」(綴りは英語のpensionと同じ)が元となっています。フランスの年金受給者層の中には、子供が巣立った後の空き部屋を民宿に作り替え、比較的安価な宿代で提供する人もいましたが、これが元となって日本でも洋風の民宿のことを「ペンション」と呼ぶようになったようです。したがって、フランスでは年金も民宿もどちらも「パンシオン」となります。ちなみに英語圏では民宿は「ゲストハウス」となります。
政府は今年5月に「資産所得倍増計画」を発表しましたが、欧州では昔から、年金支給を補完する不動産収益などの「資産所得」を得る社会的な経緯があったのです。
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